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セルビア向上委員会 〜EURO2024総括〜


はじめに

まだABEMAでEURO全試合無料放送が発表されていない頃、Twitter(現X)にてWindtoshさんという方からお声がけいただき、EURO2024アーカイブ化計画に参加することになりました。

「アーカイブ化」の方法は、1人1ヶ国担当する代表チームを決め、担当者が最低1試合分析した内容を何らかの形でネットに残すというもの。
また担当国はくじ引きで決められるので、自分で勝手に好きなチーム、好きな試合を選んで分析できるわけではないというところに面白さがあります。
自分の担当国は記事のタイトルから分かる通りセルビアになりましたが、正直イタリアとかフランスの方が好きな選手が多いので筆は乗ります笑しかし普段分析官的や解説の仕事をやっている人なんかは一切前情報なしのチームを分析することもあるでしょうし、あまり知らない・興味がないチームを分析するときに筆者の地力みたいなものが試されると思うので、自己顕示欲の強い自分はまんまと「やってやろうじゃねえか!」という気持ちにさせられました。知ってるチームの分析なんてそのチームをずっと見てるサポーターが一番上手いに決まってますからね。
個人的にセルビアはユベントスのヴラホヴィッチコスティッチ、フィオレンティーナのミレンコヴィッチ、ウディネーゼのサマルジッチ、元ラツィオのセルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチ(長すぎるので以下SMS)とその弟トリノの正GKヴァニャ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチ(以下VMS)らセリエ組や、元フラムのポストプレーヤーミトロヴィッチなど比較的馴染みのある選手が多い方ですし、記事の執筆もやりやすい方だったと思います。もしルーマニアとかジョージアだったらマリン(ラズヴァンの方)とクヴァラツヘリアしか知らなかったからマジでヤバかった…

分析スタイル的な何か

Windtoshさんが運営されているサイト内の分析者名鑑の自分のページにも書いてますが、個人的に分析する際に注目しているポイントはピッチ内外の文脈です。たかが1試合90分の分析でもチーム、選手個人がどういう道のりを歩んできて今に至るのか、その試合で何が良くて何がダメだったのか、そして結果を踏まえてこの先どうなっていくのか、まで追うのが大事だと考えています。ゴーギャン風に言うなら「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」をしっかり理解しよう、ということです。
本稿では現在のセルビアのグループステージ3戦の振り返りだけでなく、カタールW杯という過去からの変化、そしてその先「じゃあセルビアはどうすれば良かったのか?」という未来まで考える内容となっています。

カタールW杯におけるセルビア

リシャルリソンのキャリアハイ

皆さんは2年(厳密には1年半くらい)前のカタールW杯、覚えていますでしょうか?ドイツ・スペイン相手に大金星を挙げた我らが日本代表や優勝・準優勝したアルゼンチン・フランス、アフリカ勢初のベスト4という偉業を成し遂げたモロッコあたりのことは覚えていても、流石にセルビアのことはもう忘れてしまった、何ならそこまでちゃんと見てない方が多いのではないでしょうか。
個人的に日本がいたグループEを除けばグループGは特に印象に残っている組で、南米らしさと安定感を兼ね備えたブラジル、THE ヨーロッパスタイルのスイス、ピクシー率いるセルビア、何が起きるか分からないカメルーンと個性派揃いでした。
当時自分が感じたこの大会におけるセルビアの印象は、点は取れるが同じくらい取られる不安定なチーム。カメルーンから3点、スイスから2点取っているものの両チーム相手にそれぞれ3失点、ブラジル相手にも2失点(そのうち1点がリシャルリソンのアレ↑)しており、守備面に課題があるなと感じました。
またチームのエースストライカー、ヴラホヴィッチが怪我の影響でフル稼働できず。そんな中でもスイス戦ではきっちりゴールを決め、たらればではありますが「万全のコンディションだったらどうだったんだろう」と思わせてくれるような内容でした。
GS最終節カメルーンがブラジルに勝利するという奇跡を起こしたので結果的にグループステージ最下位となったものの、代表監督はピクシーが続投。セルビアサッカー協会としてはカタールで見せた攻撃的なサッカーを継続したいと判断したわけでしょうし、EURO開幕前の段階ではチームとしての成熟度が更に高まった姿をドイツで見られることが期待されました。
直前の親善試合のスウェーデン戦を見てもSMS、ミトロヴィッチ、タディッチら自慢のアタッカー陣が点を決めて3-0の完勝と、かなりチーム状態としては良かったはずです。

