見出し画像

世界唯一の温泉 有馬の温泉

「湧くはずのない所に、湧くはずのない湯が湧く」
有馬の温泉を一言でいうとそうなります。
その世界唯一の有馬の温泉について説明いたします。

まず温泉とは

“温泉”は温泉法によって定められています。

(1)泉源における水温が摂氏25度以上(摂氏25度未満のものは、冷泉または鉱泉と呼ぶ事がある)。

(2)以下の成分のうち、いずれか1つ以上のものを含む。
と19種類の成分が定められています。

つまり25℃以上の地下水が湧いてきたら、何の成分も含まれていても“温泉”と呼ぶことができます。そして定められた19の成分のどれか1つ以上が一定量以上含まれていたら“温泉”と呼ぶことができるのです。その場合温度が低いと冷泉とか鉱泉と言います。例えば有馬の炭酸水や放射能泉(ラジウム泉・ラドン泉)は冷泉です。

“温泉”に認定される温度は世界各地でバラバラです。

温泉と呼ぶには日本では25℃以上の地下水が湧いていることが必要ですが、この25℃という温度は世界統一ではなく、国によって定められている温度が違います。つまりその国の年間の平均気温より高い温度の地下水が湧いてきたら“温泉”と呼ぶのです。

地下水というと“井戸”があります。井戸の水は冬場は温かく、夏場は冷たいとよく言われますが、地下10mぐらいの所の温度はほぼ一定なのです。
日本では井戸水の温度が14℃~16℃です。
この温度は、その土地の年間平均気温と同じか1℃~2℃高い温度です。

神戸市の年間の平均気温は16.7℃です。そうすると18℃以上の地下水が湧けば温泉になるはずです。
しかし日本では温泉と呼ぶには25℃以上となっています。これは日本の温泉法が定められたのは昭和23年ですが、温泉の定義を決めようとした時は台湾がまだ日本の統治下で台湾の南の方の平均気温が25℃だったので、日本では25℃以上と定められたのです。(台南市の年間平均気温が24.3℃)

温泉の種類

温泉には色々な分類があります。

泉温
湧出または採取したときの温度により以下の四種類に分類される。

  1. 冷鉱泉 - 摂氏25度未満(有馬の銀泉 炭酸泉・放射能泉)

  2. 微温泉 - 泉摂氏25度以上摂氏34度未満

  3. 温泉 - 摂氏34度以上摂氏42度未満(狭義の温泉)

  4. 高温泉 - 摂氏42度以上(有馬の金泉)

液性の分類 - pH湧出時のpH値による分類

  1. 酸性 - pH3未満

  2. 弱酸性 - pH3以上6未満

  3. 中性 - pH6以上7.5未満(有馬の金泉)
    中性泉で高温な温泉は珍しい。肌に優しい湯。

  4. 弱アルカリ性 - pH7.5以上8.5未満

  5. アルカリ性 - pH8.5以上

浸透圧の分類

  1. 低張性 - 塩分濃度1%以下

  2. 等張性 - 塩分濃度1%、人間の身体の塩分濃度と同じ

  3. 高張性 - 1%以上。
    有馬温泉は3%~6%の塩分濃度があり、浴用に適されている温泉としては世界一塩分濃度が濃いといわれています。

塩分濃度の濃い温泉に入浴するとどうなるか?
青菜に塩を振ると水分が出て菜はしなとなります。ナメクジを駆除する時に塩をかけるとナメクジは小さく硬くなってしまいます。
青菜やナメクジの水分が浸透圧により塩の方に取られてしまうのです。

有馬の金泉に入浴すると身体の水分が温泉の方に移動します。そして反対に温泉の成分が身体に取り込まれます。有馬の温泉の成分が濃く多様な事に加えて身体に取り込まれやすい為に「名泉」と呼ばれる所以です。

