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アカツキはヴェルディの何を変えたのか?

去年はほんと戦略ブームでしたね。
マリノスがリーグを制したことで、今年は経営・組織といった部分に脚光が当たりそうですね。

最近はめっきりヴェルディ懐古厨と化してますが、話題の和式洋式論争、ロティーナ後から永井ヴェルディの事、戦略と組織のことも一度ざっくりとでも整理したいなと思っておりました。

何編かに渡って話すことになるのですが、内容は次の3つにまとまるかなと思います。

A. アカツキはヴェルディの何を変えたのか
B. 永井ヴェルディはバルサではなく○◯◯を目指すべき?!
C. ヴェルディらしさの正体とは?




ということで、新年最初の投稿はアカツキとヴェルディのお話にさせていただきます。

1. 戦略は真っ先に潰される?

“Culture eats strategy for breakfast” 

有名なP.ドラッカーの言葉です。(ドラッカーだなんて、おじさんぽい始まりですね)

「カルチャーが戦略を朝御飯に食べてしまう」とはよく言ったものですね。

新しい仕事のやり方を古株のおじさんが反対したり、全員でする早朝のラジオ体操を止められないとか、日本企業・組織ではよく見る光景ですよね。

新しいことをしようとしても、風土や習慣といった文化的な要因で阻害されてしまう。これは企業だけでなく、組織全般にあることですよね。プロスポーツはもちろんアマチュアの団体にも当てはまるじゃないかなと思います。




その要因として、次の6つを考慮すべきと言われています。

①Stories and myths(物語・神話)

②Rituals and routines(儀式・習慣)

③Symbols(象徴)

④Organisational structure(組織構造)

⑤Control systems(管理システム)

⑥Power structures(権力構造)


これらの「The cultural web」を考察することが、文化という障壁を見つける鍵となると言われています。

“Fundamentals of Strategy” by G. Johnson, R. Whittington, and K. Scholes. Published by Pearson Education, 2012.

2. カルチャーって何だろう?

そもそも戦略を骨抜きにしてしまう「文化」って、なんなんでしょうか?
組織文化、企業文化なんて言葉もあったりしますよね。

敏腕経営者として有名だったガースナー (Louis V. Gerstner, Jr. 1942 - ) は、「私がIBMに来る前は、組織文化とは企業の一要素だと思っていた。しかし実は企業そのものであることに気が付いた」と語っています。

アメリカで最も有名なサービスデザイナーの一人であるデイブ・グレイは「文化とは企業のOSである」と言っています。いくら新しいアプリ(戦略)を導入してもOSが古いままだとうまく動かないですよね。

一般的に組織文化は「組織構成員が共有する信念、価値観、行動規範の集合体」として定義されますが、最近では顧客までを含めたより大きなサークルで考えることが多くなってきています。

この組織観はフットボールにも親和性があるのではと思います。

「美しく勝利せよ」

クライフの有名な言葉ですよね。でも美しさってなんですかね?


「多くの美的感覚は、基本的に習慣に依っている。何が美しいか、という社会の慣習による一般的な基準から大きく外れていなければ『美しい』と見なされるだけなんだ。」
ヘルムート・グロース

価値観が行動を制約する。まさしくそんな状況がサッカーでも起きていますね。顧客(観客)までを含む大きな枠組み内の価値観が文化を定めるとすると、文化が戦略を食べてしまう状況はどこにでもあるのかもしれません。


3. 組織が文化に勝つには?

では、どうしたら戦略が有効になるのでしょうか?

そもそも戦略への取り組み方には、矛盾する二つのやり方があります。

第一が相手をよく観察、分析し、対抗する策を練り、戦うシナリオを立てようという考え方、外部環境から影響を受けて行動する。いわゆるマーケットインの立場から行動することが戦略であるとする立場があります。昨今話題の戦術君たちはこちらの考え方に近いですかね?

他方、相手は考えず、自分たちの良さを出すことに集中しよう、普段の練習通りの力を出しきろうという内向きの考え方に基づいても、戦略的に振る舞うことは出来ます。例えるなら工場から出る品質を最高にするというプロダクトアウト的な行動も、戦略であるとも言えますね。持っている資源の最適化を図るという戦略です。こちらは俺たちのサッカー派になるでしょうか?

ここでどちらがいい悪いを話す前に考えないといけないことがあります。


戦略を実行するために組織は設計されるのですが、戦略を実行出来るかどうかは文化に強い影響を受ける。組織と戦略の間には「組織(しくみ)は戦略に従う」のか、「戦略は組織(文化)に従う」のかという根深い問題が残されているのです。

つまり、組織と戦略を擦り合わせるだけで足りないということになります。

組織と戦略に加えて、文化も合わせて変化させないといけないのです。

4. アカツキはヴェルディの何を変えたのか?

昨年、アカツキの経営参画が表明され、真っ先に行われたのが、エンブレムの変更でした。

まさしく③Symbols(象徴)の変更です。

しかも、その変更は、これまでの伝統を踏まえた上で余計なものを削ぎ落とすという、これから行われる組織変容を象徴するような内容の変更でした。

また今年に入り、GMの変更、吉武コーチの参画等、矢継早に組織の改革を行っています。
この辺りは、④Organisational structure(組織構造)、⑤Control systems(管理システム)になりますね。

おそらく⑥Power structures(権力構造)への着手は来年以降になるでしょうが、ここまでかなりのスピード感で行われているのは流石としか言えません。

しかしこれですべてが解決したわけではありません。

①Stories and myths(物語・神話)

②Rituals and routines(儀式・習慣)

この大きな課題が残されているからです。
残りの2稿はこの二つの課題について触れたいと思います。

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