『誠実の水鏡』
「なーに見てるの?」
「わっ」
ふと振り返ると、彼が少しはにかみながらこちらを覗き込んできた。 夕暮れ、友人を待つ図書館で一人本を読む私を見て話しかけてきたらしい。
「ドラえもん好きなんだ。俺も好きだよ。昔のドラえもんって結構辛辣なんだよね」
意外にもこの男、ドラえもんに詳しい。私はふふっと笑ってしまった。その後は、2人でジャイのび派かのびジャイ派かで盛り上がった。後に判明するのだが、彼はCPの左右の話とはわかっておらず単純に語感の良さを考えていたのだという。常に言葉と向き合う姿勢…そう彼は学業と並行して俳優業を営んでいた。芸能活動で勉強を疎かにすることはなく、真摯に人生と向き合っている。 だからこそ、こんな個人的で矮小なオタク語録にも頷いてくれるのだろう。 まぁ、今の私は気づいてないのだが…
「夢主はなにが好きなの?」
「えっ、CP?え、えーとね…」
「言いにくかったら大丈夫だよ。そういうことって言いにくいよね」
彼は優しく微笑んだ。この時確信した。私はこの人と将来を共にするのだと。
それから10年後、私は壁サーになっていた。
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作者 少年/人外/ぱりぱり
使用ツール:オンラインじゃれ本
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