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丸太を積む (3)

「建てる」「自分一人で建てる」と決め、次にしたことは「家を建てる手順」と「そのために必要な道具と資材」を調べることだった。

それと並行して「どこに建てるのか」「どんな小屋を建てるのか」という課題にも取り組み始めた。

文章を書くときは5W1Hだと小4の担任の中村先生から教わったが、文章だけではなく建築という行為にも同じことが求められると、そのとき知った。

いつ(工期)、どこで(現場)、だれが(施工者)、何を(建物の仕様)、なぜ(動機、理由)、どうやって(方法論、機材資材、予算)…と紙に書いた。

まずはwhen いつ。

このテーマと向き合って、私は自分が「自分の好きなように時間割りを組める」自由を得ていることに気がついた。誰かが決めた工期に従う必要がない。ログハウスをいつまでに建てなければならないと自分が決めさえしなければ、何年かかっても何の支障もない。いつ始めてどんな風に建てようが構わない。ただ一点、建て始めたら途中で止める訳にはいかないと強烈に思ってた。私を理解し受け入れ、建てる場所を提供し、応援してくれてる地主さんの厚意を無駄に出来なかったから。

森でフリースクールを始めたことを聞き付けて何人も友人が訪ねてくれたが、みな「自分で自分の時間割りを組める自由」があることを羨ましがってくれた。学校であれ役所であれ病院であれ会社であれ宗教であれ、組織に身を置くと、組織の都合が優先され、「自分が、いまやりたいことを、やりたいように、納得いくまで、やりきる」などという自由は認められない、と友人たちはいった。

そういわれると、自分の best interest を知り、それに取り組む(遊ぶ)場として森にフリースクールを始めた人間が、ログハウスを手作りするのはとても象徴的なことだと思えた。

自分の人生を自分の好きなように遊ぶ。その遊びの一つとしてログハウスを建てる。それならば、建てる過程で「ねばならない」という言葉を使わないようにしようと決めた。「あれをせなあかん」「これをせなあかん」というタスクに振り回されて生きてきた私が、そこから解放されて自由自在に小屋を建てるには「ねばならない」から遠ざかる必要があると思ったから。

ワクワクする気持ちや、やりたい!という内側から湧き出てくるエネルギーを出発点にする、という思いは今も変わらない。

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