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北見市移住日記003「優秀な営業マンのY君」


話は急に移住を決意した時に遡る。

とにもかくにも、北見市に家を探さなくちゃ話が始まらないんだが、どうしたものかと考えていたんだ。


【北見の不動産会社を紹介される】

グラントリノの他に、三鷹にもう一店よく行くカフェがあるんだ。女性の方がお一人でやっているカウンター席だけのかわいいお店。買い物帰り等に妻と一緒にビールを飲みに立ち寄る店。

「今度北見市に引越すんだ」なんて話したら、その方のご主人のご実家が北見市だったことが判明。わお、一気に親近感が増幅。

事情でご実家の住宅を売却される時に世話してくれた不動産会社を紹介してくださるって言うんだ。

正にGood Timing!こんなに幸先がよい展開でよいのだろうか。

連絡先を教えてもらって、さっそく連絡を取ることに。

カフェオーナーからこんなアドバイスがあったんだ。

「連絡の反応はかなりゆっくりなので、覚悟が必要です」と。


【恐怖のリレー、Hさん編】

「恐怖のリレー」とは、なかなかな、コーナータイトルでしょ?

三鷹のカフェオーナーから教わった不動産会社「S(以後便宜上S不動産と呼ぶ)」のHさんに電話した。

H「ご連絡ありがたいんですが、自分は売買の部署のものでして、ご希望をお聞きして、賃貸の部署の者に伝えます」

ここでね、「直接話すから担当から電話くれるように伝えて」とボクが言いさえすれば普通に話は進んだんだと思うんだよね。

「売買」の担当のHさんに、希望の「賃貸」の条件を伝えたわけだ。

・住居と事務所が必要
・空港バス乗り場の近く
(東京と二拠点生活)
・事務所は、オンラインの配信スタジオを作る
・家賃はいくらでもよい
・マンションがよいが、条件に合えば戸建でもよい

Hさん「承知しました。お聞きした条件を伝えた上で、賃貸担当から連絡させます」


【恐怖のリレー、ヒアリング担当Kさん編】

数日後S不動産のKさんという女性から電話があった。

K「北見でお部屋をお探しとのことですので、色々お聞かせください」

今「Hさんに条件はお話してあって、賃貸の営業の方から連絡くれるってことだったけど、あなたがボクを担当してくれる営業の方なの?」

K「いえ、私は営業ではなくご希望をお尋ねする担当の者です」

今「Hさんに全部伝えてあるんだけど、聞いてないの?」

K「概略は伺っておりますが、詳しくお聞きできれば・・・戸建をお探しなんですね?」

このあたりから、少しずつ雲行きが怪しくなり始める。

今「いや、できればマンション。いい条件のものがあれば戸建でもとは言ったけどね」

K「かしこまりました。スタジオを作られたいとのことですが、大家さんから許可が出る物件は少なくなりますが、どの程度の音が・・・?」

今「いや、スタジオって言っても、Zoom等のオンライン配信なんで大丈夫だと思うよ。ネット回線が重要なんだよね」

K「そうなんですか。楽器等はだいぶお持ちになりますか?」


いいね、いいね。これは微笑ましい展開。
戸建の次はスタジオか~、どうやらボクをミュージシャンか何かと間違えているらしい。

この後、いくつかのやり取りをしてヒアリング担当のKさんは任務を終えて電話終了。


【恐怖のリレー、営業マンYさん編】

翌日、今度は営業のYさんから電話が入る。

Y「S不動産のYです。物件をお探しとのことで。私が担当になりましたので電話しました。で、どんな条件でお探しですか?」

来ましたねえ、北の大地らしい、大らかで大胆不敵なH→ K→ Yの美しい連携プレーだ。

今「いやいや、Y君さ、ヒアリング担当とかいうKさんという女性の方から電話があって全部詳しく話したんだよ。同じことを最初から話すのも何だからさ、Kさんから聞いて、それでもう一回電話してくれる?」

この後、Y君の口からさり気なさ過ぎて、一瞬理解が追いつかないひと言が・・・。

Y「あっいえ、私の方は最初から聞かせていただくのはかまいませんよ」

思わずサンドウィッチマンのネタが頭に浮かぶ。(ちょっと何言ってるかワカンナイ)

ここで「テメエ何言ってんだよ。お前がよくてもコッチが迷惑だって言ってんだよ、このタコ」なんて下品なことは、頭に浮かんでも声に出して言うボクではない。極めて冷静沈着に、声を押さえて、感情を押し殺して・・・。

