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会社に行きたくなかった時のこと

去年の今頃、勤めていた事務所をやめる決心をした。
なぜだか通うことがつらくなり始めた。

好きなことをやらせてもらっているし、環境もいいし、自分らしく働けているはずなのに、どうしても心が重くて、そのうちヤダヤダ期の子みたいに、いろんなことが嫌になって、事務所へ向かうことも嫌になって、途中中抜けする時間が増えたり、午前中別のことをしたりして、気分を変えていた。

一人になりたい。もっと自由になりたい。

そんな思いに駆られていたような気がする。

勤めていたところは、こんな自由なところはないというくらいとてもいい会社で、特別なしばりもないし、意見があれば前向きに検討もしてくれるし、みんな優しくて話もできるし。

なのに私はどうしてもっと自由になりたいなんて思うのか、自分でもよくわからなかった。あとは一人でどうやっていく自身がどうしても持てなくて。辞めた後自分がどうなるのかというイメージが湧かなくて、ただそれだけでずっと決心ができなかった。

しかしそれも限界になる。

心の重りが限界に達するかというタイミングで、調べ物のためにたまたま開いた雑誌の一文に目がいった。長い長いインタビュー記事の中のどうしてそこに目が行ったのか自分でもよくわからない。

書家の紫舟さんの記事だった。彼女がOLとして働いていたところを辞める決心をする一文だった。

正確な文章までは覚えていないけど、

「会社という温かな椅子に座り続けることの不安」(プレジデントウーマンより)

というような内容だったと思う。彼女がこのままでいいのだろうかと自問自答して、ここにいたら安定していることもわかっている、でも…、という思いが語られていて、そのあとすぐにOLを辞めて書家を目指すための行動に出たという流れだった。

ページをめくった瞬間に、この部分に自分の目がバシッとフォーカスされて、脳天に稲妻が走った気がした。そしてその後には、

「あ。私、辞めよう。」

となった。

何年も散々悩んで辞めるきっかけなんてこんなものなのだろうかと、自分でも呆気に取られた。

そして辞めると決めた途端に、私の背中に乗っかっていたいろんな重りがふわーと外れて、私の体は急に軽くなり、そこから動きがバシバシと変わっていった。

辞めるための段取りをどうするか、一人で始めるに当たってどんな準備が必要か、脳がフル回転を始めた。

もう何も迷っていなかった。とにかく走る。
さっきまで徐行運転並みのパワーしかなかった車が、急にスポーツカーでアクセル全開みたいな。


今も昨年の私のように、「辞めたい、自分のやりたいことをやりたい。けど辞めたあとどうするんだ」と言って悩んでる人がたくさんいるかもしれない。私も無責任なことは言えない。でも、なんだかわからないその重りはやっぱり「行動せよ」って信号なんじゃないだろうか。

私は辞めると決めてから今の今まで、本当に幸せなことばかりで。一人になった自由が嬉しすぎて、そのあと仕事がうまくいくかどうかすらもどうでも良くなり「人生桜花してる! サイコーだ。」なんて思ってるうちに、仕事も少しずつ始まっていって結局は自由な時間も仕事もどちらも得ることができた。仲間がいないと仕事上作業が厳しいという悩みがあったが、それもあっさりと解消された。

不思議でしょうがないけど、何かに運ばれたように今ここにいる。

あの時記事を見てスルーしてしまう自分だったら今この状況はない。誰にでも何か変わるきっかけやお知らせが届いているのかもしれない。

おわり

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