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タンゴ・葉山・遊散歩(3)


日曜朝の一色海岸
何隻ものパドルボードが次から次へ、
ゆったり気持ちよさそうに穏やかな海にこぎ出ていった。
どこか近くから特徴のある山鳩の鳴き声がした。
声に合わせてリズミカルに身体を揺すぶりたくなるような鳴き声だ。

タンゴは山鳩の声には全く反応しない。
岸辺に打ち寄せる波音には神経質に反応する。
海風が吹き荒れた翌朝の波音には特別反応的になって、そこら中を吠えまわる。
いま、ここで、聞こえた波音は決して大きくないのだが、
ワンワン吠えては駆け出そうとリードを引っ張った。
この波音への反応は一体何なのだろう?
怒っているのか、怖がっているのか、単に興奮しているだけなのか、
よくわからない。

同じように理由がわからないが、
小さい頃から、強い日の光が作り出す影にはすごく反応して大声で吠えたてた。
影を恐れているのか、光と影のコントラストに反応しているのか、
よくわからないが、いつもうるさく吠えたてる。

海岸を何組も犬連れが歩いているが、
うちのタンゴちゃんのように落ち着きのない様子の犬はいない。
何がこの子をこうしたのか?
ひょっとして、この子の前世は森の中で一番臆病者のハリネズミ
大水が出た時に、危うく水にさらわれそうになって、
それ以来、水が押し寄せる音に過剰に敏感になった・・・とか?

そんなことを薄ぼんやりと思いながら歩いていると
海鳴りの奥に静かな声が聞こえた気がした。
おーい、風よ、雲よ、涙色の思い出よ、
そこに本当の幸せはあるかい?と
すると
昨夜観た「海街Diary」のラストシーンがまざまざと蘇った
喪服を着た4人の姉妹が鎌倉の海岸で優しくもつれあっていた
あの海岸をお前も駆け回るかい、タンゴくん?

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