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「山って最高だぁぁぁぁ!!!」


高尾山の山頂から美しい富士山が見えた。
登り切った達成感も相まって、上西は心底感動した。

高尾山から富士山が綺麗に見える確率はそんなに高くないらしく、何度登ってもこの富士山を拝めない人がいるようだ。
上西は高尾山ファーストテイクにして、絶景を体験できたのだから運が良いみたい。
これからも登り続けなさいと、山の神様が言ってるのかもしれない。知らんけど。


山頂には広大なスペースがあり、建物や食事処が連なっていた。
このような高いところに建物を作るのは、大変だろうな。
いま自分が来た道を材料持ちながら上がってくるのだろうか。
あ、リフトとか使うのかな?
などと、1人脳内で会話を繰り広げる。
だって、1人で来たから。
会話の相手は、もう1人の僕しかいない。


やっぱり山頂に来たからには、「山頂」って書いた木の立て札と写真を撮りたかった。
山頂の中間付近にその立て札はあった。

上西は慣れないインカメラを起動して、うまく撮れるよう自撮りを始めた。
文字がしっかり入らない。文字重視にすると今度は顔が切れる。
嗚呼、自撮りってムズイなぁ!!
そんなイライラしていた上西のもとに

「お兄さん、すみませ〜ん」と女性の声が聞こえた。
声のするほうへ振り向くと、上西の2.3個年上くらいのお姉様2人組がいた。

上西はお姉様方の続く言葉を待っていた。
だが、しばらく無音の状態が続く。
お姉様方は上西を見つめてるだけである。
そこで上西は気づいた。

上西「あ、お写真撮りましょうか?」
お姉様「わぁー、ありがとうございまーす。」

女性というのはやはり恐ろしい。
上西が察しなければ、何秒時が止まっていたことだろう。
気が利かない男、というレッテルを貼られるギリギリ前で上西は気付けた。

女性の方からスマートフォンを預かり、写真を撮った。
横向きでも縦向きでも撮ってあげて、気が利く男を演出。

お姉様「ありがとうございまーす。お兄さんも撮ってあげますね!」

上西は照れながら自分のスマートフォンを渡した。
2人のお姉様に見守られる中、1人で被写体にされるのは何とも言えないものだった。
この時撮って頂いた写真を見返したら、ニヤけていた。

あぁ、こういうところから始まる山登りラブロマンスなんてものもあるのだろうか。
このお姉様2人と山頂で一緒にご飯を食べて、その後一緒に下山する。
お姉様「そのスニーカー、素敵ですね。」
上西「いや、お姉さんのほうが素敵です。」

マッハ3くらいのスピードで脳内を妄想が駆け抜けていった。

撮影を終えた後、試しに上西は2人のお姉様を見つめてみた。先程お姉様にやられた戦法と同じやり方で。


上西「・・・(よかったら一緒に下山しませんか?)」

お姉様A「じゃあね〜。ありがと〜。」

お姉様B「それでさ、さっきの話の続きなん    
だけどさ〜」

お姉様A「あはは!うんうん!」



その場に1人取り残された上西。
鳥たちのさえずりがよく聞こえた。



まぁ、写真撮ってもらえたし、、、
よかったよかった。


勝手にお姉様に振られた気持ちになった上西は、お腹が空いてきた。
ネットで事前に調べて、食べるものは決めていた。


じゃん。高尾山名物とろろ蕎麦。
可愛いおにぎりもついた蕎麦セットを注文。
絶景を見渡しながら、のんびりすする蕎麦は最高に美味しかった。

1時間ほど山頂でまったりした後に下山を開始した。もちろん1人で。


通る道は初心者おすすめの1号路。
通ってきた6号路や5号路とは違って、道がコンクリートで完全に整備されている。
スニーカーを汚したくない上西にとって、それは完璧なルートだった。
マリオでスターを取った時の音が脳内で流れていた。

途中の広場にはお寺や屋台があって、観光客で非常に賑わっていた。
折角なので、お寺で御神籤を引いてみた。
見事、大吉。上西、今年は来てます。

そして屋台では、こちらも事前に調べ、食べたかったお団子を購入。
圧巻の景色を拝みながら、舌鼓を打った。


そのまま歩いて下山するか迷ったが、この圧巻の景色の中をリフトで下ったら気持ちよさそうだなぁと思い、リフト券売り場へ向かった。

10年ぶりくらいのリフトだったので、めっちゃドキドキした。
リフトの台座と、自分のお尻が触れ合う瞬間。
何とも言えない気持ちになりますよね?ね?
ね?

最高のリフトだった!
あまりに美しい光景だったので、写真を撮りたくなったが、万が一携帯が手から滑ったら、もう終わり。山の中に消え去ってしまう。


恐怖で震えながらも何とか撮影できた。
携帯をすぐにリュックにしまって、ふぅと声が漏れた。

リフトが3分の2くらいに差し掛かった時、左奥のほうにカメラマンの方が見えた。

カメラマン「お写真とりまーす。はい、チーズ!」
上西は持ち前のサービス精神で、満面の笑みをレンズへ向けた。

だが、わかってる、わかってる。
ディズニーでもよくある手法さ。


リフトを降りると、満面笑みの上西ソロチェキが1000円で販売されていた。

スタッフさん「良かったら旅の記念にいかがですか?」

上西は迷った。初登山だし、折角なら...でも1,000円ちと高い。

答えを決める前に

上西「すみません、大丈夫です。」

と口が勝手に答えていた。深層心理の答えを言ってしまったようだ。
さらば、満面笑みの上西チェキよ。誰にも買われず捨てられるチェキに少し憐れみを抱く。


最後は待ちに待った温泉タイム。
高尾山口駅のすぐ近くに、温泉があることは来た時に気付いていた。

温泉前まで言ってみると、こんな掲示物が。



当日のみのバースデー割引。
惜しいぃぃぃ...一日ズレてたら使えたのに...というか、昨日が雨じゃなかったら当日来てたのに...。
だが、まぁ、楽しかったから良しとしよう。


汗をいっぱいかいた身体を、温泉が包んでくれた。
「はぁ〜♪さいっこぉ...」

上西人生初の登山は、大成功に終わった。
靴の汚れも最小限で収めることができた。



きっとまた上西は山に登ることだろう。
山ガール美女に出逢うその日まで。
上西の挑戦は続く!!!乞うご期待。

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