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『目と葉なのさ』木談 第18回【連載】【小説のみ】ごめんなさい(^^;

いつも通り登校するためにバスに乗っただけなのに、居眠りしたらいつの間にか見知らぬバスに乗っていた。降りるとそこは声も音も匂いも知らない見知らぬ土地。気づくと制服もカバンも身体も変わっていて、私は誰かになってしまった・・・。
昭和26年にタイムトラベルをした女子高生。彼女はどうしてここにいるの?

※申し訳ありません!!マンガ、次回です!!!次回は大丈夫です!

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 私は大学生だ。
 初めての夏休み、私は実家に帰る前に1人旅をすることにした。行先は由良の高校のある市。私はこの日をこの時をずっと心待ちにしていた。受験勉強にくじけそうな時も由良のことを考えたら頑張ることができた。
私が由良の高校の市に行く理由、それは私が見た夢の答え合わせをするためである。
 私が元の生活に戻って1週間後、私は由良の夢を見た。今度はハッキリと夢だと分かる。画像がぼやけているからだ。色も音もハッキリとしていない。でも誰かは分かる。そんな夢らしい夢。
 はじめに由良の家の居間が見えた。
「もう7時過ぎたよ。駐在さんに連絡しようか」
 祖母がソワソワしている。シゲが小さく体育座りしている。
「夫が帰ってきてからにしましょう。もしかしたらバスが一緒かもしれないから」
 お母さん待って。父と私、いや父と由良はバスが違うよ。方向が違う。落ち着いて。まだ7時過ぎでしょ。あの小さな柱時計が無性に懐かしい。ほんの一日世話になっただけなのに。
 母は自分の間違いに気づかないほど動揺している。なぜなら由良が帰ってきていないからだ。どうやら私が元に戻った日、そう由良のお祝いの日。早く帰るって約束したのに、由良どうしたの?家族と私の話はやっぱり聞こえてないの?もしかして私が生徒手帳を御神木のところに置いてきたから困ったことになった?
 ちゃぶ台に朝使ったランチョンマットが敷かれている。その上に特別な日に使う茶碗とお椀が伏せられて、お箸も行儀よく並べられている。ちゃぶ台の真ん中には花瓶。何の花かは残念ながら分からない。
 19時なら今時の高校生なら驚かないけれど、由良の場合はそうじゃないらしい。塾に行ってないし、バイトもしていないし、部活も入ってない。多分放課後学校で勉強するタイプでもないと思う。
「ただいま」
 父が一人で帰ってきた。皆が父に駆け寄る。父の顔が青ざめる。父がカバンを預けて外へ駆け出した。駐在さんに連絡なら電話…ってそうか電話が家に無いんだった!
 それにしても由良。由良、あんた何してんの?もう19時30分過ぎたよ?お赤飯固まっちゃうよ!煮っころがしには味が染みるかもしれないけど、シジミのお味噌汁楽しみでしょ!しょっぱくなっちゃうかもしれないよ!
 すると場面が変わった。
「また明日ね」
「そいじゃね」
 あ、あれ?どうも時間が戻ったらしい。これは放課後だ。なんとなく感覚でわかる。そうか私が由良になる直前だ。由良は友達の家に寄っていたようだ。
 由良が一人あの神社へ行った。私よりも軽やかな足取りで階段を上る由良。くそう、若さは同じハズで、私の方が足長いのに!今回はネコもカラスもスズメも蝶もトンボもいた。
 由良はサービスのお茶をいただいたあと、神殿に手を合わせる。
「いやぁ気持ちイイ。神社の貸し切り最高!神社は一人で来るに限る」
 そう言いながら由良はもう一杯サービスのお茶をいただく。
 由良はベンチに寝そべる猫をなでる。どうも顔なじみらしい。いいなぁ、私も会いたかった。そして由良は御神木の方へ向かった。
「さて、御神木にも挨拶して帰ろう。テスト、狙い通りに行きました。ありがとうございました。次回もお願いしますってちゃんと伝えないと。ハハハハ気分イイ☆」
 由良!一教科だけイイ点取って残りをぼやかす作戦を神頼みしてたんかい!次回も同じ手を使うなんて・・・お父さんお母さんおばあちゃんシゲ、由良がカンニング並みにズルい事してますよ!!!
 由良が御神木のところへ着いた。誰もいない静かな森。由良が目をつぶって、御神木に右手を、自分の胸に左手を置いて呟く。夢の中の私も思わず目をつぶってしまった。
 すると私はまた由良になっていた。
・・・・・・・・・・・・・・・あれ、後ろに誰かいる?????????
 そう思って目を開けた瞬間、私の視界が暗くなった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
痛い・・・・私殴られて倒れたみたい。ああくそ!!なんで?え?えええええ!イタイイタイ痛い痛い痛い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 え、えええええええ、え!え!え!え!え!信じられない。信じられない。信じられない。私は今、三つ編み2本を束ねて引きずられている。かかとが熱い!熱い!靴を履いてるのにかかとが削れてしまう!私のかかとが無くなってしまう!!!!!!!!!!!あまりにショックで頭の方の痛みを感じない。
「bbんんんんんんんbんんんんんんんんんんんbbbbbbbbん!んんんんんんんんんんんんんんん」
 由良の怒りが伝わる。怒りで全身が総毛だっている。恐怖より混乱より怒りだ!!!!!!!こんな声しか出せないけれど、由良なりの抵抗なのだ!私も加勢したい!チクショウ!!!二人ならなんとかできるのに!!!ああ御神木がどんどん離れていく‥‥私たちはどこへ連れていかれるの????????????私たちはもう三つ編みに全てを託すしかない。

