『どすこいケーキ』

 トッピングにはドス。隠し味には鯉をふんだんに使ったケーキがこの世には存在している。新宿二丁目、今日もそのどすこいケーキを求めに一人のオカマがやってきた。
「やァだ!ここのケーキ美味しいって評判だから買いに来たのに、商品ぜんッぜん無いじゃないのォ!」
がつんがつんと厚底ヒールで地団駄を踏みながら、彼(彼女?)はショーケースに厚化粧の顔面を押し当てていた。
「ミセス、当店の決まりですので」
肩幅2mの店員がなにやら書かれたカードを差し出す。ミセス...?はちらりと目をやると頷いた、
「その申し出、受けるわ」
空のショーケースがあるばかりのケーキ店で、ミセスは深く……そして荘厳な…四股を踏んだ。 その所作、指先にいたるまでが至高。ミセスに店内が魅入ったさなかだった。
「どすこいッ!!」 ドン!!
瞬間、ミセスの「四股波(しこは)」が店員をつらぬく。店員の飛び散った赤黒い血液はケーキに飛び散る。
「異物混入ですね。割引してください」
ミセスは何事もなかったかのように、瀕死の状態である店員にクレームを入れた。 すると中から
「この店にとっちゃあお前が異物だぜ?」
しまった、店内の従業員の数を見誤ったか!店長が銃を構えて立っていた。ミセスは自分の失態を反省したのも束の間、容赦無く引かれたトリガーによりその場にばたりと倒れた。
「まあ、面白かったから良いじゃないか」
「ご来店ありがとうございました。ミセス」
刹那、ミセスはひらりと身を翻した。はるか東の国に伝わる戦士の構えと一致していた。その技で店長は投げ出された。この勝負は
まだ終わっていなかったのだ。 ガシャーン! 店長の赤い苺色の返り血が、ミセスの白い生クリーム色のドレスにしたたる。 その姿、正に「どすこいケーキ」…。
「ごっつぁんでしてよ」
ミセスはクスリと笑った。

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作者 ケイマ/少年/人外/ぱりぱり
使用ツール:オンラインじゃれ本
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