2023処暑日記
本業のほうをようやく印刷所に入稿。左肩の荷が降りたと思ったけど単に右肩を寝違えたのかもしれず、気持ちの余裕が生まれた瞬間に痛みだしてきた気がする。気持ちの余裕ということで仕事終わりに浮かれて本屋へ行ったら、眠りの特集をしている雑誌が目について思わず買ってしまった。ストレスのせいか、夏休み前からうまく寝られていないのだ。その帰りに不審者がいてかなり嫌だった。
『しんきろう』が刷り上がり、金曜の夜に受け取れるよう宅配を依頼していたのだが、ボスがやっぱり土曜の朝にほしいというので、万が一残業して帰りが遅くなったときのためにコンビニ受取にしてリスクヘッジできたと思っていたら甘かった。コンビニのカウンターに100サイズダンボールがどんと置かれるまでそれに気づかなかったのだ。つまり、腕にぎりぎり抱えられるかどうかの10キロを超えるダンボールをコンビニから家まで持って帰ったのである(後で測ったら15kgあった)。帰宅直後はよかったが、お風呂で温めてしまったからか、左の肩甲骨あたりにぴりっとした痛みが出始める。まだ右肩の寝違えも治っていないのに…。
そういうわけで、土曜の朝には無事、しんきろうをボスに渡せた。近くで用事があるからと最寄り駅まで来るというので、改札まで20冊運んだ。昨日15kg運んだことを思えばましだが、紙袋に入れて長い距離を歩くと重い。改札の中にいるボスが駅のロッカーの上に、刷り上がったカバーを広げていた。こちらからは改札の外から紙袋に入った本体冊子を渡し、ボスからはカバーを受け取る。怪しい取引みたい。ともかく、これで手っ取り早く撮影分だけカバーを巻いて書影を撮影。
日曜も早めに起きて、家事をこなしつつ蟄居通信を少し書き、文学フリマの無料配布について考える。午後はしんきろうの表紙カバー巻き作業へ。時間通りに集まれないのがしんきろうらしいとボスがしみじみと言う。あの頃と違って、LINEグループで軽口を叩きあっているのがなんだか可笑しい。ボスが今まで頑なにLINEアプリを拒否していたため、しんきろうがメール以外の連絡手段で繋がるのは去年が始めてだったのだ。
こうして集まるのは五年くらい空白があるにもかかわらず、会えばつい先月も会ったようなノリで話せる。地元に帰ったり関東へ嫁いだりしても、寄稿だけでも応じてくれた仲間たちもいる。機会があれば集いたいことはもちろんだけど、なによりも、こうしてまたひとつ作品を作れたことがうれしい。
夜は集ったメンバーで久しぶりに地球屋へ行って打ち上げをした。地球屋はよく読書会で使ったものだ。
かつてよく読書会をしていたからか、五人でテーブルを囲んでいても、一人が話し出したら他の四人は傾聴し、まんべんなく話していることに気づいた。これはわたしが顔を出す他のコミュニティにはないところだと思う。一対一ですらうまく対話できないケースだってあることを思えば。われわれは興味の方向性や好みだってバラバラのはずだけれど、好奇心とホスピタリティをもって相手の話を聴くことができる人たちだと思う。もしくは、そのベン図の重なりが広いからこそ同人として長年付き合っているのか。
最近演劇界隈のワークショップに出入りしているボスが、そこで得たネタを披露してくれて、ワークショップのようなこともできた。澤ちゃんも映画に出演するというし、わたしも今年久しぶりに朗読したこともあり、最近のしんきろうは活字表現だけでなく、各々が自然発生的に、自分の身体を使った表現への興味が増えてきたように思う。これはとても興味深い現象だと思う。
そういうわけで休日は休日で充実し、文学フリマの出店準備も進めないといけないという状況で、しかしもう少しちゃんと休むべきだったかもしれない。本業がようやく校了した日、喜びや達成感よりもまず腰痛が来た。しかもただの腰痛ではなく、関節痛っぽくて発熱の予感がする。定時に帰れたら映画でも観に行こうかと浮かれていたけれど、ミッシェル・オスロの新作が最終日だったからほんとうに直前までそう思っていたけれど、それをやめる判断力が残っていて良かったと思う。最近、判断力に自信がない。印刷所の入稿後にもかかわらず飛んできた修正指示すべてを片っ端から受け入れようとしてしまい、パンクした。そもそも入稿後の修正なんてご法度のはずなのに、正常な判断力があればこんなことにはならなかったと思う。
せめてささやかなご褒美にとスーパーで買ったシャインマスカットにありつく前に七度二分を観測し、早めにシャワーを浴びてベッドに倒れこんだのが夜の八時。そこから眠り始めたはいいけれど、熱のせいか夜中の十二時に目が覚めてしまってつらかった。七度八分。けど起き上がれたのでシャインマスカットを出してきて明かりをひとつだけ点けて食べた。
翌朝は熱は下がっていたけれど、念のため午前休を取ろうと上司に電話をかけたら、「一日休んだほうがいい」と諭された。ありがたく休ませていただく。と言っても熱が下がったら体は元通り、喉の痛みや咳もないので、のんびり部屋の片づけをして、大丈夫そうだったので、午はラーメンを食べに出た。入稿前の日々、ものすごくラーメンが食べたくて、「今日こそ昼はラーメン行こう」と毎日思っていたのに、そもそも昼休みを取るような余裕がなかったり、取れても食欲がなかったりして諦め続けていたラーメン。調子に乗ってチャーシュー乗せにしたら最後のほうは胃がもたれて切なかった。ともかく、やりたいと思ったことを遂行できるということは幸せなことだ。そういうことで、赴くまま今度こそ映画に行った。みなみ会館で「恋する惑星」が最終日だった。
金城武が缶詰を食べまくるシーンがある。帰りにカルディでビールと缶詰を買って帰る。甘いものが飲みたくてカフェで季節の甘いラテを頼む。深いことを考えずに即物的な嗜好品にお金を使いまくることの解放感をゆっくりと味わう。
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