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有価証券

有価証券とは、債券や株券、約束手形、小切手、商品券など現金に変えることができるような価値のある証券や証書のことです。

また国債や会社が発行する社債などをまとめて公社債と言います。

有価証券は保有目的により下記の4つに分類され、それぞれの保有目的に応じた勘定科目で資産として処理します。また、有価証券の取得原価は購入代価に手数料などの付随費用を足した金額となります。

有価証券の取得原価 = 購入代価 + 手数料等の付随費用

購入代価は次のように計算します。
株式の購入代価 = 株価 × 株式数
公社債の購入代価 = 単価 × 購入口数

①売買目的有価証券

時価の変動を利用して売買することで利益を得ることを目的として保有する有価証券です。

②満期保有目的債券

利息の受け取りなどを目的として、満期まで保有するつもりの債券です。

③子会社株式・関連会社株式

株主総会では、原則として1株につき1議決権が与えられており、この議決権の多数決によって会社の重要事項が決定されます。そのため過半数の株を持っていれば、自由に議決を決めることができるということになり、この支配している側の企業を親会社、支配されている側の企業を子会社といいます。

また上記のように支配しているとまではいかないけれど、取引などを通じてある程度意思決定に影響を与えることができる企業を関連会社といいます。

子会社株式・関連会社株式とは、子会社・関連会社が発行した株式のことで、支配力や影響力を保持する目的の有価証券です。

④その他有価証券

上記3つにあてはまらない有価証券です。

例)下記の有価証券を購入した。
・売買目的でA社株式100株を1株100円で購入し、現金で支払った。
なおその際に売買手数料として100円も一緒に払った。
・満期保有目的でB社債権20,000円(額面総額)を額面200円につき100円で購入し、現金で支払った。
・支配目的でC社株式300株を1株300円で購入し、現金で支払った。
・業務提携目的でD社株式400株を1株400円で購入し、現金で支払った。

売買目的有価証券 = 100 × 100 = 10,000
満期保有目的債権 =(20,000 ÷ 200)× 100 = 10,000
子会社株式 = 300 × 300 = 90,000
その他有価証券 = 400 × 400 = 160,000
(売買目的有価証券)10,000 (現金)270,000
(満期保有目的債権)10,000
(子会社株式)90,000
(その他有価証券)160,000

◯受取配当金と有価証券利息

受取配当金とは、他の法人から受け取る利益の配当や剰余金・収益の分配のことです。株主には配当金領収証が送られ、これを銀行に持っていくことでことで現金に換えることができます。

有価証券利息とは、公社債から発生する利息のことです。公社債についてくる利札(クーポン)と呼ばれる利子の支払保証券も同様に現金に換えることができ、これら現金に換えることができるものを通貨代用証券といい、現金の増加で処理し、受取配当金有価証券利息として収益で処理します。

例)A社株式について、配当金領収書100円を受け取った。またB社社債について、クーポン200円の期限が到来した。
(現金)300  (受取配当金)100
        (有価証券利息)200

◯有価証券売却益(損)

持っている株式や公社債を売却したときの損益は有価証券売却益として収益、または有価証券売却損として費用で処理します。

例)当期中に売買目的で購入したA社株式のうち10株を1株200円で売却し、代金は現金で受け取った。なお購入時の株価は100円であった。
(現金)2,000  (売買目的有価証券)1,000
        (有価証券売却益)1,000

例)当期中に売買目的で購入したB社社債のうち10口を1口90円で売却し、代金は現金で受け取った。なお購入時は1口100円であった。
(現金)     900  (売買目的有価証券)1,000
(有価証券売却損)100

◯平均原価法

平均原価法とは、複数回に分けて同じ株式を購入したときに、平均の単価で帳簿価額を計算する方法です。

例)当期中に5回株式を購入した。
1回目:1株100円を100株
2回目:1株110円を20株
3回目:1株120円を10株
4回目:1株90円を60株
5回目:1株100円を10株
購入した株式のうち100株を1株105円で売却し、代金は現金で受け取った。
平均単価 = (100 × 100 +  110 × 20 +  120 × 10 +  90 × 60 +  100 × 10)
     ÷ (100 + 20 + 10 + 60 +10)
    = (10,000 + 2,200 + 1,200 + 5,400 +1,000)÷ 200
    = 19,800 ÷ 200 = 99
(現金)10,500  (売買目的有価証券)9,900
        (有価証券売却益)600

