見出し画像

新しいスタンダードのあり方〜2021年度グッドデザイン賞 審査ユニット1(身につけるもの)審査の視点レポート

グッドデザイン賞では、毎年その年の審査について各審査ユニットごとに担当審査委員からお話する「審査の視点レポート」を公開しています。グッドデザイン賞では今年、カテゴリーごとに18の審査ユニットに分かれて審査を行いました。審査の視点レポートでは、そのカテゴリーにおける受賞デザインの背景やストーリーを読み解きながら、各ユニットの「評価のポイント」や「今年の潮流」について担当審査委員にお話しいただきます。
本記事では、審査ユニット1(身につけるもの)の審査の視点のダイジェスト版をレポートします。
ダイジェストではない全部入りは、YouTubeで映像を公開していますので、よろしければこちらもどうぞご覧ください。

2021年度グッドデザイン賞審査の視点[Unit01 - 身につけるもの]
担当審査委員(敬称略):
本田 敬(ユニット1リーダー|プロダクトデザイナー)
安東 陽子(テキスタイルデザイナー/コーディネーター)
岡本 健(グラフィックデザイナー)
服部 滋樹(デザイナー/クリエイティブディレクター)

マスク製品の応募が激増

本田 今年もコロナ禍の渦中にある審査でしたが、このユニットの応募対象にもその影響が色濃く反映されていたと思います。
とても大変な状況の中で、メーカーさんや作り手側が「使い手が何を望んでいるのか」「何をやらなければならないのか」ということを深く掘り下げて、真摯に開発されたものを審査をするという機会になりました。いろいろな発見もあったように感じています。
今年度、応募が激増したマスク製品がそれを象徴していました。後ほど具体的な例を挙げますが、最終的には10点近くマスク関連製品が受賞しました。
いわゆる高性能マスクばかりではなくて、スポーツの時に使うものであったり、日常のストレスが少ない形で使い続けられるものだったり、何かしら豊かな価値観を届けようとしていることが評価されたように思います。

使い捨て長袖プラスチックガウン [easy脱着ガウン]

使い捨て長袖プラスチックガウン [easy脱着ガウン](株式会社ミヤゲン)21G010040

本田 本ユニットからベスト100に選出されて、その後金賞を受賞した「使い捨て長袖プラスチックガウン [easy脱着ガウン]」は、今年のグッドデザイン賞のテーマである「希求と交動」にも呼応するように、即座に商品開発に取り組まれました。
このメーカーさんは、ポリ袋メーカーなのですが、今回のコロナ禍で、医療現場が混乱している状況を見て、30名ほどの小さな会社で何ができるのかと考え、即座に動いて開発した商品を、医療現場の人に使ってもらい、フィードバックを得て製品化したそうです。製品自体も素晴らしかったのですが、企業の姿勢としても素晴らしいという評価を受けました。

ネッククーラー [富士通ゼネラル コモドギア i2]

ネッククーラー [富士通ゼネラル コモドギア i2]( 株式会社富士通ゼネラル)21G010047

本田 エッセンシャルワーカー向け製品では「ネッククーラー [富士通ゼネラル コモドギア i2]」というものもありました。
この製品はスポーツ・シーンなどでも使用可能ですが、主に炎天下でも労働現場に向かわなければいけないようなエッセンシャルワーカーに向けて考えられたもので、同じような点で高い評価を受けました。
このように本ユニットの中でも、日常使うものから、社会課題に対してなにか発信をしていくような大儀を掲げたものもあったように感じました。

交通安全アドバイスロボ Ropot

交通安全アドバイスロボ Ropot(本田技研工業株式会社)21G010038

本田 ほかにも、このユニットからベスト100に選出されたものとして、ホンダの「交通安全アドバイスロボ Ropot」がありました。
主に小学校に入学したての「魔の7歳」と言われる子供たちの交通事故を減らそうという取り組みですが、これもモビリティ・メーカー自身がこういう製品を出すという姿勢も、社会的意義があるということで高い評価を得ました。

ユーザーが置き去りになっていないか?

