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税効果会計

こちらのnoteで税について学習しましたが、このままだと税引前当期純利益が法人税等に対応していないので、会計と税法に差異が生じてしまいます。この2つを対応させる処理を税効果会計と言い、簿記2級では一時差異の3パターンを学習していきます。

◯一時差異

一時差異とは、一時的に生じてもいずれ解消される差異のことです。逆に永久に解消されない永久差異というものもあります。

・引当金の繰入限度超過額

簿記3級で決算時に貸倒引当金の設定をするという学習をしました。

実は貸倒引当金繰入額のうち、税法上の限度額を超える金額については損金不算入となっています。ということは会計上の法人税等よりも税法上の法人税の方が多いということになるので、損益計算書に記載された法人税等を原産調整しなければなりません。

言葉では分かりづらいので、例をもとに見てみましょう。

例)決算において次のようになった。
・当期の収益は1,000円、費用は500円
・費用のうち100円は貸倒引当金を繰り入れたが、そのうちの50円については損金不算入となった。
・実行課税は40%とする。

税引前当期純利益 = 1,000 - 500 = 500
損金 = 500 - 50 = 450
課税所得 = 1,000 - 450 = 550
法人税等 = 550 × 40% = 220

つまり会計上は
法人税等 = 500円 × 40% = 200円
のはずなのに、実際に支払うのは220円のため差異が生じてしまっています。

では税効果会計の仕訳をしていきましょう。
まず貸倒引当金の設定の仕訳をします。
①(貸倒引当金繰入)100  (貸倒引当金)100

次に損金不算入金額に実効税率を掛けた金額を求めます。
②50 × 40% = 20

②で求めた金額を対象の損益項目の逆側に法人税等調整額として処理し、その相手方は借方なら繰延税金資産として資産で、貸方なら繰延税金負債として負債で処理します。

今回は対象の損益項目である貸倒引当金繰入(費用)が借方にあるため、②の金額を法人税等調整額として貸方に、借方を繰延税金資産にして仕訳します。
③(繰延税金資産)20  (法人税等調整額)20

要は来期以降支払うであろう税金を今期に多めに払ったということです。
これによって損益計算書も下のようになります。

これで会計上の法人税等が調整されました。

では貸倒れが起きてしまい、これら貸倒金がなくなった場合はどういう仕訳をするのでしょうか。
その場合は差異が解消されるので、③の逆仕訳を行います。
(法人税等調整額)20 (繰延税金資産)20

・減価償却費の償却限度超過額

減価償却費も税法上の限度額を超える金額については損金不算入となっています。ではどういった時に限度額を超えるのでしょうか。

中古で備品等を購入した場合、法定耐用年数よりも使用限度が短いだろうと感じる場合があります。具体的にいうと、中古パソコンを買った場合、法定耐用年数は4年ですが、使用状況を考えると使用可能な年数の見積もりが3年が妥当だと考えられる場合などです。

仕訳は引当金の繰入限度超過額と同じ流れで行います。

例)次の内容に基づいて、税効果会計に関する仕訳を行う。
・備品400円について定額法(耐用年数2年、残存価額0円)により減価償却を行う。
・なお法定耐用年数4年、実効税率は40%とする。
会計上の減価償却費 = 400 ÷ 2 = 200
税法上の減価償却費限度額 = 400 ÷ 4 = 100
①(減価償却費)200  (減価償却累計額)200
②100 × 40% = 40
③(繰延税金資産)40  (法人税等調整額)40

備品を売却したり、除却した場合には差異が解消するので、③の逆仕訳を行います。
(法人税等調整額)40 (繰延税金資産)40

・その他有価証券の評価差額

決算時において、全部純資産直入法を用いてその他有価証券の評価替えを行うことを学習しました。

しかし税法上ではその他有価証券の評価替えは認められていません。そこで同じように税効果会計を適用する必要があるのですが、全部純資産直入法の場合資産額を直接加減するので損益の項目がありません。そのためここでは法人税等調整額の代わりにその他有価証券評価差額金で処理します。それ以外は同じ手法です。

例)次の内容に基づいて、税効果会計に関する仕訳を行う。
・その他有価証券の帳簿価額200円を、時価100円に評価替えをした。
・全部純資産直入法を用い、実効税率は40%とする。
①(その他有価証券評価差額金)100 (その他有価証券)100
②100 × 40% = 40
③(繰延税金資産)40  (その他有価証券評価差額金)40

例)次の内容に基づいて、税効果会計に関する仕訳を行う。
・その他有価証券の帳簿価額100円を、時価200円に評価替えをした。
・全部純資産直入法を用い、実効税率は40%とする。
①(その他有価証券)100 (その他有価証券評価差額金)100
②100 × 40% = 40
③(その他有価証券評価差額金)40  (繰延税金負債)40

翌期首に洗替法を用いて逆仕訳をした際に、繰延税金資産(負債)の仕訳も同様に逆仕訳します。
(繰延税金負債)40 (その他有価証券評価差額金)40  


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