あなたがいた場所 【小説】
僕はいつも、あなたがいた場所を思い出す。
あの冬、吹雪が吹き荒れる中、僕たちは初めて会った。あなたは駅前のカフェで、一人で本を読んでいた。その瞬間から、僕はあなたに惹かれていた。
数日後、偶然にもまたそのカフェであなたと出会った。お互いにビックリして笑い合った。その後、毎日のようにカフェで会うようになった。
あなたは優しくて、聡明で、どんな話題でも話せる。僕はあなたに近づくことで、少しずつ自分自身を見つめ直すことができた。あなたがいることで、僕は人生に前向きになれた。
ある日、あなたが家に招待してくれた。部屋に入ると、そこにはたくさんの本が積まれていた。あなたは本が大好きだと話し、自分の好きな本を教えてくれた。
その中でも、僕が一番印象に残ったのは「星の王子さま」という本だった。あなたが語るその世界観に、僕は夢中になってしまった。その日から、僕はあなたに教えてもらった本を読み漁り、自分自身を豊かにすることができた。
そして、春がやってきた。あなたと一緒に桜の下を散歩するのが、僕たちの日課になった。あなたは桜の花を見ると、いつも笑顔になる。僕は、あなたが笑っている姿を見ると、幸せを感じた。
しかし、あの日がやってきた。あなたは海外留学することになった。僕は、あなたの留学先に会いに行くことができなかった。それでも、毎日のようにメッセージを送り合って、あなたが元気であることを確認していた。
数ヶ月後、あなたが帰国するという日がやってきた。僕は駅前のカフェで待っていた。あなたが現れると、僕は思わず走り寄って抱きしめた。
「元気だった?」
「うん、元気だったよ。」
あなたの笑顔は、変わらずに残っていた。僕は、あなたが帰ってきたことで、心から安堵した。
その後も、僕たちはよく会っていた。あなたが留学先で経験したことを話してくれたり、一緒に映画を見たり、お互いの好きな本を語り合ったりした。
そして、ある日、あなたが言った。
「私、もう一度留学したいと思ってるんだ。」
僕は驚いた。あなたと再び離れることを想像するだけで、胸が苦しくなった。
「でも、それまでの間、一緒にいようよ。」
あなたが言うと、僕は安心した。あなたが再び留学することは、避けられないことかもしれない。でも、その前に、あなたと一緒に過ごせる時間があるなら、僕はそれだけで十分だと思った。
あなたと過ごす時間は、いつも特別なものだった。あなたと一緒にいると、時間が過ぎるのが早く感じられた。あなたが笑っている姿を見ると、自分自身も笑顔になっていた。
しかし、あなたが再び留学する日がやってきた。空港で見送るとき、僕はあなたに抱きしめられた。
「またね。」
あなたが言うと、僕は何も言えなかった。ただ、あなたの手を握りしめた。
その後の数年間、僕たちはそれぞれの道を歩んでいた。あなたは留学先で学び、経験を積んでいた。僕は、自分自身のキャリアを築きながら、あなたを思い出す日々を過ごしていた。
ある日、あなたから連絡が来た。あなたが帰国するということだった。
空港で再会したとき、あなたはとても素敵な女性になっていた。あの冬に出会った頃とは、全く違う印象だった。でも、変わらないのは、あなたの優しさと聡明さだった。
その日から、僕たちは再び一緒に過ごすことができた。あなたが留学で学んだことを教えてくれたり、一緒に旅行に行ったり、美味しい食事をしたりした。
そして、ある日、あなたが言った。
「私、このままここにいるつもり。」
僕は驚いた。あなたが留学を終えて、再び日本に戻ってきて、定住するつもりだとは思っていなかったからだ。
「でも、私には一つお願いがあるんだ。」
あなたが続けると、僕は興味津々で聞いた。
「もう一度、あの冬に一緒に見たイルミネーションを見たいんだ。」
あの冬に一緒に見たイルミネーション。それは、あなたと僕が出会った日だった。僕は、その時のことを鮮明に覚えていた。