本田 本ユニットの審査では、腕時計やバッグといった成熟製品が多く、どう新規性を見ていくかという難しさもありました。
やはり作り手側も同様にそこは苦労されていると思います。
そのような状況であっても、世の中にたくさんある社会課題を、デザインの力を発揮することで乗り越えるようなものが、成熟商品の分野でも、もっと増えていくことを期待したい、ということを審査委員で話していました。
僕はいわゆる工業製品のプロダクトデザインを専門に長くやってきたので、その視点でもお話しようと思います。今回の応募対象には、本当に極限まで技術を深めたものも多かったんですが、業界の中で周囲のライバル・メーカーを気にしていたり、その業界の中での目新しさみたいなものを気にして、ユーザーが置き去りになっている点が一部に見られたことに、危惧も感じました。

フェイスシールド [ヒラックス・エアシールド]

フェイスシールド [ヒラックス・エアシールド](平岡工業株式会社+HIRAX)21G010018

本田 いい意味で気になった具体的なものでは、「フェイスシールド [ヒラックス・エアシールド]」があります。先ほどお話したマスクや、医療現場で使う使い捨てのガウンなどもそうですが、フェイスシールドは今回このコロナ禍で身近に感じるようになった道具の一つだと思います。
樹脂を使った製品が多かったのですが、こちらのメーカーさんは樹脂成型のプロフェッショナルなので、樹脂の扱い方や特性を熟知していて、簡単な構造ながらも使い勝手のいい、トータルでバランスの取れたものを作った点に好感が持てました。
こういういいなというものもありながら、先ほどお話ししたように、ユーザーよりも、業界の横並びというか、他社との関係性みたいなところだけで開発されるような、ちょっとピントがずれているようなものも出てきてしまう、そういう怖さも少し感じる場面もありました。

衛生マスク [フレーム内蔵 口元ゆとり空間マスク]

衛生マスク [フレーム内蔵 口元ゆとり空間マスク](株式会社トレードワークス)21G010015

安東 審査が終わってからも、自分で気に入ったので購入して使っているものもあるのですが、その一つに「フレーム内蔵 口元ゆとり空間マスク」があります。こちらは見た目は布マスクなんですが、中にちゃんと不織布が内蔵されているんです。
ですが、例えば先日あるギャラリーに行って、このマスクをして入ろうとしたら、不織布マスクに交換してくださいと言われたんです。
「これは実は3層構造になっていて、中に不織布が内蔵されています」と説明したのですが、「いや、不織布マスクじゃないと困ります」と言われて、やっぱりまだ難しいなと思いました。
このマスクは、本当に着け心地が良くて、1日中装着していても違和感が少ない。本当のデザイン性って、ユーザーが飽きが来ずに長く使えるとか、そういうことも大事だと思います。

マスク [第三のマスク]

マスク [第三のマスク](丸井織物株式会社)21G010017

安東 もう一つ最後に、ちょっとこれは皆さんの意見も聞きたいんですけれども「第三のマスク」です。ウイルスのブロック機能も不織布と同等で、でも布マスク同等の快適性があり、値段も不織布に合わせている、という3つの軸がコンセプトとなっていることが素晴らしかったです。
でも本田さんが、別に不織布マスクに似た見た目じゃなくてもいいんじゃないかとおっしゃっていて、それも一方であるんです。これだけの技術があるんだったら、新しい見た目のデザインや、もっと違うことも考えられるのでしょうが、やっぱり不織布マスクじゃないと抵抗感がある人がまだまだいるということと、公共の場においては不織布マスクをしているほうが他者に対して安心感を与えるとか、そういうことがあるのかなと思いました。

本田 不織布マスクのほうにフィルター機能面では軍配が上がるということがメディアでも言われてから、布マスクがネガティブな烙印を押されるような状況になっていましたね。

岡本 これは、着けてみると全然違うんですよね。それが驚きました。こんなにも不織布と生地感が変わってくるのかということが、見た目だけでは分からなかったので、着けて初めて驚くという感じでした。

安東 当然、不織布マスクの中でも上質なものとそうじゃないものがあります。これだけ毎日マスクを着けていると、肌への負担というのはやっぱりあると思うんです。でも、この「第三のマスク」は柔らかさが全然違う。でも、周囲に対して不織布マスクをしている安心感もあるというか、そういう不思議な感覚もありました。

