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1984年。予備知識も無くシングルレコードを買う。

僕は夏になるとアルバイトで稼いだお金で、毎日の様にレコードを漁っていた。

まとまったバイト代が入ればLPレコードが買えるのだけれど、バイトの稼働時間が短い時などは、シングルレコードしか買えないという次第。

もちろんシングルを買うにしても、自分が見込んだ(←何様?)ヒットチャート上位に絶対行ける(気がする)曲を厳選に厳選を重ね購入。

そうして選んだシングル曲・・・マレイヘッド『Onenight in Bangkok』やジャック・ワグナー『All I need』などが上位をマークすると、僕は友人の前で鼻高々だったものだ。

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その日もアルバイトを終えた僕は、真っ直ぐにレコード屋へGO。
バイトの稼働時間が少なかったので、手にはシングル盤が1枚買えるお金。


『今日は更によく吟味して買わなければいけない!!』


無駄のない自己投資をする為に、無駄な程の緊張感が走る。
ドキドキしながらレコード屋の自動ドアをくぐりますと・・・。


目新しいシングルがレコード棚に鎮座している。

『ジェ、ジェリービーン?誰だっけ??
そうだ!あのマドンナの噂の彼氏だ!!』

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『THE MEXICAN』JELLYBEAN


その音楽性はよく知らない。
だが、この前NHK FM『クロスオーバーイレブン』で聴いた楽曲は結構良かった・・・ような気がした。

見ればスリーブ上には『全米ディスコチャート・No.1』の文字が踊っている。


『この曲は聞いたことないけど、これにしてみよう!!ディスコ・チャートを席巻しているなら、きっとポップチャートの上位を余裕でマークするだろうし♫』

いつもは慎重に吟味し、検討に検討を重ねる筈の僕だが、何故かこの日は軽いノリでジェリービーンのシングルを買って帰った。


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帰宅するとワクワクしながら早速レコードに針を落とす。

『アレ?アレレ?』

出てきた音は僕が期待していた音とは全く違うものだった・・・

『マジか?!これ、売れないだろう・・・』

僕は心底落胆し、そのシングルレコードをシングルコレクションの1番奥に仕舞い込み、
以来聴く事はなかった・・・


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刻は2019年。
僕は長年行方不明になっていたシングルレコード群を、漸く押し入れの中より探し当てた。
どれも高校生の時にアルバイトして買った、思い出のシングル盤達だ。

この中にDJユース的にマストなシングルが眠っていた。

その名は『ザ・メキシカン』
アーティスト名は『ジェリービーン』

そう。そうなんだ。
実に皮肉なものだ。

僕がツマラナイと思っていたレコードは、今やDJ御用達の盤という・・・

僕は先見力が有るのか?
無いのか?

非常に複雑な心境の2021年の春である。

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