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東日本大震災から10年。被災地復興とクラウドファンディングの歩みを振り返る

東日本大震災から10年

2021年3月11日、東日本大震災から10年を迎えました。

昨年は、新型コロナウイルスの流行により世界が一変、東日本大震災の追悼式が中止されるなど、被災地の「いま」に向き合う機会が減ってしまった一方で、帰還困難区域を除くすべての避難指示の解除、東日本大震災・原子力災害伝承館の開館、三陸鉄道の二度目の全線復旧など、東日本大震災からの復興を象徴するような出来事も多く見られました。

GoodMorningは、2016年にソーシャルグッド特化型のクラウドファンディングプラットフォームとしてサービスを開始して以来、約2,900件(※)の社会問題に取り組むプロジェクトをサポートしてきました。
※2021年3月時点

その中でも東日本大震災の被災地からは、風評被害を乗り越え、事業を続ける食品加工業者の挑戦や1,000人以上の支援を集めた花火大会など、復旧から復興へ、東北地域の産業が力を取り戻し前へと進んでいくためのプロジェクトが多数立ち上がっています。

被災地支援とクラウドファンディングのはじまり

クラウドファンディングは、インターネットの普及に伴い2000年代の米国で誕生しました。日本では、2011年にCAMPFIREを含む2社がサービスをローンチし、東日本大震災と時を同じくして本格的な展開を開始しました。現在はサービス事業者も大幅に増加、利用用途も多岐に渡り、市場の拡大は続いています。

米国でのクラウドファンディングは、新製品の開発やテストマーケティング等に多く活用され、魅力的な返礼品を求めて購買する形で市場が拡大しました。一方で、2011年当初の日本のクラウドファンディングは、東日本大震災と重なったこともあり、新たな資金調達の手段としてだけでなく、寄付を集める方法として、また寄付をする場としても急速に浸透しました。

東日本大震災では、大きな被害を受けた東北地方の被災者が立ち上がるため、または被災地を支援するために、多くの人々がクラウドファンディングを利用して復旧・復興に取り組んできました。日本国内のクラウドファンディングの広まりは、被災地支援と共に歩んできたと言っても過言ではありません。

被災地支援とクラウドファンディングの歩み

2011年3月11日から10年。現在も様々なプロジェクトが継続的に立ち上がっていますが、復興のフェーズによって取り組みの内容は移り変わってきました。

まずは、災害発生直後の2011年、2012年を象徴するプロジェクトを2つご紹介します。

津波で船や網、住居まで呑み込まれるなど、特に大きな被害を受けた漁業の復旧に取り組んだプロジェクトです。家族で漁を行う個人経営がほとんどだった漁師の方々が手を取り合い、生産組合を設立、復旧に必要な資金を集めました。

災害発生から約11ヶ月が経っても、震災直後と変わらない状態の場所もありました。一部の地域では街灯も戻っていないなど、街の機能が失われていた中、人々が集まって話をし、買い物もできる居場所づくりが進みました。

2021年現在、地震・津波被災地域での生活インフラの復旧はほぼ完了し、防災集団移転や災害公営住宅の建設が進むなど、ハード面での復興は大きく進んできました。一方で、新たに再建された地区で暮らす人々のコミュニティ形成や心身のケアなどのソフト面での支援、これからの地域を支えていく産業振興の継続的な支援は、まだまだ必要とされています。

その中で、復興における新しい一歩を踏み出す2019年、2020年を象徴するプロジェクトをさらに2つご紹介します。

2011年に浸水の被害にあった「浜べの料理宿 宝来館」が、裏山に作った避難路をより丈夫に改良するためのプロジェクトです。2011年の東日本大震災、そして2019年の台風19号の被害を経て、さらに安心・安全な防災に取り組むため、560万円を超える支援を集めました。

東日本大震災の津波被害や原発事故による風評被害などの苦難を乗り越えた、宮城が誇る唯一無二の海の宝「ほや」のプロジェクトです。ホヤの消費拡大を図り、これまでになかった「新しい食べ方」を追求する「ほやギフトセット」などの加工品などを作り販売する内容です。

実は、前述の漁業復興に取り組んだ2011年のプロジェクトには、ほや漁専門の漁師も参加していました。一次産業の復興を乗り越え、加工食品の生産や販売まで、復興のフェーズが前進したことを象徴するプロジェクトでした。

資金調達にとどまらないクラウドファンディングの役割

これまで、復旧や復興などに必要な資金を調達した事例を紹介してきましたが、わたしたちは単に資金調達のツールだけでなく、自分のやりたいことや団体、事業、取り組んでいる社会課題についての認知を獲得し、PRするための大変有効なツールだ、とも考えています。多くの支援者を集めることで、大きく世論を動かすことにつながる場合もあるのです。

知ってもらいたいことをわかりやすくプロジェクトページに掲載し、人を巻き込み、仲間を作っていく効果的な事例として、FISHERMAN JAPANさんによる「日本の海の問題を学べる絵本」のプロジェクトがあります。

水揚げ量が大きく変化し、これまでのように魚を食べることが困難になりうる日本の海の問題について、子どもたちが学べる絵本をつくる内容です。絵本は子どもも理解しやすい表現が使われていますが、プロジェクトページ内では実際の水揚量をグラフを使って説明するなど、日本の海の問題を丁寧に伝えています。

また、返礼品では「絵本1冊お届け+あしながおじさん」というプランを用意。これは支援者自身が一冊の本を受け取れるだけではなく、もう一冊を全国の子どもたちに届け、広く課題について知ってもらうための仕掛けです。

息の長い支援の大切さ

災害発生から10年たった今も、フェーズを変えながら東日本大震災に関連するプロジェクトの掲載は続いており、一つ一つの課題の解決には多くの時間と協力を要します。特に災害支援においては、発生時、復旧期、復興期などフェーズごとに長く寄り添っていく必要があると実感しています。

東日本大震災以降も毎年のように日本各地で大規模な自然災害が発生しています。発災直後はまず生きるための緊急支援が必要となりますが、災害によって失われた人々の暮らしを立て直し、次の一歩を踏み出すためには息の長い支援が必要です。決して震災の記憶を風化させることがないよう、クラウドファンディングを通して、社会に訴え、問いかけ続けていきたいと思っています。

私たちは、誰かが「痛み」を抱えているとき、それを「個人」の問題として矮小化せず、「社会」の問題として社会全体での解決を目指すこと。一人ひとりの努力だけに頼らず、公助、共助の仕組みを豊かにしていくことを大切にしていきたいと考えています。

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東日本大震災の被害状況や現在の課題、そしてGoodMorningで掲載した東北復興にまつわるプロジェクトをまとめたページ「GoodMorning Issues」を更新しています。是非こちらもご覧ください。


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