 私たちは突然地面に落とされ、誰かが私たちの身体に乗った。右腰に尖った石が刺さっている。なのに恐怖で私も由良も声が出ない。手も足も動かない。
 人間、極度の恐怖を味わうと叫べる時と何も言えない時がある。抵抗出来るときと出来ないときがある。意思の問題でも意志の問題でもない。勇気の問題でもない。諦めでもないし受容でもないし承諾でもない。ただ身体がそうなってしまうだけ。自分の身体と心が合意しているとは限らない。私達も身体と心が合意していない。でも心はどうにもできない。
 腹の重みと熱がとてつもなくキモチワルイ。腹がへそから吐いてしまいそうだ。私を侵食する気味の悪い得体のしれないモノ。人なんだろうけども私の目にはもう人の形に見えない。
 なぜ「降りろ」とたった3文字の言葉が言えないのか‥・おしゃべりし過ぎの口と歯と舌と喉が働かないのか!!!ああ悔しい!!!!!!!!!!!あ
                   !!!!!!!!!!!
!!!!!!!!           !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!     !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


!!!!!!!!
               !!!!!!!!!!!!!!  !!  !  ! !
    ‼             !                 !


 ああ私達、首を絞められた。犯人が何か言っている。でも何を言っているのか分からない。ただ恨みをぶつけられていることだけは分かる。耳と首がくっついてしまいそう。ああまた私は闇の中に・・・・・・・・・・・・

                   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 突然目の前が明るくなった。私達、死んでなかった。ああ、耳が鳥の声を拾う。犯人はもういないみたい。首を絞められたのに、私達の首に肺に新鮮な空気が入る。一気に頭に血が集まって、頭が蟻の巣になったみたい。
 ああ私、死ぬ直前なんだ。力が抜けて地面と一体化してしまいそう。なのに由良にはまだ力がある。そうか由良、あんた犯人が誰か分かるんだ。怒りが由良に力を与えているんだ。
 由良、誰?ああいやだ、父の顔が浮かんだ。父な訳ないのに。ああ私、混乱している。こんな事生まれて初めてだから。
 あら、いやだ。私ったら自分の鼓動が数えられる。全身の血のめぐりまで感じられる。これが静脈血であれが動脈血って分かる気がする。
 ああいやだ。まばたきしたくない!瞬きが怖い!なんてなんて長いまばたきなの!!!こんな時まで人はまばたきを欠かさないなんて知らなかった。ヤダ、ヤダ、まばたきしたくない!やめて、やめて、いやだって!だって2度と私は目を開けられないかもしれないから!ああ、お願いだからまばたきやめて!目が、目がくっついてしまいそう!目を開けるのにどうしてこんなに力が要るの!!!!!まぶたでベンチプレスを上げてるみたい!!!!!                  え?
 突然足の指を感じる。靴下は履いてるのかとなぜか気になる。足の爪はいつ切ったかななんてどうでもいいことまで思ってしまう。死ぬ直前ならもっともっと大事なことを感じていたいのに、思い出していたいのに!もう私ったらあの歌の歌詞なんてどうでもイイでしょ!タイトルだってうろ覚えなのに!別に好きな歌手じゃないのに!!!!!!!!!!!!

                      え?由良?どうしたの?

~続~お読みいただきありがとうございました(*^-^*)


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