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『しき』第1回【小説とマンガの物語】【今回は小説】

 今回もマンガと小説の物語ですが、マンガは最終回のみです。
おそらく4~5回連載の予定です。
どうぞよろしくお願いいたします^^

しき表紙

 ある町に建設中の教会があります。建設にほんの300年ほどかけた教会です。
 この教会の完成を見届けられないことが悔しくて悔しくてしょうがない人々がどれほどいたことか!中には成仏せずに教会の敷地や近所に棲みつく者や、お盆やお彼岸のたびに見学に来る者もいるのだとか!!!それほど立派で荘厳な教会なのです。
 ここにも教会の完成を楽しみにしている娘がいます。彼女は幸運なことに教会の完成を見届けられるのです。教会はあと4年で完成予定(※延期はもう18度目ですが)。
 娘の部屋からは教会の建築現場が丸見えです。娘は暇さえあれば教会を眺めています。娘は友達と遊ぶより、ゲームをするより、動画を見るより、勉強するより、おやつを食べるより、スマホとにらめっこするより教会を眺めることが好きなのです。
 彼女には教会と同じ位大好きなペットのフクロウがいます。フクロウも教会を眺めるのが大好きなようです。
 ある夜、娘は教会を眺めながら言いました。
「あの教会で式を挙げたいな。どうせなら一番乗りで挙げたいな。オープニングセレモニーはしゃーないけど」
「それ叶えようか?」
へぇえ!!!えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!誰!!!
 彼女の部屋の外に人がいます。(フツー人はそこにはいられないような場所なんだけど)
「誰!!!!!」
「あなたのフクロウちゃんに一目ぼれした人」
 気づいたらフクロウちゃんは部屋の外の人に擦り寄っています。
「なー、フクロウちゃん譲って~。その代わり、君の願いを叶えるからさぁ」
「私の大事なホーホーちゃんを譲るなんて絶対嫌に決まってるでしょ!!!絶対ダメ!!!!!!」
「・・・悪いけどぶっちゃけさ、ホーホーちゃん、君にあんま懐いてなくね?」
 星が図を描くように沢山娘に突き刺さりました。
「見ろよ、ホーホーちゃんメッチャノリノリだし。ホーホーちゃん譲ってくれたらマジ君の願いを叶えるからさぁ」
 今まで一度たりとも見たことが無いホーホーちゃんの恍惚とした顔。さも自分は人懐っこいフクロウだと言わんばかりの態度。塩系フクロウが売りのホーホーちゃんだと思っていたのに!!!単に私のことが気に入らなかったんかい!!!!!!!!!!
 娘は二人のラブラブを見つめながら5分ほど考えました。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ねぇ、マジで私の願いを叶えてくれるの?」
「マジマジマジ。どんなものか言ってごらん」
 娘は自分の夢を語りました。あの教会で一番目に式を挙げたいと。
「あの教会、確かあと4年ぐらいで完成だよ。色々大丈夫?」
「あと4年もあるのか。全然大丈夫」
「工期が延長するのはいつものことなんだけど」
「ああ、それだって全然平気」
「ホーホーちゃん…」
「大丈夫、大丈夫。ホーホーちゃんは願いが叶ったら引き取るから」
 ホーホーちゃんはその取引にノリノリで、前払いでもいい位だと鳴いています。
(う…ん、悪い取引じゃない。ホントに叶えば私もホーホーちゃんも幸せだ。それに願いが叶うまではホーホーちゃんは私の側にいる。少なくとも詐欺では無いし損ではない。あと4年…私は18歳になっている。高校も卒業しているし、色々整うのに4年は丁度イイかも)
「あの教会で、私18歳で、高校卒業したばかりで、式を一番に挙げるんだよ。ホントに大丈夫?」
「ま~一般的に見れば早いけど、人それぞれだし君が良ければいいんじゃないか?」
(…18で結婚なんて考えたことなかったな。若すぎて損したり後悔しないかな…まぁそれもまた人生か。デキ婚は嫌だから、私が気を付けよう)
「あ!工期が早まりそうになったら」
「ちゃんと工期に合わせるから。平気平気。な、ホーホーちゃん☆」
 国民の大多数が『平凡嫌い病』と『平凡こそ幸せ病』を患う国の一国民であるこの娘は、『平凡嫌い病』型の典型的患者なので、こんなチャンスを掴まないわけにはいかない。
「・・・だったらイイよ」
 手を差し出す娘。男と握手。その上にホーホーちゃんが羽を置く。
「では契約成立!その証に、ホーホーちゃんにこれ付けとく」
 ホーホーちゃんに一目ぼれした男はホーホーちゃんの足首に素敵な輝く石を付けました。
「ホーホーちゃんをケガさせないし、飛ぶのも邪魔にならないから安心して。時が来たらこの石が光る。するとホーホーちゃんが飛んでくから、君はそれを追いかけてくれ」
「追いかけるだけでいいの?準備は?持ち物は?」
「なんもない。まぁ…足のケガに注意くらいだな。転ぶなよ」
「分かった。走り慣れたスニーカーは常に用意しておく」
「じゃ4年後に!それまで達者でな。いいか、それまでに死ぬなよ。じゃぁね、愛しのホーホーちゃん」
「アハハハ、死んだらお終いだわ。消費税率程度に信じて待ってる。そいじゃね~」
 ホーホーちゃんは飛び出す勢いで両翼で手を振ります。あと3回振ったら羽が無くなりそうです。彼も投げキッスを返します。
「まったくも~、私が相思相愛の二人を妨げる悪い女みたいじゃない」
 気が付くと夜のとばりが降りています。そろそろ宿題をせねばなりません。4年後の夢の実現のために、現実を生きねばなりません。でも。

~続~お読みいただきありがとうございました(*^-^*)

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