蘇るハリルホジッチプラン

『砕かれたハリルホジッチプラン』(五百蔵容著)を早速読みました。

ハリルホジッチ就任以来の試合を、ふんだんに図式化し分析を行うことでその手腕を明らかにするだけでなく、プロ化以降の日本代表監督のコンセプトを整理したチャートや5レーン理論など最近の理論についてもすっきりと図解されており、私のような素人にも理解されやすい作りになっていると感じました。(本音を言うとちょっとしんどいけど理解できるというレベルですが。)

日本代表について語るには一度は必ず読むべき本になっていると思います。ぜひ読んでみてください。

私がこの本を読んである結論に達したことをここで報告させていただきます。

ハリルホジッチ氏は、やはり解任されるべくして解任されたのだということです。

その理由は、この本の最後、補遺2に書いてあります。

1.補遺の意味するもの

村上アシシ氏は『僕は確信した。ハリルホジッチ解任の本当の理由を』と題して、以下のように述べました。

「この本を読むと、霜田氏がいかにハリルホジッチ(と彼が率いるチーム全体)を高く評価していたかが手に取るようにわかる。そんなハリルホジッチの後ろ盾を人事異動で干した田嶋氏。
選挙→降格人事→霜田氏退任→ハリル解任劇という依存関係がキレイに繋がって見えるのは、僕だけだろうかーー。」


アシシ氏は補遺1の霜田氏へのインタビューから、このような結論に至ったといいます。(詳しくは本文を読んでください。)私も同じような感想を持ちました。

ただ私はそれに加えて、補遺2にも、新しい見方を与えてみたいと思います。

ハリルの遺言こそ、ハリルを解任させた原因。それが補意2であると私は思っています。

2. ハリルホジッチの遺したもの

前述の拙稿「日本代表にもう『外国人』監督は要らないのか」でも述べましたが、外国人監督が就任するのは、「世界でチームを勝利へ導くノウハウを持っている」からです。

日本人がノウハウを持っているなら日本人の方が楽です。コミュニケーションの問題は起こりにくいですし、監督・選手双方で異文化適応に時間がかかることもない。通訳のコストも削減できます。それでも日本人監督にできないのはノウハウがないからです。

では、どうやったらノウハウを身に着けることができるでしょう?

外国人監督を招致しただけでは無理です。その内容を評価する基準がないといけないから。自分たちの側で、何らかの基準を持たなければ、比較・評価することは難しいです。「私が田嶋会長の発言から類推するのは、JFAには評価基準がないのではないか(拙稿より)」と思っています。

評価基準さえあれば地道な検証により、前進は可能です。いつかはノウハウがたまります。

この補遺2によれば、ハリルホジッチ氏は惜しげもなく、その基準を与えたといいます。「これはすべてのカテゴリーで使用してほしい」とさえハリルホジッチ氏は語ったと言います。

これはJFA側からすると、あり得ない幸運を手に入れたことになります。今まで望んでも、決して手に入れることが出来なかった世界基準を、しかも日本人に合わせて作成してくれるという弩級の幸運にであったのです。

ハリルは日本に「ノウハウ」の種を渡してくれたのです。この「ノウハウ」さえあれば、もう日本人でやっていけると思った人もいたに違いありません。
これこそが、ハリル解任のもうひとつの理由だと私は思いました。

3. 甦るハリルホジッチプラン

「日本代表のためのフットボールのアイデンティティ」はハリルホジッチによって作成され、皮肉にもその有用性によって、ハリルホジッチ自身を監督の地位から追いやってしまいました。

ハリルの真摯さと優しさが起こした悲しい事実。まさかという気持ちでいっぱいです。

このコンセプトをそのまま使うか否かは不明ですが、一つの評価基準としては今後も重用されるはずです。

そもそも技術評価委員会が出すレポートがこのレベルでないといけなかったのですが、日本は正直に言うとそのレベルに達していませんでした。(有能だと言われている原氏・霜田氏でさえそこまでたどり着いていないということは、以前、引いた岡野元会長の発言からも裏付けられています。)ハリルの基準を使わないとは思えません。

ハリルホジッチは去りましたが、そのプランは死んではいません。これからも常に日本サッカーに、ハリルホジッチは、その基準を通して、厳しい言葉を投げかけてきます。

この良くわからない解任騒動で、私たちはハリルの亡霊と戦い続けるという重い十字架を背負わされました。この本を読んでそう確信しました。

みなさんはどう思いましたか?

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