それが何故EURO本戦で"ああ"なってしまったのか、1試合1試合分析しながら振り返っていきます。

EURO2024におけるセルビア

今大会のセルビアは、監督が続投しているためカタールW杯からメンバーや戦術はほぼ変わっていません。基本フォーメーションは3-4-3気味の3-4-2-1。空中戦に強いミトロヴィッチや強烈な左足が持ち味のヴラホヴィッチ、技巧派のタディッチやSMSなど、とにかくアタッカーが豊富なスカッドです。
しかし蓋を開けてみるとグループステージ3試合で1分2敗、失点数は2に抑えられた一方で得点はヨヴィッチが決めたコーナーからの1点のみとかなり渋い結果に。まずは開幕戦のイングランド戦から見ていきましょう。

イングランド戦

セルビアvsイングランド スタメン

この試合のセルビアはEURO開幕戦、しかも相手は優勝候補のイングランドということもあり、キックオフ直後からかなり慎重な姿勢を見せます。
イングランドがボールを持ったら基本的に自陣に引いて5-4-1ブロックを形成。ヴラホヴィッチが下がってるだけのアリバイ守備、もはやそれすらせず下がってこないこともあるのでたまに5-3-2っぽくなることもありますが、「リトリートしてカウンター狙い」という意味では陣形の変化は特に関係ありません。

セルビアの守備 リトリート編

試合が動いたのは13分。ベリンガムが右サイドに展開し、ボールを受けたウォーカーが裏に抜け出したサカへスルーパス。サカが上げたクロスはDFに当たって少し軌道が変わったもののベリンガムが頭で押し込んでイングランド先制。
サカには2人がかりでマークするダブルチームで対策していたセルビアですが、失点シーンではSMSがウォーカーに釣られ、サカとコスティッチが1対1になったところを上手く利用されてしまいました。この失点以降、SMSがサカを見れないときはWBとHBのパヴロヴィッチでマークするように守り方を変更していました。
先制されてしまった以上、点を取りに攻めないといけないセルビア。より高い位置でボールを奪いシュートチャンスに繋げるため、ヴラホヴィッチが1列上がった3-4-1-2の形でハイプレスをかけるシーンが増えました。

セルビアの守備 ハイプレス編

このやり方は、それなりに上手くハマっていたと思います。ピックフォードはボール持ってもキックベースのようにただ思い切り前に蹴るだけですし、セルビアDF陣はタッパがあって空中戦に強そうな印象を受けた(というよりイングランドにケイン以外空中戦の的になれる人がいない)のでハイプレスはセルビアからしたらメリットだらけです。裏を取られたら両ワイドのサカ、フォーデン相手に広大なスペースでかけっこになるリスクはありますが、ピックフォードのフィードが雑なおかげでそのようなシーンは皆無でした。
しかしフィニッシュの局面でなかなかチャンスを決めきれないセルビア、粘るイングランド。61分にタディッチ、ヨヴィッチを入れ、当初2シャドーの右だったヴラホヴィッチがいつのまにかCF、SMSもシャドーから1列下がってボランチに回されます。

61分〜のセルビア

セルビアは強気の姿勢でガンガン攻め、惜しいシーンもありましたが結局スコアは動かず。1-0のまま試合終了。
決勝トーナメント進出に向けて、幸先の悪いスタートとなってしまいました。

スロヴェニア戦

スロヴェニア対セルビア

巷のサッカーファン100人に「グループCの中で一番マイナーな国はどこか?」と聞いたら間違いなく8割以上の人がスロヴェニアと答えるでしょう。要するにセルビアとしては絶対に勝たなきゃいけない、悪い言い方をすると格下相手な訳ですが、蓋を開けてみるとスロヴェニアの組織的な守備にかなり苦しめられます。
直近のイングランド戦は時間帯によってはかなりセルビアがボールを持つことができていた(WhoScoredで調べてみたら60〜70分の間はセルビアの保持率が74.1%)ものの、この試合は相手の4-4-2ブロックにタジタジ。DF陣がU字パス(※相手守備ブロックの外側をアルファベットのUに見立て、そのエリアにおけるパス及びパス回しそのもの)をひたすら続けてしまい、なかなか前線3人に良い形でボールが入りません。
この試合も時間帯別のボール保持率を調べてみたところ、キックオフから15分あたりまではセルビアが64.5%と優勢。しかし16分以降から前半終了まではほぼ50:50、なんならスロヴェニアの方が保持率で上回っている時間帯すらありました。

