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側頭骨

1.隣接する骨

図1 右側頭骨の内側面

後頭骨

後頭乳突縫合
錐体基底部縫合
錐体頚静脈縫合

頭頂骨

頭頂乳突縫合
頭頂鱗部縫合

蝶形骨

蝶鱗縫合
蝶形錐体縫合
※グルーバー靭帯

頬骨

頬側頭縫合

下顎骨

TMJ

2.隣接する構造物

側頭骨は以下の構造物と関係している。したがって側頭骨の可動性喪失があればこれらの構造にも問題を起こす可能性がある。

  • 中硬膜動脈

出典:視覚解剖学 Visual Anatomy
  • 頚静脈孔

  • 動眼神経

  • 滑車神経

  • 三叉神経

  • 外転神経

  • 顔面神経

  • 内耳神経

  • 舌咽神経

  • 迷走神経

  • 副神経

  • 小脳テント

乳様突起の内側面に沿って付着し、そこから錐体上縁に至る。上錐体静脈洞を形成する。
出典:視覚解剖学 Visual Anatomy 「13」が上錐体静脈洞
  • 耳管

  • 胸鎖乳突筋

  • 茎状舌骨筋

  • あぶみ骨筋

3.生理的運動

MRP吸気

矢状面上で前方回旋
前額面上で内転
水平面上で内旋しながら外方
結果として鱗部が前方、外方、下方へ移動し、乳様部が後方、内方、上方へ移動する。

MRP呼気

矢状面上で後方回旋
前額面上で外転
水平面上で外旋しながら内方
結果として鱗部が後方、内方、上方へ移動し、乳様部が前方、外方、下方へ移動する。

4.鑑別

側頭骨のオステオパシー治療以前に以下の鑑別が必要。

  • 脳梗塞のめまい

  • 前庭神経炎

  • 聴神経(良性)腫瘍

  • 薬の副作用(抗菌薬のストレプトマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、フラジオマイシン、バンコマイシン、がんに対する一部の化学療法薬(例えばシスプラチン)、フロセミド、アスピリンなど)


5.オステオパシー機能障害

以下はオステオパシーの適応となる。

縫合の固着
側頭骨の可動性喪失

オステオパシー機能障害の原因

  • 外傷

  • 後頭骨の運動制限

  • 蝶形骨の運動制限

  • 小脳テントに引っ張られて

  • 胸鎖乳突筋に引っ張られて

  • 側頭筋に引っ張られて

オステオパシー機能障害による症状

  • めまい

  • フラつき

  • 耳鳴り

  • 頭痛

  • 耳痛

  • 中耳炎

  • 顎関節症

頚静脈、迷走神経のしめつけで頭の疲労、吐き気、不安感、内臓機能低下を訴えることがある。
動眼神経、滑車神経、三叉神経、外転神経の機能低下で目の疲れ、痛みを訴えることがある。
耳管の固着によってジーという耳鳴りや、圧抜きができなくなることがある。
胸鎖乳突筋の緊張によって頭痛、首の傾き、乗り物に酔いやすくなる
茎状舌骨筋の緊張では歯ぎしり、咽頭の痛みを訴える。
あぶみ骨筋の緊張では聴覚過敏を訴える。

オステオパシー検査

両側のリスニングテスト
両側側頭骨のMRPに追従し、動きの振幅、質を左右比較する。

両側のインダクションテスト
術者はMRPの動きを1秒加算し、その後は追従する。動きの振幅、質を評価する。

両側のモビリティテスト
術者はMRP吸気、呼気の動きに合わせて最終可動まで力を加える。動きの振幅、質を評価する。

片側の内外旋モビリティテスト
2つの仮想軸として水平軸と垂直軸を立て、軸回転させてみる。4分円に分割しどこがより制限が強いか評価する。

オステオパシーテクニック

OM上部ダイレクトテクニック
後頭骨を固定し、側頭骨を外反させる。リリースを感じるまで保持。

OM下部ダイレクトテクニック
後頭骨を固定し、側頭骨を内反させる。リリースを感じるまで保持。

錐体頚静脈ダイレクトテクニック
後頭骨を固定し、側頭骨を前方へ移動させる。リリースを感じるまで保持。

錐体基底部ダイレクトテクニック
後頭骨を固定し、側頭骨を後外方へ引き抜く。内外旋を追加しながら引き抜いてもよい。

頭頂乳突ダイレクトテクニック
左右の拇指をクロスさせ両骨間を理解させる。

頭頂鱗部ダイレクトテクニック
左右の拇指をクロスさせ両骨間を理解させる。

蝶鱗上部ダイレクトテクニック
尾方手の薬指を口腔から翼突突起に、示指を大翼にコンタクトして蝶形骨を前方に。頭方手で側頭骨を把持し外反させる。

蝶鱗下部ダイレクトテクニック
尾方手の薬指を口腔から翼突突起に、示指を大翼にコンタクトして蝶形骨を尾方に。頭方手で側頭骨を把持し内反させる。

赤:蝶鱗縫合上部は蝶形骨前方と側頭骨外反で開く
オレンジ:蝶鱗縫合下部は蝶形骨尾方と側頭骨内反で開く

側頭頬骨ダイレクトテクニック
左右の手で側頭-頬骨間を開く。

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