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エキセントリック家族

小さい頃と違い、大人になると友人の両親と接する機会はあまりない。話題に上がっても老けたなぁ、介護必要かもなぁ、と大体が暗い内容で、顔も知らないことがままある。
だが1人、とても印象に残っている友人のお父さんがいる。
その人はひとり娘(つまり私の友人)の就職が決まった途端、会社を辞めた。
「俺、会社辞めてきたで」
今まで脱法ハーブ(あやしい)・トンボ標本・空中ヨガ・幽体離脱・宗教法人設立(無論途中で断念)・ネズミ講の独自捜査・セルフビルド・竹馬で全国一周などをやってきた人なので、家族の反応は、
「え? ああ、そうなの。また例のあれが発動したのね」
というくらいなものだったらしい。
一応「なんで?」と聞けば、
「もう養う必要がないだろう。俺はスナックがやりたいんだ」と。
給料から天引きされる積立プランでコツコツ貯金していたというから、破天荒というよりは計画的でマメなのかもしれない。

しかしスナックをやるとなると女っ気がいる。
私は一度その面接に同席させてもらった。面接を受けにきた人からは、なんじゃこいつ、という目で見られたが気にしないようにした。なかなかない貴重な経験である。
その日は5人の方との集団面接だった。やはり、出るわ出るわの話題の宝庫。皆、吉幾三の曲にあるとも子に似た経験をしてらっしゃった。
別れた旦那が釧路の刑務所、息子の方が鑑別所にいるという話はさすがに胃が重くなったが……。
ママの素質があるか否かを見極めるポイントは、顔の美しさではない。顔よりもスタイル。それも少し肉の垂れた、隙のある身体が好まれる。愛嬌はもちろん、相手の話を汲み取り良きタイミングで相槌を打つうまさ、ふとした時横顔に落ちる翳りがたまらないらしい。あとは耳触りのいい声。
その時の面接では、そばかすのある40代前半の割と豊満な方が見事選ばれた。確かに聞いていて気持ちのいい音域で喋られる方で、疲れを吸い取ってくれそうな包容力が見え隠れしていた。

あれからおよそ10年。店は、その界隈では名の知れた集い場になっている。
そして最近友人づてに聞いたのだが、お父さんは雇われママの1人と絶賛不倫中だという。
それを見過ごし私に報告するハートの強さよ。肝の座りようは、親から子へ脈々と受け継がれているようである。
友人のお母さんは、最近ピリピリしているかと思ったらホームセンターに通い出し、工具売り場をうろついているそうだ。
絶対バレてるやん。チェーンソーでも買って、店破壊する気ちゃうん? おーこわ。
事件にならないことを祈るばかりだ。

ちなみに友人は、桐谷美玲に似ていて可愛い。

ハマショーの『MONEY』がすきです。