今「お互い時間が無駄になるからさ。Kさんから聞いて電話してよ。じゃあ頼むよ」

と電話を切る。

電話を切ってから近くのゴミ箱を思い切り蹴飛ばすなんてことは、頭に浮かんでも、実際にやるボクではない。

さて、この後はどんな攻撃でくるのか、楽しみでしょうがない自分がいる。

何と、その日のうちにY君からメールで6つの物件についての情報が送られてきた。やるじゃん、行動は早いが電話の会話が独特なのがY君の特徴と見たぞ。


【Y君との物件紋り込み編】

翌週たまたま2日間空けられそうな日があったんで、届いた物件のうち3つほどに絞って見て、その場で決めて来ることにした。

何しろ遠方なんでちょくちょく見に行くわけにもいかんからね。

で、Y君に電話するわけなんだけど、今度はどんな楽しいことが待ってるかと、ドキドキするよね。

今「情報ありがとう。中でもメゾネットのこれが気に入った。でも、見ないで決めるわけにはいかんし、比べて考えたいから、これとB物件とC物件を来週見に行くから」

Y「来週ですか。それまでに他の方に決まるかもしれませんが、それでもよろしいですか」

今「それは、どっちかって言うとよろしくはないね。押さえておいてもらうことできないの?」

Y「それはできないんですよ。賃貸で手付とかそういうのないんですよ。気に入って下さったんであれば申し込んでもらうしかないですね」

今「・・・」

Y「この頃は見ないで決める人も多いですよ」

今「ああ、そうなの?じゃあ、ってそうはいかんのよ。土地勘も無いから周りの雰囲気も見たいしね」

Y「オンライン内覧というのもありますよ。私が現地でカメラを操作してそれを東京から見てもらいます」

今「それも勘弁して。カメラ越しは勘弁して。とにかく実際に見て決めたいから。何か方法無い?」

Y「無いですね」

今「Y君さ、そんな速攻で無いって言わないでさ。東京から北見に移住しようってんで、離れた所からでしょっちゅう見に行けなくて困ってんだからさ」

今「この物件借り手がつかなくて残ってるのは、賃料高いからじゃないの?Y君、これ相場より高いよね?」

Y「そうなんですよ。全面的にリフォームしたんですね。ちょっと高目ですね」

今『じゃあ後一週間の間には決まんないよ。大丈夫だよね?」

Y「何とも言えませんね」

今『ところでこの部屋いつから空いてんの?」

Y『(モゴモゴ)こ、今年に入ってからですかね・・・。何人かご案内したんですが・・・」

今「・・・」

あららら~。どうやら、雰囲気はよいんだが、不人気物件らしいぞ。高い家賃のせいばかりではないのでは?という疑問が頭をよぎり・・・。

今「何だよ。それじゃあ、見に行く一週間で決まるわけないよ。大丈夫だよね?」

Y「大丈夫って言って、万が一借手がついたら、“大丈夫だって言ったじゃないか”って言いますよね?」

卑屈になってる子供のような、何たるコミュニケーション。こりゃ、ある意味スゴイや。

今「うわっ、何、その言い方。何か感じ悪いな。Y君、家賃の他にも決まらない理由が何かあるんじゃないの? あるならこの際教えておいてよ」

Y「大家さんが4階に住んでまして、4階は今度の部屋と大家さんだけなんですよ」

なるほど。フロアに大家さんと自分のところだけってのは、そりゃ敬遠されるよなあ。息苦しいもんなあ。

今「OK、分かった。絶対、来週見に行くまで借手は現れないと確信持ったから、案内よろしくね」

Y「ところで今野さん、大家さんの娘さんがピアノを弾かれるんで、多少音がしますが、今野さんの方も、スタジオってことですから、気にしませんよね?」

うわあ、どこまでも見事な変則コミュニケーション攻撃を繰り出して来るなあ~。それを最後に言うかなあ。ひょっとしてそれが、借り手がつかない一番の理由なんじゃないの~。

それにしても「今野さんもスタジオですから気にしませんよね?Jってスゴイなあ。発想がスゴイよ。だからオレはミュージシャンじゃないんだってば。


【リアルに会ったY君ってどんな人?】

長くなってるけど、大事なところなんでもう少しご辛抱のほど。

さて、一週間後、ボクは北見市にいた。

女満別空港から空港バスで北見駅横のバスターミナルで降りて、駅前で迎えに来ている営業マンのY君と会う手筈だ。


何しろあの電話のコミュニケーションだからね。
リアルで会ったらいったいどんな青年なんだろうか。
ワクワクするような、怖いもの見たさ的な、ちょっぴり恐怖感もあるような。

社名がドンとボディにペイントされた営業車で登場したY君はね、なんか「できる営業マン」風の爽やかな第一印象。

「東京の今野さんですよね」と目印も決めていなかったのに発見してくれ、テキパキとボクと荷物を車に乗せてくれて、B候補→C候補→そして意中の物件、メゾネットの部屋を実に効率よく案内していくではないか。

物件の説明も実にポイントを押さえた見事なもので、ボクの入居後の生活イメージをよく理解してくれていることが分かる。

それとね、ボクのちょっと寒いギャグも軽快に受け止めてくれて、会話のテンポが合うんだよね?

いやあ、電話の彼とは見事に別人。


【優秀な営業マンY君】

時間を現在(入居後4週間)に持ってくるね。

家って生活を始めてみると、何かと不具合いが見えてくるよね。そうした連絡もY君にするんだけど、対応が実に早い!

三鷹のカフェオーナーから「連絡の反応はかなりゆっくりなので、覚悟が必要です」と聞いてたんだけどまったくそんなことない。むしろ迅速対応だな。

Y君は実に優秀な営業マンだと思う。電話対応がなあ。今ひとつなあ。実にもったいない。

近々呑みに行きたいんだけど。でもなあ、かわいい盛りのお子さんの話を嬉しそうにしてたからなあ。遠慮しちゃうなあ。

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