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モネとアップルパイ

2024年のやりたいことリストのひとつに、「美味しいアップルパイと紅茶を飲む」がある。
正月にやりたいことリストを書いていたときに、ふと思いついたのだ。
寒い冬の日に熱々のアップルパイを食べたい…!と。

母の手料理が好きだ。
出来上がるのを楽しみに待っていたあの日々を、とてつもなく懐かしく感じるひとときがある。
しかし年々その味を思い出せなくなっていた。
365日私の体を形作ってくれていたものは、今やもう、365分の1か2なので仕方ないと思いつつも、あの頃に帰りたいと思う日がある。

その忘れられない味がアップルパイなのかというと、そういうことでもない。
母がバナナケーキを作ってくれたことは覚えているけど、アップルパイはあまり記憶がない。
パイシートがあったような気がするので作ってくれていたかもしれないし、記憶違いかもしれない。

だけど、毎年書いているやりたいことリストに今まで出てこなかったのに、今年は書いてる最中にアップルパイを食べたいなぁと思ったのは、何かの記憶に釣り針がひっかかったからだ。
まぁ美味しいアップルパイ食べられたらラッキーだし、書くだけ書いとこうと思って、メモしたのである。

2月10日〜5月6日まで、大阪中之島美術館で「モネ 連作の情景」が開催されている。
美術に詳しくない私でも知っているモネ。
水面が光ったようなキラキラした感じが好きだ。
行ってみたいなと思い、友人を誘って行ってみた。

久しぶりの大阪だ。
せっかく大阪に出てくるのだし、何か特別なことしたいなぁ。
そのとき1ヶ月前に書いた、やりたいことリストを思い出した。

友人に話してみると、案外乗り気だった。
よし、決定!
そういうことでその日は、私達にとって「モネとアップルパイの日」という記念日になった。 

   ◯◯◯

モネの美術展はすごく良かった。
モネが印象派と呼ばれる前の作品からはじまり、印象派に至るまでの経緯を作品とともに解説し、そして連作に続いていった。
美術史や世界史が得意でなかった私には、大変勉強になり、その背景を知ることでより作品を味わうことができたので、とても良かった。
大人の学び直しとして、まず美術史を勉強し直そうかなと思ったほどだ。

肝心のモネの作品を近くで鑑賞できることも良かった。
何となく好きっていうだけだったモネの作品が、なぜ好きなのかを言語化できるようになったというのが大きい。

まず、作品全体の透明感。

次に、モネの作品のなかに入りたくなるような、ワクワクする世界観。

最後に、近くで見たら描き込まれていないのに、遠くで見たら走り出す子供に見えたり、誰かが海岸で立っているように見える技術。

美術に詳しい人が読んだら呆れられるかもしれないが、正直な感想だ。

透明感は、空の雲の様子や、光が差し込んでいる作品全体の様子がとても美しいなぁと思った。
また、水面に反射しているように描くところがスキになった。

モネの作品は、その作品を起点として、そこから物語が始まっていきそうな、その絵の中にいる人が動き出しそうなワクワク感があった。
風で葉を揺らしている木々の様子や、海風を受けている旗の様子が特に印象に残っていて、自分がまるでその場にいたら、またこの海風で髪の毛パサパサなるやん。嫌やな〜って思ってそうだなぁというように作品に自然に入っていけた。

私が今までに鑑賞したことのある作品を思い出してみると、その絵は静かだった。
他の人の作品でもその絵から物語を想像することはできるが、今でも動き出しそうだと思えるのはモネの絵だけだ。
しかし他にもそう思えるような作品がこの世にはあるのかもしれない。
それを確かめたいから、これからも美術鑑賞は続けたい。
人生の楽しみができて良かった。

最後の展示室では写真撮影を許可された作品があった。
全部じゃなく、自分が好きだなぁと思うものだけを撮影した。
高性能なカメラがスマホに搭載され、誰でも手軽に写真をシェアするのが当たり前の時代に飽きてきた。
自分の物差しで撮影した写真は、見てほしい人にだけ見てもらえたらいいのかなって思う。

出口を抜けたらグッズ会場。
私が好きだと思った作品はあまりグッズ化されていなかったので残念だったけど、良い栞に出会えた。
今その栞は私の手元にあり、読書の道標になってくれている。
友人はモネの作品がほどこされた傘を購入していた。
美術館を出た途端、小雨がパラパラ降ってきた。
早速開かれたその傘に雨粒がつくと、それさえも作品の一部になってとても美しかった。

