読書記録 vol.4『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』

《本書の概要》
 前回に続き、山口周氏の著書を紹介する。
 世界のイノベーティブな組織を調査・分析した著者は、日本人(個人)の創造性が従来から高いことを指摘したうえで、日本企業でのイノベーション(※)促進を阻害する要因として「組織のあり方」を指摘する。

※イノベーション:山口氏の定義では、「これまでに誰も考えたことがない新しい要素の組み合わせ」とする。

 本書では、イノベーションを阻害する組織のあり方を変えるために今後考えていく必要のあるものとして、「多様性」「風土」「仕組み」「リーダーシップ」などに言及する。

《本書で得られた気づき》
▼挑戦と交流

 山口氏の主張に、イノベーションは「新参者」(若手やその道に精通していない人)から生まれるというのがある。組織のなかにおいても、報酬や罰則、指示命令で縛るのではなく、「私はこうしたい」を許す=挑戦が許される風土が必要であるとする。

 そのうえで、組織内の情報を共有・受容する「密度」や社外との活発な情報交換(外にむかった広さ)が、イノベーションの目利きと養成していく、としている。

 前回紹介した『ニュータイプの時代』でもそうだが、著者は「規律と遊びのバランス」を大切にする風土(組織)の醸成を重要視する。これはまったく同感である。

 上から押し付けられた(あるいは以前からある)マニュアルをなぞることのパフォーマンスは、よくて以前のものを100%にする、よくない場合は劣化版を作ることになり得る。そして、そこには改善の「カ」の字も存在しない。

 ここに、新たな「遊び」(=チャレンジ)を認めることで、新風が巻き起こる。凝り固まったマニュアルは、新しい姿へと進化する。間違ってもいいと思う。そこは組織全体でカバーしてあげることがキモになってくる。

 新風をフィードバックする姿勢(仕組み)も大事。これは最近、とくに感じることである。いくら新しいモノを作成しても、表に出すクオリティになっていなければ、失敗の確率は高まる。作る→チェック→直す→チェック→出す→作る、この高速循環がよりクオリティの高いものを作り出すうえで必要になっていく。

 悩んでいても(考えすぎても)仕方ない。作ろう!

▼リーダーと文脈(コンテキスト)
 ビジネスにおいて、議論されて久しいテーマに「リーダー論」(リーダーシップ論)がある。現在はサーヴァントやアサーティブが主流であろうか。そのリーダー論に対して、山口氏の考え方は面白い。

 リーダーシップとは、リーダーの属性として独立するものではなく、文脈(コンテキスト)に照合しないと有効性が議論できない相対的な概念であるとする。リーダーとフォロワーの関係やその人を取りまく環境によって変化する概念であるということ。

 もちろん、イノベーティブな企業に多いリーダーの資質や、日本企業に多いリーダー気質を議論にいれているが、ある一定のステージのなかで、リーダーがあるべきリーダーとしてのあり方を考えるうえで、今後意識していく必要がある考え方だと思う。

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山口周『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』(光文社新書、2013年10月)
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