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地伝#10 ◾️1996年 ミックステープを作りたい

1月にニューヨークへ5泊6日で行った。記録的な大雪の為、経由地のサンフランシスコでフライトがキャンセルになった。ホテルで一泊して翌日の夜ニューヨークに到着した。タクシーでブルックリンブリッジを渡り、初めて見るマンハッタンの夜景。ヒップホップの聖地、憧れのニューヨークへついに来た。

レコードや服を買ったり、ラジオでHOT97を聴きながらフルトンストリートを散歩したりして楽しんでいた。ストリップクラブにハマりお金を使いすぎてしまったので最後の二日間くらいは安いパンと水しか食事を取れなかった。

人の気配がない真夜中のマンハッタン。道路には掻き分けられた雪の山に、ぼんやりとした街の光が反射している。現地で買ったショックウェーブで、HOT97や買ったばかりのミックステープ、それと自分のミックステープを聴きながらウロウロと歩くのが楽しかった。とくにペイジャーのこの曲は身振り手振りを付けて何回も聴きながらマンハッタンの街を歩いた。

冬のニューヨークはピリッとした緊張感があって気持ちが引き締まる。ずっと後の話だけどデヴラージさんもインタビューで同じ様なことを言っていた。

何気ない日常の街並み、この地で生まれた音楽の一体感がクラブでヒップホップを聴くよりも新鮮で刺激的だった。反対に、京都の街並みにニューヨークのヒップホップが合わないとも悩んでいた。


ーー 僕は用事があり渋谷にいた。晴れた暖かい平日の昼頃、ファイヤー通りのワールドスポーツプラザ前に「人間発電所」を爆音で流しながら走る車を見た。一瞬の出来事だ。まだ音源が発売されておらず、聴けるだけでもありがたかった。

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写真:最近のファイヤー通り。この先にDJ'S CHOICEもあった。

なんでもない瞬間だったけど今でも脳裏に焼き付いている。その時に感じたカッコ良さの正体は、街と音楽の一体感だとニューヨークで気付いた。

この時から僕はミックステープを作る時に選曲、特に曲順に重きを置く様になった。どこで何時に聴いても楽しめるように。巻き戻さなくても、どの部分からスタートしても聴き続けられるような曲順が理想だった。

僕が渋谷やニューヨークで感じたヒップホップの体験をたくさんの人と共有したい。ヒップホップ、日本語ラップを知らない人にカッコ良さを知ってもらいたい。ぜひ歩きながら外で聴いて欲しい。そんな気持ちがミックステープを作品として作るきっかけになった。

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少し垢抜けてきた。かっこいい人達を見て憧れるのが大事な時期。

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MIXXX TAPEという表記にしたのは、なんとなくXが多い方がカッコいい気がしたからと記憶しているが、ひょっとするとタイムズスクエアで見たポルノ映画館の看板がそうさせたかもしれない。

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