本田 本当にマスクがこの1年で急に成熟したことを証明するかのような、多様なニーズに対して、できあがってきたという感じが、これを見てしましたよね。

岡本 毎年感じるのですが、やっぱり今年もなおのこと審査の難しさを感じました。今回はコロナを経て1年たって応募されたものばかりだったので、その変化は大きかったと思います。この状況下で急いで必要になったものと、逆にこの状況下とは関係なく、長い期間を経てじっくりと開発してきたもの、が両方並んでいるというのが、今回の審査の面白い特徴だったと思います。

現段階でよりよい機能を持ったものをきちっと評価していくこと

安東 このユニットの審査対象は「身に着けるもの」ということで、当然何らか身体に関係してくる応募対象でした。私は審査を2年ぶりにやらせていただいたのですが、前回と今回の応募は、中身がだいぶ変わっていたことに、まず驚きました。というのは、当然ではあるのですが、コロナ禍で企業が作るものや、応募してくるものが変わってきていて、社会の変化を審査で直接肌身に感じました。
今後コロナが収まってきても、マスクを装着することはこれで終わらずに、来年も再来年も続く可能性があります。
その時に、ウイルスに対する機能性だけではなく、スポーツ用やアウトドア用など様々な条件に合わせて、いろんなものがきっと出てくると思います。
だから一つの普遍的な評価はできない、ということを感じました。
その中でも、今の段階では、よりよい機能を持ったものをきちっと評価していくことで、ある一つのスタンダードになっていくのかなということで、私たちでいろいろ見ながら評価を決めていったという感じだと思いました。

腕時計 [スクールタイム]

腕時計 [スクールタイム](セイコーウオッチ株式会社)21G010003

岡本 僕も審査に携わるようになって3年になるのですが、グッドデザイン賞の審査の傾向として、社会問題に対しての改善があったり、影響力のあるものをどうしても選んでしまいがちなんですが、もう少しフラットに、品が良いとか感じの良いものもきちんと評価したいと心がけていました。
そういう意識でいろいろと見ていた中で、僕が感じが良いと思ったのは、「スクールタイム」という子供向けの腕時計です。これも機能はいろいろとあるし、開発に至ってのさまざまな工夫というのもお聞きはしたんですけれども、それよりも子どもがこれくらい品の良い時計を着けている姿を想像すると、とても感じが良いという印象がありました。
そういうものも、いろいろと議論しながら評価できたのは、個人的には良かったと思っています。

服部 「スクールタイム」はトータルでとてもよくできていると思いました。本当にスタンダードな子ども向けの時計にもかかわらず、技術的にもすごいというところが実はあります。あまりそういうふうにも見えないという点も素晴らしい。
フェイスのデザインから機能性から内蔵されている資質にまで至るところでトータルでバランスのいい製品だなと思いました。これをやってのけることができるのは、やはり開発のチームビルドの素晴らしさというところにもつながっているだろうなと思います。
過剰にデザインされているということよりも、やはりこの製品が品の良いモデルケースになるんじゃないかと感じたものでした。

安東 私もこれはいいなと思ったんですけれども、岡本さんが文字盤のグラフィックに興味を持って、その視点から見たりしながら、全体を評価していくというように、他の審査委員の多角的な評価軸というか、目線があわさる審査ができて、多様な視点があって面白いと思いました。

岡本 どうしてもプロダクトを優先していくと、グラフィックというのは後回しになりがちなんです。電化製品などでも、「押す」ボタンに書いてある文字にも製品としての意思はあるべきだと思います。
スクールタイムに関しても、ヒアリング審査で開発者の方といろいろとお話した時に、その文字盤の数字の書体に関していろいろと検討されたんですかと聞いたら、かなり明確な回答が返ってきたんです。そういう意思が細かいところにまでちゃんと込められているというところが、全体の佇まいにつながっているのかということを感じました。

ファミリーマートの取り組み [コンビニエンスウェア]

肌着、ソックス、Tシャツ、生活雑貨 [コンビニエンスウェア](株式会社ファミリーマート)21G010043

岡本 今回、コンビニのファミリーマートの取り組みも今回受賞しましたが、それも少しお話したいと思います。コンビニエンスストアでちょっとした衣料品が売られていることは誰でも知っていると思うのですが、例えば靴下に穴が空いてしまったとか、ハンカチを忘れてしまったというような緊急事態的なタイミングで、「仕方がないからコンビニで買うか」という形が多かった。今回受賞した取り組みでは、そこを変えようとしています。新しいコンビニエンスウエアというブランドで、ちゃんとコンビニでも良い衣料品が売っている、というところにチャレンジしているという点が評価されました。コンビニで衣料品を買うということ自体が、きちんとブランド化されて、少しずつ定着しています。