療養泉

治療の目的に使用出来る温泉を療養泉と定めています。療養泉には

1.単純温泉
2.塩化物泉
3.炭酸水素塩泉
4.硫酸塩泉
5.二酸化炭素泉
6.含鉄泉

7.酸性泉 (草津温泉が有名)
8.含よう素泉
9.硫黄泉 (玉子が腐ったような臭いの温泉)
10.放射能泉

有馬温泉には、酸性泉と硫黄泉がありません。この二つは火山性の温泉の特徴で有馬は非火山性の温泉なので含まれていませんが、のこり8つの成分がすべてが有馬の温泉に含まれていますので、有馬の温泉が万病に効くと言われる理由です。

湧き方による種類

(1)地温勾配型

神戸の三宮駅が海抜0m 大気圧が1気圧とすると六甲山は海抜932m、有馬温泉は六甲山の北側の海抜約400mの所にあります。

100mにつき気温が約1℃(0.6℃)下がると言われています。
有馬は神戸より2.5℃程気温が低い。六甲山の山頂では5.5℃程低いし、有馬との温度差は3℃ほどあるという事になります。

では100m地面を掘ると何度になるか?

100mにつき2.5℃~3℃温度が上昇します。

1.000m掘ると日本国中どこでも温泉が出る!・・・と言われますが、100mにつき2.5℃とすれば1000mだと25℃になります。
もちろん温泉法に定められた25℃以上ですが、実際は井戸水の温度を足さねばなりません。神戸の平均気温が16.7℃とすれば、井戸水の温度もほぼその温度。それを足すと、25+16.7=41.7 要するにちょうど良い温泉の温度41.7℃の湯が湧くという事です。

現在三宮駅の再開発で温泉を掘っていると言いますが、高いビルをつくる際に基礎を深く掘ります。ついでにちょっと深く掘ると温泉が湧き出ます。
この様な温泉の多くが地温勾配型の温泉です。スーパー銭湯などもこの様な温泉が多いと思います。

そして1000mも掘れば何か地中の成分も含まれるでしょう。
あとで述べますが、有馬の温泉は50km~60km下から湧いてきます。
50~60倍深い所から出てくるので含まれる成分の含有量が比較になりません。

(2)火山性の温泉

日本ではご存知のように世界有数の火山国です。現在活動している火山は111あり、世界の火山の7%を占めます。
火山の地下、数kmから十数kmにマグマ溜まりがあり、1000℃ぐらいの温度があります。このマグマ溜まりのマグマが地表に出ると「火山が噴火した。」となります。

このマグマによって雨水などが浸み込んだ地下水が熱せられて25℃以上で湧き出たり、火山の成分が加わる。温度と成分が加わった温泉があります。
火山を中心に半径15kmの所に湧き出るると言われ、日本の温泉の90%はこの火山性の温泉です。

(3)非火山性の温泉

非火山性の温泉に前述の地温勾配型の温泉も含まれますが、大昔地中の中に閉じ込められていた古海水(化石海水)が湧き出る温泉があります。
この古海水が地下数百mにある場合、地温勾配の原理で高温にはなりませんが海水は塩分をたくさん含んでいるので温泉法に規定した温泉になります。

(4)有馬型温泉

温泉の分類に『有馬型温泉』という名称が付けられています。

有馬の街中に泉源があります。その泉源に案内看板を見て頂くと200m程の深さから100℃近い湯が湧いている事が分かると思います。

有馬温泉は海抜約400mの所にあります。という事は海抜200mの所から100℃近い湯が湧いていますが、六甲山は火山ではありません。
六甲山だけでなく近畿地方には火山がありません。

火山が近くにないので100℃の湯が湧くはずがない!

・・・というのが湧くはずのない所という意味です。
では、何故? 近畿地方に火山がないかの説明をします。

火山とは

火山の地下数km~数十kmにマグマ溜まりがあり、何かの理由でマグマが地表に放出されます。その場所が火山になります。
世界には約1550の火山があります。太平洋を取り巻くように火山が多く存在していることがわかります。

そして日本には111の火山があり、世界の火山の7%に相当します。

上の図をご覧頂くとわかるのですが、近畿地方・四国には火山がありません。なぜこの地域に火山がないのでしょうか?

