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Q&A: 第1回 表現をめぐる知的財産権について考える

知財学習プログラムオンライン学習会が2021年3月に4回にわたって行われました(詳細はこちら)。

本記事では、3月2日に行われた第1回オンライン学習会当日にいただいたご質問で時間の都合上十分にお答えきれなかったものや、事前にいただいたご質問のなかで取り上げてお答えすることができなかったもののなかから、3つの質問をピックアップし、それぞれ回答いたします。

第1回 表現をめぐる知的財産権について考える~基礎編~
森下静香(Good Job!センター香芝・センター長)

Q1:知的財産権について直接相談できる場所はありますか?

厚生労働省が2014年より「障害者芸術文化活動普及支援事業」を実施しております。

35都府県に支援センターを、6つのブロックに広域センターを設置しています。以下がその一覧になります。

お住まいの都府県の支援センターにまずは相談してみてください。

ただし、例えば、茨城県など、県単位の支援センターが未設置の場合や、広域センターも未設置の場合があります。その場合は、全国を束ねる連携事務局(美術分野は社会福祉法人グロー/舞台芸術分野は社会福祉法人 大阪障害者自立支援協会)にお問い合わせください。

Q2:自事業所で知財についての契約を進めたいと考えております。契約に関しては、給料と同じように知財の取り扱いについても施設ごとで内容が変わるものなのでしょうか?

はい。それぞれの事業所ごとに考え方があり、契約に反映させていったらいいと思います。例えば、たんぽぽの家アートセンターHANA(社会福祉法人わたぼうしの会)では、作品の著作権だけではなく所有権も障害のあるアーティストが持つというふうに考えています。

他のケースも考えられます。たとえば、制作スペースや材料を施設が用意し、施設の活動の一環として制作されているため、事業所で作られた作品の所有権は事業所にあると考えるところもあります。または、施設とアーティストが協議し、どちらに所有権があるかを決めている場合もあります。事業所によっては、アーティストから事業所に著作権を譲渡する契約になっているところもあります。

対価の配分についても、事業所ごとに独自の考え方があるでしょう。

各種、契約書のひな型については、以下の冊子が参考になります。

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アイサ 2012年発行:掲載されている契約書のひな型 
・作品展示の承諾書(例)
・作品の二次利用(著作物利用)承諾書(例)
・造形活動における作品の取扱規程(例)
・造形活動における作品の権利にかかる合意書(例)

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ライツ 2017年発行:以下の契約書のひな型があります。
・著作物利用許諾契約書
・作品出展依頼書(作家宛)
・作品出展依頼書(作家ご所属団体宛)
・作品出展承諾書

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ひゅーるぽん 2017年発行:以下の契約書のひな型があります。
・作品の所有・保管・廃棄に関する契約書
・著作権利用許諾契約書
・商品化許諾契約書

なお以上の冊子は厚生労働省「障害者芸術文化活動普及支援事業」の各センターの成果報告書として発行されたものです。残部があるかどうかについては、各センターに問いあわせてみてください。

Q3:パッケージデザインに歴史的建造物や国宝等のイラストを使用した場合の、知財上クリアしなければならない点

歴史的建造物や国宝等の「イメージ」使用は、知財法的に特に権限がなくても、使用の差し控えを求めてくるケースがあります(有名な寺社仏閣のケースなど)。

ケースバイケースだと思いますので、ご心配な場合は、デザインに使用したいと思っている歴史的建造物や国宝等を管轄している組織に直接問い合わせて確認してみるといいかもしれません。

あるいは、地域の商工会議所の観光課などに事前に相談してみるという手もあるかと思います。もしかすると、その地域の観光名所にもなっている歴史的建造物や国宝に関して、自由に使用できる写真やイラスト等の存在を教えてくれることがあるかもしれません。


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