   ◯◯◯

ふふふ。
念願のアップルパイとコーヒー。

中之島付近で探してみたけど、少し遠かったり、テイクアウトのみの所だったりで、丁度いいとこが見つけられなかった。
願いを叶えてくれたのは、梅田大丸7階にある「ショコラテリア・カフェ カカオサンパカ」

チョコだけじゃないの?と思ったが、アップルパイ 梅田と検索してみると確かにあるようだ。
百貨店で何かを食べる機会なんて早々無いので、少し緊張したが、迎えてくれる店員さんの笑顔や結構広めの店内で緊張はほぐされた。

さすがチョコ専門店。
美味しそうなチョコに関するものがいっぱいあり、チョコ好きの私は心が揺らぎかけたが、アップルパイと紅茶を頼んだ。
友人も苦渋の決断をして、同じくアップルパイと紅茶を頼んでいた。

しかしそれが正解だった。

見てほしい。
写真からも伝わるパイのサクサク感。チョコがかかっているとこ。そしてこのソフトクリーム!
こういうパイとかパンケーキとかにソフトクリームをつけるのが、私は大大大好きだ。
熱々のアップルパイとソフトクリームの冷たさがいいし、甘みも倍増するしで最高なのだ。

味の方も最高だった。
パイ生地の具合も良かったし、やはり何よりリンゴだ。
シナモンがきいたリンゴは、昔の思い出を引っ張り出してくれた。
こういう温まったリンゴを私はあの古い家で食べたことがある。
アップルパイを作ってくれていた時期は冬だったかもしれない。リンゴが安いという理由で。
また真相を聞きに会いにいこうと思った。
どうやって作るのかも聞いてみよう。

友人とは話題が尽きない。

友人はもう一度彼氏と一緒に観に来ようかなと言っていた。
美術鑑賞が共通の趣味と聞いて羨ましく思ったが、
友人は、うちのは昼呑み嫌いやから食べ飲みが共通の趣味のあなた達が羨ましいと言う。
隣の芝生は青く見えることがあるけど、お互いこの人じゃないと駄目って思う方が多いんだろうなぁと考えた。

カフェは色んな人が利用していた。
ご年配の方も、赤ちゃん連れの方も、私より若い感じの方も、それぞれが思い思い過ごしていた。

窓際の席からは、梅田の交差点で行き交う人々を観察できそうだ。
その席で、ホットチョコレートを飲みながら一息つく自分を想像する。
想像上の自分は、堂島で働く営業マン。大きい商談をしたご褒美にいつもこの店でホットチョコレートを飲むのが習慣。

あるいは、私はフリーランスのデザイナー。ビジネス書を片手にこの席に座ると、不思議とアイデアが浮かんでくるので、週3で利用している。

はたまた、英会話帰りの私。今日習ったことをノートにまとめるのにちょうどいいので、月2回はここで人々を見下ろしながら勉強するのが、良いモチベに繋がっている。

あったかもしれない未来を想像するのは楽しい。
新幹線に乗って東京〜大阪間を帰るとき、過ぎ去る景色を眺めてもしこういうところに住んだらどんな生活だろうとよく考えていた。

大人になるにつれ自分の行動の幅に制限をかけている気がする。
しかし、SNSで充実しているように見せたい願望も年々薄まっている。
若いときはそれが行動するモチベに繫がっていたので、色々積極的に行動して楽しかった反面、制限のない承認欲求に無自覚に苦しめられていたのだろう。
今は、誰かと比べることが少なくなった。
人と比べることが0になったと、格好つけて言いたいとこだが、まだまだその境地には達していない。
その分感情の波は穏やかになり、楽になった分、刺激がほしいときもある。

それを叶えるための、私のやりたいことリスト100。
私の性格上、やろうと思っていたこれができてないやん、と日々のモチベが下がるので、今年は今までやれてなかったことの多め。
積読しているこの本を読む、やろうと思って買った英語のワークをやる、万年の願いであるダイエット、今年は5キロ痩せると具体的に書いてみた。

そのうえで、今までやったことのないことにチャレンジして、日々の生活に刺激も少々付け足して。
登山して頂上でコーヒーを飲む。(そういう器具も欲しい)
落語を聞く。
ひとり日帰り旅をする。
流星群の観察。
蚤の市に行く。
赤紫蘇シロップを作る・・・などなど。

現状98個まで書けたので残り2個。
何を書こうかな?
きっちり書くより余白がある方がきっと楽しい。

書き出してみると、やりたいこと全部叶えるには1年ぼんやりしていたら時間が足りない。

自分の人生を楽しくするのも自分、つまらなくするのも自分次第。
今年は楽しいことがいっぱいあったといえる一年にしたい。






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