「Lying」 Peter Frampton
片田舎の週末土曜の夜ともなれば、正しき80年代男子高生の取るべき道は・・・
①ゴールデン洋楽劇場〜カーグラフィックTV〜ベストヒットUSA〜少し寝て〜MTV〜・・・のコースか・・・
②友人宅に遊びに行って〜ゴールデン洋楽劇場〜カーグラフィックTV〜ベストヒットUSA〜談笑して〜MTV〜・・・
のコースと大抵相場は決まっていた。
(悲しいかな、ここに女子の影が一つも無いのは『モテね〜系男子』の宿命というべき、寂しい事実の現れか・・・(涙)
さて。
そんな男子高生達には、それに相応しい楽しみがあった。
『洋楽ヒットナンバー予想大会』だ。
ルールはカンタン。
第一土曜の夜に洋楽番組を皆んなで観て、その中から売れそうな曲やアーティストをピックアップ。
月末のチャートアクションを集計して、その結果で勝敗を決めるというもの。
流石に金の無い高校生のやる事だ。
特に金銭などは一切賭けず、それより何よりその年代の男子が大事にしているもの・・・
即ち自分の『センス』や『直感』を賭けた『音楽的先見力』こそが、その勝敗の全てに要約されていた様に思う次第。
で。
その夜僕はヒットチャートを爆進する予感に溢れた、物凄くカッコいい曲に出会うのだった・・・
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「Lying」Peter Frampton 1986年
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Peter Frampton。
地球初のミリオンヒットとなったライブアルバム
『Frampton Comes Alive! 』(1976年)
で一躍スーパースターの仲間入りを果たした、イギリス出身のミュージシャンだ。
大ヒットから10年という月日が経っていたものの、『Frampton Comes Alive! 』の栄光は
揺ぐ事などなく、僕の様な若輩者でさえ、そのアルバムの素晴らしい偉業を知っていた程だ。
しかし、ことピーター本人については『過去の人』というイメージが、80年代の音楽業界全般に広がっていた様に感じた。
そんなPeter Framptonがニューアルバム『Premonition (1986年)』を発表し、上記のシングル「Lying」をカット。
ポジティブな魅力に溢れた『いかにも80年代的』なサウンドにヒットの予感を感じた僕は、迷わず友人達に『ヒット宣言』をするのであった。
しかし結局。
ビルボードチャートのメイン上位には入れなかったものの、ロックチャートでは4位を記録。
それより何より、後になってから僕の感性の鋭さを明示する様な事柄が分かったのだ。
ビデオのメンバーを観てみよう。
ベーシストは『ディシプリン・クリムゾン』解散後、セッションマンとして更に名を馳せていた『トニー・レヴィン』(!)
ドラマーは『AWB』で活躍した後、やはりセッションマンとして不動の人気を誇った後、『トム・ペティのハートブレイカーズ』に籍を置く『スティーヴ・フェローン』(!)
しかも、アルバムにもう一人参加しているドラマーは、泣く子も踊り出す『オマー・ハキム』(!)
と重鎮・レジェンドばかり。
やるな僕よ。
まだDTだった僕を褒めてやりたい気分だ。
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何故ピーターが過去の人となってしまったのか?
やはり数年後に見事復活する事となる『フリートウッドマック』との違いは、かたやマックが新たなポップスタイルを自らの血肉としたのに対し、ピーターが提示した『ギターロックとしての時代性のズレ』は、実際かなり大きかった。
そうなんだ。ピーターが耕してきた土壌は、暗闇の爆撃機により既に焦土と化してしまったのだ・・・
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プロモーションビデオの最後に、ピーターが男から声を掛けらるシーンがある。
『あんた、ピーターフランプトン?』
ピーターが苦笑いする。
『やっぱりジェフ・ベックだっけ?』
あれから36年。
久々にビデオを観返して僕も苦笑いした。
今や語られる事の少なくなったピーターの偉業は、自虐的にならずとも永遠に輝き続けて行くのだから・・・
I Want To Show Me the Way・・・
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