「当然だよ。」
僕は嬉しそうに答えた。その日から、僕たちは再びあの場所に足を運び、イルミネーションを見に行くことになった。
あの日、あなたと一緒に歩いていると、不思議な感覚に襲われた。あの冬に出会った頃の気持ちが、蘇ってきたのだ。
「あなた、こんなに変わってしまったのに、僕は変わらないままなんだ。」
僕が言うと、あなたは微笑みながら答えた。
「違うよ。あなたもきっと、たくさん変わったんじゃないかな。でも、それでも僕たちは、あの冬に出会った頃の気持ちを忘れてなかったんだよね。」
あなたの言葉に、僕は心の底から同意した。僕たちは、たしかに変わっていた。でも、それでも、僕たちの絆は変わらずに続いていた。
その後、僕たちは一緒に過ごす日々を過ごしていた。あなたは、職場での成功や、恋愛関係の悩みなどを相談してくれた。僕は、あなたの話を聞き、必ずアドバイスをした。
そして、ある日、あなたが言った。
「もう一度留学したいと思ってる。でも、今度は一緒に行ってほしい。」
あなたがそう言った瞬間、僕は胸の奥底で強い衝動を感じた。あなたと再び留学する。それは、僕が望んでいたことだった。
「もちろん、一緒に行こう。」
僕は嬉しそうに答えた。あなたと一緒に留学する。それは、僕たちの冬の出会いが始まりとなった場所に戻って、さらに多くの思い出を作ることができるかもしれなかった。
留学の準備を進める中で、あなたは今度は自分でビジネスを始めたいと言い出した。それも、僕たちが留学中に。
「ビジネスを始めるのは大変だよ。でも、僕たちならできる。何か手伝えることがあったら言って。」
僕が言うと、あなたは満面の笑みで返した。
「ありがとう。本当に、心強いよ。」
僕たちは、一緒にビジネスを始める準備を進めた。あなたが考えたアイデアに、僕がアドバイスを加える。その逆もまたしかりだった。
そして、ある日、あなたは急なトラブルに見舞われた。ビジネスを始めるために、大きな資金が必要だったのだ。
「どうしよう。こんなにお金がないと、ビジネスは始められない。」
あなたが悩んでいると、僕は突然、思いついた。
「借金しよう。僕たちが留学している期間中、アルバイトをして返済すればいい。」
あなたは最初、驚いた表情を見せたが、すぐに理解したようだった。
「そうだね。やってみよう。」
僕たちは、必要な資金を手に入れるために、銀行から借金をした。そして、留学中のアルバイトで返済していくことになった。
ビジネスは、想像以上に順調に進んでいった。あなたのアイデアが成功を収め、僕たちは一気に資金を回収することができた。
「すごいね。こんなに成功するとは思わなかったよ。」
僕が言うと、あなたはにっこりと笑顔を見せた。
「私たちなら、何でもできるんじゃないかって、思ってたんだ。」
あなたの言葉に、僕は胸が熱くなった。僕たちは、本当に何でもできるんだ。そして、もう一度、あの冬に出会った頃の気持ちを思い出した。
留学が終わる頃、僕たちは一緒に帰国することを決めた。そして、帰国後も、ビジネスを続けることにした。
「もう一度、あの冬に出会った頃のように、何でもできると信じて。」
あなたが言うと、僕は頷いた。
「そうだね。何でもできる。」
そして、僕たちは帰国してからも、ビジネスを続けた。だが、それ以上に大切なことは、僕たちの絆が深まったことだった。
お互いに、助け合い、支え合いながら、困難に立ち向かってきた。そして、その経験が、僕たちをより強く結びつけた。
「ありがとう。おかげで、こんなに成長できたよ。」
あなたが言うと、僕は微笑んだ。
「こちらこそ、ありがとう。おかげで、僕も成長できたよ。」
その言葉を交わしながら、僕たちは互いの手を握った。そして、あの冬に出会った頃のように、何でもできると信じて、明るい未来を見つめた。
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