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見えない壁に負けないために/学習性無力感への対抗

なんだか久しぶりというか年末以来のnote投稿な気がします。
僕の所属する会社をご存知の方はお察しの通りです。そしてそれにもまつわる投稿かもです。

仕事をしていると、見えない壁にぶつかっていると感じることがあるのではないだろうか。もう少し具体的に言うと、明確でない、あるいは言語化しづらい理由で、自分が思った方向に仕事を進められず、理由が明確でなく、言語化もしづらいために、その解決の方向性も見えず、心理的なストレスが溜まることがあるのではないか(ガラスの天井にも例えられるが、こちらは明確な定義があるようなので今回は見えない壁としています)。

学習性無力感/カマス理論

このような状態が繰り返し起きると、いわゆる学習性無力感が生じる。この学習性無力感の例としてカマス理論が挙げられる。

すなわち、カマスという魚を透明な仕切りのある水槽に入れ、その餌を反対側に入れると、最初はその餌を食べるべく透明な仕切りにぶつかるのだが、これを繰り返すと透明な仕切りを越えられず餌が食べられないと学習する。

その後、透明な仕切りを外しても、そのカマスは餌が食べられないと学習しているので、(実際には餌が食べられるのに)餌を食べようとすらしなくなる、という状態となる。
人間においても同様で、理由がわからないまま前に進めない状態が続いたり繰り返したりすると、その後その理由がなくなっても前に進む気力が削がれてしまう。これは組織においては多いに問題となる(組織以外でも問題となるが)。

学習性無力感の回避

それでは組織において学習性無力感による停滞を回避するためにはどうすべきか。自身の心構えと、周囲のやる気の回復という2つの観点から考えてみることにする。

まずは自身の心構えである。そうか、今やる気が損なわれているのは学習性無力感によるものなのか、というのがわかっても、じゃあやる気を出そうと思って出せるものではない。これは、見えない壁があることはわかっても、その理由が分かりづらいからである。

よって、手順としては、①理由の明確化から始まり、②理由の排除・転換・改善の可否の整理③残る理由の受容の可否の選択④撤退に関する計画立てをしたうえで、⑤これらに従った進行をすることになる。

①理由の明確化

いやいや理由の明確化ができないから悩んでるんだよ、ということは重々承知しているが、まずはその理由をなんとか炙り出す、言語化するという努力をしてみよう。ここを諦めてしまうと見えない壁を負けてしまうので、なんとかここは見えない壁を突破する可能性を信じて頑張ることが大切である(これによって胆力がつくという副次効果もあろう)。

理由の明確化のためには、状況の整理と、理由の分解が必要である。
理由の分解については、理由が明確でなく言語化しづらい場合、一つの理由ではなく、複雑にいくつもの理由が絡み合うことが考えられるため、いくつもの理由を書き出してみることである。
そのうえで、理由を分類化したり、まとめたりすると、理由が少しずつ納得いく形でまとまることが多いように思われる。

悩ましいが、こういった状況であれば人や組織文化を理由にするのも一つの方法である。様々な事象の原因を人・組織文化に求めるのは、言い訳しやすいことからそこに集約されがちであり、本来であれば根本的解決につながらないことも多い。
しかしながら、問題が複雑化していて明確でない以上、解決の糸口を探す目的で、ときに人や組織文化を理由とすることも許容されるのでは、と考える次第である。

②理由の排除・転換・改善の可否の整理/③残る理由の受容の可否の選択

さて、理由がある程度見えて来たらあとは簡単で、その理由の排除や転換ができるのか、状況の改善による問題の低減ができるのかを検討する。
そのうえで残った問題について受容できるかを考えることになる。
簡単といっても実際には排除・転換・改善自体は難しいので、そこはあまり期待せずに淡々と整理を進めるのが良い。

④撤退に関する計画

また、最終的に受容できない問題が残る可能性もあるため、その場合の撤退についても視野に入れる必要がある。
撤退とはプロジェクトや事業の撤退のこともあれば、辞任や転職といった撤退もあるかもしれない。それは状況それぞれで、見えない壁を超えられなかったことを理解したうえで、どのように諦めるのか、ということである。

ここまで進めて諦めるのはとても心の負担になるが、進み続けることで精神を病む危険なども考えれば、撤退をオプションとして組み込むことは必須である。
その際には、どのように撤退するのかどこが復帰不能点=Point of No Returnなのかを十分に意識する必要があろう。

個人的には、心理的安全性の確保のためにもこの撤退に関する計画が非常に重要だと思っている。

⑤進行

ここまで見えない壁への対策ができれば、あとはそのプランに則って進行し、状況の変化に応じてオプションを選択するだけである。
また、ここまで対策を立てると、これまで見えない壁だと思っていたものがおぼろげながら見えてくるため、精神的な不安が改善され(心理的安全性の確保につながり)、最後に撤退という選択をしても自身の納得感は高まるのではないかと考える。

このような手順を踏んで進行することで、見えない壁を突破できる可能性を高めるとともに、精神的な不安を改善することが手順を踏む意義かと考える。

ここまで読むとわかる通り、この手順はリスク管理の手法に近いものである。自身の考えであるため改善の余地は多いにあると思うが、それは周りの指摘や実践を通じて実施していこうと思っている。

周囲のやる気の回復

次に周囲のやる気の回復である。すなわち、組織で生じる学習性無力感については原因が共通する場合、組織において伝播することが多く、仮に自身のやる気が改善したとしても、周囲のやる気が停滞してしまうということが往々にして考えられる。

この点についてはカマス理論が改めて役立つ。すなわち、カマス理論は、学習性無力感の例であるとともに、その改善についても触れられている

具体的には、新しいカマスを水槽に入れることである。
元々いるカマスは透明な仕切りによって餌が食べられないと思っているが、新しいカマスはそれを知らないため餌を食べようとする。透明な仕切りはすでに外されているので(その状況になった後は)餌が食べられる
餌が食べられることを知った元々いるカマスは、餌が食べられることを知り、餌を食べる行動を再び取ることができるようになるのである。

新しいカマスというのは組織においては外部人材ということが多いだろうが、内部の人材であっても、ここまで触れた手順を踏んで見えない壁を越えられた人(仕切りを外した後に餌を食べるに至ったカマス)がいれば、それは新しいカマスにも匹敵するし、状況理解が早く周囲のやる気の改善にも寄与するのではないだろうか。

見えない壁はどこにあるか分からないが故に、いつどこで見えない壁にぶつかるかもしれないという不安組織の心理的安全性を損なうことにもなりかねない。ただ、見えない壁があってもそれを乗り越えられる可能性があり、最悪の場合は撤退という選択肢を選択できるのだ、という気持ち・心構えを持つことが、却って心理的安全性の確保や組織の活性化にもつながるのではないか、と思う次第である。

あーすっきりした、とまでは言えないまでも、これを書くことで少しは自身の不安の解消にはつながったかな。みなさんの役にも立てれば幸いです。

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