U字パス多めなセルビアのボール保持

イングランド相手にボールが持てて、スロヴェニア相手に苦戦するのは不思議な気もしますが、これには理由があります。タレント揃いのイングランドは良くも悪くもきっちり守り方を定めていないチームで、ボールを奪われたらとりあえずDFラインを下げて、ボールを奪うことよりも失点のリスクを減らすことに重きを置いていました。そのためセルビアがボールを持ったら、ゾーン2、俗に言うミドルサードくらいまでは簡単に運ばせてもらえるわけです。
それに対してスロヴェニアはしっかりFP10人全員が4-4-2のブロックを作り、更にボールの位置によってハイプレス、ミドルプレス、ローブロックを丁寧に使い分けていたためボールがどこにあっても簡単に楔を入れさせない構造が出来上がっていました。これぞまさに4-4-2ゾーンの教科書、といった感じの守備でしたね。
後半からセルビアはチャカチャカしたパス回しを諦め、ミトロヴィッチとヴラホヴィッチめがけてロングボールを蹴ることを選択します。シンプルかつ合理的なこの手法はボールをゴール前に効率良く運べる反面、トランジションがしんどくて前と後ろが分断しやすいというデメリットもあります。

分断しがちなセルビアの守備

実際後半のセルビアは攻→守の切り替え、ネガトラがかなり酷くて、「攻める人」と「守る人」がはっきり分かれていました。スロヴェニアの先制点のシーンを見てもセルビアの選手は5人くらいしかゴール前に戻ってきてないですよね。
前線の3枚の守備タスクもどういう割り振りなのかよく分からず、たまにミトロヴィッチがヴラホヴィッチが本来いるべき右のハーフスペースまで走って守備していました。しかし頑張りは伝わるものの組織的な「プレッシング」ではなく単発の「チェイシング」に終始していた(日本代表のFWがやりがちなやつ)ため、あまり機能していませんでした。点を取る上でFW達に気持ち良くプレーさせるのも大事ですが、最低限の守備の約束事は決めておいた方が結果的にボールを持つ時間もシュートチャンスも増えていきます。別に全力スプリントを笛が鳴るまでやり続けろというわけではなく、どちらか片方のコースを切ってくれるだけでもDF陣からしたら相当ありがたいはずです。
閑話休題。イングランド戦同様、先制されてしまったセルビアは交代カードを切って打開を図ります。82分タディッチに代えてウディネーゼの希望の星、サマルジッチを投入。

82分〜のセルビア

これによってセルビアは息を吹き返します。サマルジッチのドリブル突破やスルーパスによって再三チャンスを作るも、あと一歩のところで決めきれず。このまま終わるか…と思った90+5分。右コーナーから飛んできたインスイングの質の高いボールにヨヴィッチが頭で合わせ、同点。同グループのデンマーク対イングランドも引き分けたため、グループステージを突破するチームは大本命イングランド含め全く分からない状況になりました。

デンマーク戦

デンマーク対セルビア

GS2試合終えた段階でセルビアは1分1敗で勝ち点1、デンマークは2分で勝ち点2という状況。セルビアは決勝トーナメント進出のために勝利しか道が残されていない一方で、デンマークは引き分けでも勝ち点3確保できるため、そこまで無理しなくていい状況です。仮にスロヴェニアがイングランドに勝って3位になったとしても、3位チームの中で得失点差0の勝ち点3は好成績な方なので高確率で上がれます。(GS〜ベスト8まで1勝もせずに勝ち上がったEURO2016のポルトガルを思い出しますね)
この試合の注目ポイントは前節のスロヴェニア戦で無双していたサマルジッチの先発起用でしょう。活躍を見せてくれた選手はすぐ使う、この辺の思い切りの良さはピクシーの良いところですね。また本職ボランチのルキッチを1列上げて左シャドーで起用。更にこれまでの試合で左利きなのに右WBとしてプレーし、やりづらそうにしていたジヴコヴィッチを左WBで起用したのも地味ながら大事な変更点です。
しかしこの試合もスロヴェニア戦同様苦戦します。本来相手2トップに対して自分たちが3バックなら理論上数的優位なので、誰かがドリブルで運べばスムーズに前進できるわけです。しかしそれができるDFがいないのがセルビアの弱点でした。
CBが運べないから仕方なく2ボランチの片方が降りて(所謂サリー)きてボールをもらいますが、そうなると中盤が手薄に。中にいるシャドーの2人になかなか楔が入れられないため、せっかくスタメン起用したサマルジッチも空気と化してしまう状況に。対するデンマークはセルビアが前からプレスをかけてもクリステンセンが運んだりヴェスターゴーアが1列上がってパスコースを作ったりと、ボール保持に自信と余裕がある印象でした。
またデンマークは前回大会同様マンマーク志向のハイプレスでショートカウンターを狙うスタイルなのも、セルビアとの相性最悪でした。セルビアがボールを持つと、デンマークの選手達がかなりタイトにマンマークしてくるので、苦し紛れのロングボールが増えました。