本田 今までだと、「取りあえず」買ったもので、その後使い続けようと思わないものだった可能性がありますが、これだけしっかり作っていることで、使い捨てにされないというか、そういうメッセージが広く伝わる取り組みになっていますよね。コンビニっていろんな意味で常に先駆者でなきゃいけない立場にあると思うのですが、新しいこともやりつつ、「使い捨てにしない」というメッセージもちゃんと広く人に伝えられる展開というのはとても好感が持てました。

服部 このコンセプトで他の商品も展開されていくと、新しいものになりそうな気がしますよね。単純に日常使いという話だけではなくて、例えば健康グッズみたいなものだったり、そういったところにまでコンビニが都市で機能していくという可能性を感じました。

「無理のない」心地良さ

福祉用具 [ササエルデザイン・ガジェットケープ]( 合同会社ひらやま)21G010041

本田 今回の応募対象の中には、車椅子用のケープ[ササエルデザイン・ガジェットケープ]や、三角巾[ケアウィル]なども衣料品の一部として、障害のある方向けのものもありました。ユニバーサル・デザインということが言われ始めて30年以上経っていますが、今までは大量生産時代を背景に、そういうマイノリティの方たちに対しての製品は、特別なものを誂えているという感じがどこかにありました。ですが、ようやくマイノリティの方向けのものが作られることが特別じゃなくなってきた印象を受けました。多様なユーザー一人一人に対して、ものが届けられることが自然とできてきたんだなというのを、この2つを見ていて感じました。そういう意味では、社会に対して大きく構えて、というのではなく、みんなが自然体でそういう動きが出てきているのが感じられて、いいなと思いました。
社会課題などの大きいことに対してのものづくり、というものが肥大化しているようなところもあるのですが、他方では、本当に「もの」だけの魅力で判断でしてもいいんじゃないかという、グッドデザイン賞の基本的なところもあって、その中間的なものも存在し得るのかなというのも感じました。

服部 eコマースの発達で、C to Cのようなつながりで、ものづくりをする人とユーザーの関係も変わってきた気がします。今まで「仮想ターゲットに対して作る」という時代から、直接見えている人たちのために「もの」を作るということが顕著に増えています。しかも「無理のない」ということが心地良さを感じさせますよね。

岡本 確かに。「無理のない」ってすごくいいですよね。
やっぱりどうしても一生懸命作ろうとすると、肩肘張って頑張っちゃうけれど、そこを少し自然体に、緩やかに形が作れるというのはすてきですね。

エコバッグ [グリーンバッグ/3033B576]

エコバッグ [グリーンバッグ/3033B576] (株式会社アシックス)21G010028

安東 リサイクル素材でエコバッグが流行っている中で、アシックスの「グリーンバッグ」という製品もありました。これも無理がなく、ゆったりと長くやりましょうという形でやっていて、さらに循環として、買ってもらった人のお金が子どもたちのプロジェクトに回っていくという仕組みもありました。アシックスは、今回のオリンピックでも、使えなくなったスポーツウエアを実際リサイクルしてウエアにしていましたよね。

本田 これもぽんとエコバッグを出しました、という評価ではなくて、アシックスのそういう取り組みが、時間軸も含めて、一過性のものではないというのが、全体的に伝わってくるからいいんでしょうね。

安東 そこも含めてわれわれも評価して、受賞されたのですが、実際に店頭で売られているのを見た時に、とてもきれいな軽やかな感じがしました。やっていることは緻密に計算されていて、持続可能な活動としてやっているのですが、その軽やかさや気持ち良さを見るとほっとするというか。やっぱりデザインというのは、いろんなお題も使命もあるのですが、改めてきれいなものじゃなきゃねと感じました。

本田 そうですね、そこは大事ですよね。

安東 特に身に着けるものというのは、私たちの体に直結しているものだから、気持ちいいとかきれいだなと思えないと、どんなにこの機能が素晴らしくても、リサイクル素材ですと言われても、ピンと来ないものだということを改めて感じます。

