魔法の小動物
家の中を荒らしている小動物がいる。
食品を入れてある、胸の高さくらいまである棚の、扉が開いている。
いくつかのビニール袋が、棚の外に出て、ガサガサという音が聞こえる。
ネズミか?!と思って棚の扉がをもっと開けようとした瞬間、小動物が素早く飛び出て来てヒラリと宙を舞い、台所の、自分の目よりも上の高さに渡してある、物干しロープの上に飛び乗った。
その小動物と目が合う。それは、狸だった。
しかし、置き物の狸のように太ってはおらず、狐のようにスマートで、実際身のこなしも軽い。
実際、狸とはそのようなものだ。夜、クルマを運転していて、路上を横切る狸などは、こんな姿で、すばしっこかったりする。目も細く鋭く、まさに狐のようだ。
だが、これは狸なのだ。狸は物干しロープの上に四肢を張ってバランスを取り、私と目線を合わせたまま動かない。何かを語りかけて来るようだ。何だか神々しささえ感じる。
ハッと気が付いて、これはシャッターチャンスだと、スマホのカメラを起動し構える。
何故だか、上手くカメラが構えられない。ファインダー内の像が歪む。おかしい。何だか気が遠くなりそうだ。
急に眠くなって来たのか、意識をしっかり保てない。ファインダーの中の像が、まるで液体か気体のように、ドロリと、ふわーっと、動き出す。
それでも、辛うじてシャッターを切った。
何だかよく分からない、霊現象のような写真が撮れた。
それでも狸の顔や体と思しきものは写っている。まあいいだろう──そこで目が覚めた。
写真は枕元にある豆狸の置物。撮影地は、岡山県吉備中央町の魔法宮火雷神社。化生狸の伝説がある。詳しくは今年のムー2月号に掲載した記事にて。noteでも購読可能(後半有料)。
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