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#28_身体になじませていく

「どうしてこんなことをしたの?」
――「何も考えずにやってしまいました。」

「これからどんなことに気を付けるの?」
――「行動する前にやっていいことかどうかをちゃんと考えてから行動するようにします。」

「それじゃあ、気を付けるのよ。」
――「はい。わかりました。」

子どもたちが何らかの失敗をしてしまったとき、上記のようなやりとりが行われることがあります。教育の現場では日常的に見られる光景かもしれません。

「行動する前にやっていいことかどうかをちゃんと考えてから行動するようにします。」

この言葉を、どう捉えるべきなのでしょうか。

子どもが心の底から導き出した言葉である場合もあります。そう感じ取ったときには、その子どもの言葉を信じて、見守ることになるでしょう。

子どもが「その場をしのぐため」に口にした言葉である場合もあります。そう感じ取ったとき、教師はどのように対応するべきなのでしょうか。

「その場しのぎの言葉」を言うことによって教師からの指導を終了させ、その場から解放された経験があれば、「その場しのぎの言葉」が常套句となってしまっている可能性もあります。「この言葉を言っておけばいいだろう」「この言葉を言ったら、そろそろ指導が終わるころだ」と学習している可能性もあります。

もしそうだった場合、「その場しのぎの言葉」に、子ども自身をよい方向へ向かわせるだけの効力を期待することはできません。

特効薬はありません。

じっくりと、ゆっくりと、身体になじませていくしかないのかなと思っています。

手を変え、品を変え、いろんな言葉を使って、子どもたちに伝え続けていくしかないのかなと思っています。そうやって時間をかけたものだけが、じっくりと、ゆっくりと、子どもたちの身体になじんでいくのかもしれません。

教師も子どもたちも、「てざわり感のある言葉」を手にしてはじめて、自分のことを理解し、自分のことを表現することができるようになっていくのだろうと思います。

このような考え方に「即効性」はありません。はたから見れば「もっと厳しく指導した方がいいのに」と思われることだってあります。しかし、大事なのは、その子どもが自分で気づき、自分で変わろうとして、実際に変わっていくことです。教師は魔法使いでも魔術師でもありません。ただ、子どもたちと共に日々を過ごす、ちょっとだけ人生経験が豊かな、ひとりのおとなです。

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