身体から社会のポジショニングまで

服部 僕は今年このユニットの審査に携わるのが初めてだったので、この身に着けるという製品群というのに触れ合うのがかなり面白かったです。
身体的に心地いいかどうかというのがまずはあったり、使いやすいかどうかということももちろんありました。
見て、自分が持っている知識の中で検討して答えを出すというよりも、むしろもうちょっと直感的なところで、この触る行為から次にこのジャンル自体がこの世界の中でどういう役割を本当に担っているんだろうかという、身体から社会のポジショニングまでということを考えるという、難しいユニットだなということも感じました。
あとやはり、みなさんも言うように、マスクがやっぱりすごかったです。急ピッチで作らなきゃいけないというフェーズから、それをブラッシュアップするという、たったこの2年の間で、よくもここまで非日常から日常の世界にまで、身近な存在として開発を進めたなということが、文明の進化と言ってもいいんじゃないかというくらいに技術の推移を感じました。おそらく他のジャンルで、この2年でこんなにも専門性から日常性へという変化に対応したものってなかったんじゃないかというところに驚きを感じました。

本田 このネガティブな社会情勢に対して、ポジティブに捉えていくと、ビジネスチャンス的な意味でも、どんどん新しいものをクリエイションしていく余地があるというのは、何かすごい発見だったなという気がします。

ユーザーとどう対話するか

岡本 受賞した作品はどれも素晴らしいものだったんですけれども、ちょっと批評的な話をすると、正直去年よりも今年のほうが全体としてのクオリティは少し下がったんじゃないかと感じる部分もありました。
それがなぜなのかを自分なりに考えてみたのですが、「身に着けるもの」は製造の初期コストがあまりかからずに、作りやすいものというのがどうしても存在するんです。
それを踏まえて、コロナ禍の影響もあって、かなり多くの企業の方々が応募してくださったというのは、ありがたいことでした。
ただ、プロダクトがよくできていたとしても、その周辺環境であるパッケージやロゴ、そのプロダクトを紹介するイメージ写真など、そういった全体のクリエイティブのクオリティがまだまだだなと感じるものがたくさんあったという印象でした。
そういったところまで気を配って、全体のクオリティをぐっと上げていくと、プロダクト自体も魅力的に見えて、社会にも同じように魅力的に届くと思うので、そういう部分も来年に向けてぜひ努力していただけるといいかなと思いました。

安東 そうですね。特に最終的な見せ方というと、パッケージやロゴであって、それはやはりとても大事だなと思います。

服部 確かに良いものと作ったとしても、そういう部分でのコミュニケーションもやっぱり伝わる部分だと思います。
だからユーザーとどう対話するかというところをもう少し意識すると、全てが変わってきそうな気がします。

スタンダード作りの難しさ

岡本 もう一つ今回感じたのは、コロナの影響もあり、またはSDGsの観点だったりとか、いろんな変化が一度に同時に起こっている状況にあって、社会がぐにゃぐにゃと動いている中で、製品としてのスタンダードを作るということが、とても難しくなっているんじゃないかと感じました。
「新しいスタンダードを作りました」と書かれて応募されているものもありましたが、まだ正解は見えない。誰も正解が見えない中で、スタンダードを作るということは、難易度が高いことなんだというのを審査をとおして改めて感じました。
一方で、そもそもこの時代にスタンダードっているのかなと思い始めています。それはもうプロダクトだけではなくて、ライフスタイルとか、働き方も含めて、スタンダードな何々というものがどんどん不要になってきているんじゃないかと思っていたりしています。
そんなことが今、社会とかデザインの傾向で起こっているのかなと、全体をとおして感じました。

本田 そうですね、それはいい面でも悪い面でもスタンダードがないという捉え方って大事かもしれないですね。

岡本 だから、マスクで言うと、不織布マスクの形が今はスタンダードになりつつありますが、本当にそれでいいのだろうか?みたいなところも、審査委員の皆さんと議論をしましたよね。

本田 そうですね。多分われわれがずっと審査中にいろいろ議論してきたことが、ここでも再現できたかなという気がします。みなさんありがとうございました。

↓ こちらもどうぞ
2021年度グッドデザイン賞 ユニット1 - 身につけるもの 審査講評