欲しい本の値段に、絶望した話

私は本好きな建築学生だけど、あまり建築の本は読まない。『建築家なしの建築』とか、先生がこれは必読と言っていたような本も、未だに読んでいない。

唯一持っている建築っぽい本は、古本屋で買ったケヴィン・リンチの『都市のイメージ』だけど、それすら読破できていない。あとは、見た目だけで買った、分厚くて大きな洋書も持っているけど、それはどちらかというと観賞用(挿し絵を眺める用)になっている。

そんな私だけど、別に建築に興味がないわけではないし、せっかくだからなにか読んでみたい、と思ったのが昨日のこと。それから、本屋で必死に面白そうな本を探した。

だけど建築の本って、どうして私をこんなに惹き付けないのだろうか。というくらい、欲しいと思う本に出会えなかった。

そんなこと言わずに、何でも読んでみた方がいいのだろうけど、たいして読みたくもない本を買っても、積ん読になるのは目に見えている。積ん読するのは嫌いじゃないが、好きじゃない本が積み重なっても、重荷になるだけな気がした。

そういうわけで、昨日は何も買わずに本屋を後にした。

だけど、夜になっても私の「建築の本が読みたい」という衝動は収まらなかった。

本当に、自分のこの熱しやすく冷めやすい性格には、困ってしまう。今この瞬間は本がほしくてたまらなくても、きっと本を手に入れた瞬間に、興味が薄れ始めてしまう。そして、そう分かってはいても、行動せずにはいられないのだ。

というわけなので、昨日は日付が変わる頃まで、ネットで本を探していた。読みたいと思える本は、見つかった。本当に、インターネットはすごい。

見つけた本は、

『新版 アイリーン・グレイ――建築家・デザイナー』(ピーター・アダム、みすず書房)

名前も聞いたことのなかった女性だけど(建築学生的には知ってるべきだったかな)、あらすじだけで彼女の人生に惹かれた。

建築の本に面白味を感じられず、「私って世の中の建築好きとはきっと気が合わないんだろうな」と思い始めていたけれど、自分でも読めそうな本が見つかって安心した。

よかった、よかった、さて買おう。あれ…。
高い…。

本のお値段¥5,832。あらまぁ。普段は本にお金をかけることに、躊躇しない私だけど、これは高いと思ってしまった。買える本ではない。でも、すごく読みたい。

ダメと言われてやりたくなるのは、人間の本能。買えないと分かると、ますます本が欲しくなった。だけど、夏には旅行も控えている。預金残高にだって余裕はない。

普段23時前には、布団に入るのに、その時はすでに24時をまわっていた。眠くて、眠くて。頭が働いていないのが分かる。このままでは買ってしまいそうだという危機感を覚え、私はパソコンを閉じた。

高い衝動買いは怖い。この前も、1万円を越える眼鏡を、動物園帰りに衝動買いするという、謎の失敗を犯したばかりだ。

ここは冷静に、「6千円、どうしたらいいの?」とぶつぶつ呟きながら、ベットに入った。

そして、朝が来た。

本が欲しい。6千円が欲しい。無駄に余ってる6千円が、予想外の6千円が、本に使うしかない6千円が、降ってこないかなあ。

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