◯有価証券評価益(損)

決算時において、売買目的有価証券の帳簿価額を時価に修正することを評価替えと言います。この時、時価と帳簿価額の差額を有価証券評価益として収益、または有価証券評価損として費用で処理します。

例)決算において、帳簿価額100円の売買目的有価証券を時価200円に評価替えする。
(売買目的有価証券)100  (有価証券評価益)100

例)決算において、帳簿価額200円の売買目的有価証券を時価100円に評価替えする。
(有価証券評価損)100 (売買目的有価証券)100

・権利落ち

株式を保有しているともらえる配当金や株主優待などは、権利確定日に保有していないともらえることができません。それだけではなく権利を得るには権利確定日の3営業日前の時点で株式を保有している必要があります。そのため次の日からは権利がもらえないのでこれを権利落ちと言い、一般的に株価が下落します。

細かい仕組みは簿記の範囲外のため割愛しますが、この権利落ちのために当期で貰えなかった収益は来期で貰う予定の受取配当金として収益で処理し、相手方は未払配当金として資産で相殺します。こうすることで権利落ちをしていても当期の収益として計上することができます。
※なぜそうなるかは株の話になるので、とりあえず簿記ではそうなるとだけ覚えてください。

例)株価は配当権利落ちしており、来期に受け取ることが予想されている配当金は100円である。
(未払配当金)100  (受取配当金)100

◯償却原価法

償却原価法とは、満期保有目的債権において額面金額と取得金額の差が金利の調整と認められるもの(金利調整差額)を毎期に一定の方法で帳簿価額に加算する方法です。その際の相手方は有価証券利息で処理します。

当期加算額 =(金利調整差額)×(当期の所有月数 ÷ 満期までの総月数)

例)3月末の決算において、昨年の10月1日に満期保有目的で購入したB社債権(額面総額20,000円、取得原価10,000円、満期年数5年)に償却原価法(定額法)を適用する。
当期加算額 =(20,000 - 10,000)×(6 ÷ 60)
      = 10,000 ÷ 10 = 1,000
(満期保有目的債権)1,000 (有価証券利息)1,000

◯全部純資産直入法

全部純資産直入法とは、決算日にその他有価証券において帳簿価額と時価の差額を直接調整する方法です。またその差額はその他有価証券評価差額金として資産(借方)もしくは純資産(貸方)として処理します。

例)決算日において、その他有価証券の帳簿価額は100円であったが、時価は200円だった。なお、全部純資産直入法を用いる。
(その他有価証券)100  (その他有価証券評価差額金)100

例)決算日において、その他有価証券の帳簿価額は200円であったが、時価は100円だった。なお、全部純資産直入法を用いる。
(その他有価証券評価差額金)100 (その他有価証券)100

・洗替法

翌期首において決算に行った逆の仕訳を行い、帳簿価額を取得現価に戻します。これを洗替法と言います。

例)翌期首に洗替法を用いてその他有価証券を逆仕訳する。
(その他有価証券評価差額金)100 (その他有価証券)100
      ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 
(その他有価証券)100  (その他有価証券評価差額金)100

◯端数利息

公社債は定期的に利息を受け取ることができますが、利払い日以外に売買した場合は前回の利払い日の翌日から売買日までの利息(端数利息)を処理する必要があります。

端数利息 = 1年分の利息 × (前回の利払い日の翌日〜売買日の日数 ÷ 365)

例)6月12日、売買目的で購入した社債(額面総額20,000円、取得原価10,000円、100口)を額面100円につき90円で売却し、代金は利息とともに現金で受け取った。なおこの社債は年利率10%、利払い日は3月末である。
売買目的有価証券売却額 = (20,000 ÷ 100)× 90 = 200 × 90 = 18,000
1年分の利息 = 20,000 × 10% =2,000
端数利息 = 2,000 ×(73 ÷ 365)= 2,000 × (1 ÷ 5)= 400
(現金)18,400  (売買目的有価証券)10,000
          (有価証券利息) 400
          (有価証券売却益)8,000

例)上記取引を購入した側の仕訳
(売買目的有価証券)18,000 (現金)18,400
(有価証券利息) 400


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