デンマークのハイプレスに苦しむセルビア

兎にも角にも攻めるしかないセルビアは後半頭からグデリ、サマルジッチに代えてタディッチ、ヨヴィッチを投入。前半左のシャドーをやっていたルキッチを1列下げて本職のボランチでプレーさせます。
またデンマークのハイプレスに対して、ボールを持ったときに3バックから4バックに移行することでプレス回避を図りました。昨季サッカー界の話題の中心だったレヴァークーゼンインテルもよくやってたやつですね。これによって多少DFラインにゆとりが生まれ、サイドで起点を作れる機会が増えました。この可変的な4バックはイングランド戦でも何度か見せていて、左WBとの連携プレーで最低限クロスを上げるところまでは持っていけていた印象です。

後半のセルビア

それでもゴールネットを揺らせないセルビアは更に攻撃の枚数を増やし67分にヴラホヴィッチ、87分にSMSを投入。これによってアンカーがSMSの3-1-6という、ウイイレでもなかなかやらないような狂気のファイアーフォーメーションが完成しました笑

ファイアー!

だがしかしbut、これだけ前線の枚数を増やしても一向に点は入りません。シュート本数に関してもデンマーク10本に対しセルビア5本、更にそのうち3本がミトロヴィッチと、お世辞にも効果的な攻撃ができていたとは言えない結果に。ただFWの数を増やせば点が取れるというわけではないのがサッカーの難しいところであり面白いところですね。
結局これでセルビアはカタールW杯に続きグループステージ4位で敗退確定。早々に大会を去ることとなってしまいました。

セルビア向上委員会

現状の課題

さて、ここからが本題です。セルビアの成績不振、得点力の低下の原因はずばり主力選手のパフォーマンスの低下、そしてそれによってチームの主軸がブレてしまったことだと考えます。
そう考えられる理由はいくつかあります。まず第一にタディッチとSMSが、カタールの頃と比べて明らかに走れていなかったからです。タディッチはまだ相手のバックパスで前プレのスイッチ入れてくれたり逆サイドにボールがあるときに1列下がってボランチ脇を埋めにきてくれたりと、35歳(今年36!)にしては頑張っていた方だと思いますが、顕著だったのはSMS。これはピクシー的にも完全に誤算だったと思います。言うてまだ29ですし、カンテやラポルテなどサウジに行っても代表で安定したパフォーマンスを見せている選手もいるので、原因は加齢ではなくコンディションの調整に関わる何かに問題があったのかな〜と推測します(というかせめてそうであってほしい)。
またセルビアのアタッカー陣は空中戦が強みであるにもかかわらず質の高いクロスを上げれるワイドがコスティッチしかいないのも、見ていて非常にもどかしさを感じました。サマルジッチやスロヴェニア戦の同点弾をアシストしたイリッチなど中盤には良いクロスを上がれる選手もいますが、彼らにクロスを上げてもらうためにわざわざサイドフローさせるのも手間がかかりますし、何より中盤が空いてしまうのでもったいないです。ボランチは中に"いる"のも仕事なので。そういう意味でイングランド戦の負傷退場により、残り2試合をコスティッチ抜きで戦わざるを得なくなったのは相当不運だったと思います。クロスはクロスでもポケットからのマイナスかつグラウンダーのクロスは正直誰が上げてもチャンスになりますが、セルビアがよくやるような大外からのふんわりクロスはクロサーの技量がかなり問われますしね。
そして何よりチームのエースとして据えるべきヴラホヴィッチの使い方があやふやで明確に定まっていないのが、宝の持ち腐れのように感じました。右シャドーからスタートし、失点してからは2トップの一角、最終的にCFになったイングランド戦はまさにそれです。
今大会のセルビアはタレントは揃っているものの「軸」となる選手を定めきれず、その影響で戦い方にブレが出てしまっていたと思います。戦力は揃っているにもかかわらず戦術面で問題を抱えていたせいでベスト16で呆気なく散った、どっかの青いユニの国と少し状況が似ていますね。
逆になんかんや準優勝したイングランドは戦術がほぼない状態ではありましたが今年バロンドール級の活躍を見せているベリンガムを軸にし、他の選手が所属クラブでどれだけ王様やっていようと漏れなく脇役に回すことでなんとかチームとしてまとまっていました。アーセナルではゴリゴリ中心選手として活躍しているサカの「水を運ぶ人」っぷりはグーナーとしては嬉しいような少し勿体無いような複雑な気持ちになりました笑