火山の出来る場所

火山は地球上のどこにでも出来るわけではありません。火山が出来る場所は大きく分けて3種類あります。

①海嶺(海底火山)

プレートテクトニクス

地球の表面は玉子の殻の様に岩盤で覆われています。岩盤には陸のプレートと海のプレートに分かれています。
プレートの下は熱いマントルがあります。このマントルは対流していて、マントルが表面に出てくる場所が海嶺です。
上の図を見ていただいて、赤い←→の場所が海嶺の場所です。長さは数千kmに及ぶ海底の火山の山脈です。

②ホットスポット

世界のホットスポット 

ホットスポットとして有名な場所にハワイがあります。
私たちが月に居て地球を見ていたとすると、アメリカ大陸の西側の海にある海嶺(海底火山)から吹き出し誕生した海のプレート(太平洋プレート)が日本列島に向かって進んでいきます。

太平洋の真ん中でいつも同じ場所からマグマを吹き出す場所があります。それがホットスポットと呼ばれる火山です。
しかし太平洋プレートは毎年3cm日本列島の方に移動しています。

ハワイ諸島

図の一番右端にハワイ島があり、ハワイ島が噴火しています。左を見ると点々と島があり、すでに海底に沈んでしまっている島もあります。
ハワイ島も西に移動して行き、何百年か何千年後にハワイ島があった場所に新しい島が噴火により誕生するのです。

③島弧(とうこ)

海嶺により誕生した海のプレートが移動して陸のプレートの下に沈み込みます。対流を思い出していただいたらわかりやすいと思います。

陸のプレートの厚みは約30km。海のプレートは6㎞。海のプレートの方が比重が重たい為に、陸のプレートの下に沈み込むのです。

上記の図を見て頂いたらご理解いただけると思うのですが・・・

海のプレートを引き裂くようにマグマが噴出し海嶺(海底火山)が出来ます。海のプレート(太平洋プレート)は左の矢印の方向(西)に移動しますが、現在のハワイ島と同じ場所にマグマが噴出します。その時にハワイの島々は日本列島の方に移動しているので、また新たな火山島。新ハワイ島が誕生します。

日本列島の下に太平洋プレートが沈み込みます。深さが100kmに達した時に沈み込み際に取り込まれた海水と地下の圧力と熱により、マグマが出来、上昇しマグマ溜まりをつくります。
マグマ溜まりの容量がいっぱいになると、さらに上昇し噴火します。そして火山が出来るのです。同じように250km、300kmの深さでも火山が出来るのです。
この様に島弧と呼ばれる火山は3列の火山が出来るのが特徴で、東北地方は典型的な島弧の火山なのです。

近畿地方には何故、火山がないのか?

日本列島はユーラシアプレートと北米プレート、太平洋プレートとフィリピン海プレート、4つのプレートが集まっている為に火山が多い。

東日本の下に太平洋プレートが沈み込んでいますが、太平洋プレートは地球上で一番古いプレートです。

古いプレートは、冷たい! 出来て時間がたっているので冷えてしまっている。
冷たいという事は、重たい! だから沈み込む速度が速い! 年間約10cm。

西日本の下にはフィリピン海プレートが沈み込んでいますが、フィリピン海プレとは地球上で一番新しいプレートといわれています。

新しいプレートは、熱い!
熱いは、軽い! 冷たい水は下に、熱い湯は上に行くのと同じです。
そして沈み込む速度が遅い。年間3.5cmといわれています。

上の図はフィリピン海プレートが沈んでいる様子を描いています。プレートが新しい為に冷たくて軽い。その為に沈み込む角度が浅くなります。
有馬温泉の直下、50km~60km下の所で、フィリピン海プレートが日本列島の下に沈み込む際に取り込まれた海水の水分が、縛りだされて有馬温泉に上がってきます。

今日の有馬の温泉は600万年前の湯

グーグルの地図で近畿地方の画像を出して距離を測ると、約200kmぐらいあります。

フィリッピン海プレートが1年間に約3.5cm移動するので、割ると570万年になります。この事と、有馬の湯を年代測定すると600万年前の湯だということが証明されるのです。

湧くはずのない有馬の温泉

湧くはずのない所の説明として近畿地方に火山がない理由を説明しました。
次に湧くはずのない湯の説明をします。

湧くはずのない湯とはヘリウム3を含んだ湯が湧いているのです。




いいなと思ったら応援しよう!