改善策

じゃあこれらの問題を解決するためにセルビアはどうすればいいのか?
まずは守備から考えていきましょう。守備に関しては、ある程度リトリートが成功し3試合2失点に抑えられているので戦術自体はまあいいでしょう。ただスコアや時間帯によっては勿論ハイプレスをかけにいくことも必要になってくるので、90分ガッツリ走るのが厳しいタディッチとSMSは併用しない方がいいと考えます。そしてアリバイ守備常習犯のヴラホヴィッチを1.5〜2列目で使うのはリスクがあるため、負担の少ないCFに回します。彼の守備タスクをコース限定のみにし、代わりにまだ走ってくれそうなミトロヴィッチを右のシャドーに置きたいですね。ミトロヴィッチのシャドー起用は守備だけでなく攻撃面でも結構アリだと思っていて、左からのクロスにファーで合わせられる上、サイドに流れたら空中戦が苦手であろう相手左SBに対してマウントが取れるので困ったときのボールの避難場所になってくれること間違いなし。イメージはユーベで左SHやってた頃のマンジュキッチ
そして攻撃。DF陣が自分で運べずU字パス回してしまうなら、ポジショナルなんちゃらは諦めて徹底的にサイドから攻めましょう。GSの戦いぶりを見ても左HBのパヴロヴィッチがサイドに流れてSBのようにオーバー(アンダー)ラップするシーンは可能性を感じましたし、質の高いクロスを供給できるコスティッチのいる左サイドから重点的に攻めるのは質的・数的優位を作る意味でもアリだと思います。アタランタのようにサイドに3〜4人集めてしまえば誰かしらクロスを上げることはできますし、ペナルティエリアの中を見ればニアにヴラホヴィッチ、ファーにミトロヴィッチが待ち構えてるのは相手からしたら地獄でしかありません笑
ウディネーゼサポとしてはサマルジッチもスタートから使ってあげたいところですが、やっぱりスロヴェニア戦のようにスーパーサブ的な起用の方が活きると思います。
ザッと画像にまとめるとこんな感じでしょうか。

セルビア向上委員会 守備編
セルビア向上委員会 攻撃編

まあ現実のサッカーはゲームではないので、実際やってみたら「こっちの方が上手くいかねえじゃねえか!」ってことも十分ありえますが、あくまでオタクの妄想ですので悪しからず。
次のW杯に向けてピクシーはチームをどう修正していくのか、またはこのまま貫き通すのか…セルビアの今後に注目ですね。

おわりに

今回EUROアーカイブ化計画に参加し担当国のセルビアを分析していく中で、少しずつセルビアに対して愛着のようなものが湧いてきました。あくまで分析する対象でしかないはずなのに「ここがダメだから上手くいかないんだよなー」「こうすればいいのになんでピクシーは動かないの?」という風に、いつの間にか日本代表の試合を見ているときとほぼ同じ感覚で試合を楽しんでいました。
個人的な意見ですが、戦術分析とはあくまで試合を楽しむためにやるもの。そもそもバカでかいピッチの中を22人が90分走り回って1,2点しかスコアが動かないスポーツなんて、ただぼーっと見てるだけで面白いわけがありません。どんなにつまらない塩試合でも「ボールを持ったときのこのチームの狙いは?」「それに対する相手の守備の仕方は?」「その守備にどう対応する?」とあれこれ考えていれば、多少はマシに感じられるものです。
イングランド戦もネット上は「つまらない」「塩試合」といった意見が圧倒的マジョリティでしたが、自分は観戦中脳内が「分析分析分析分析分析執筆執筆執筆執筆執筆」とビッ◯モー◯ー状態になっていたおかげで、この試合を他の人よりかは楽しめた(?)と自負しております。逆に決勝トーナメント上がってからのイングランドは分析せずに見ていたので、すごくつまらなかったです笑
皆さんも普段のサッカー観戦をより楽しむために、応援しているクラブや日本代表以外の試合も勝手に担当チームを決めて分析しながら観戦してみてはいかがでしょうか。


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