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町とひとをつなぐ建築〜2021年度グッドデザイン賞 審査ユニット13(建築(産業/商業施設))審査の視点レポート

グッドデザイン賞では、毎年その年の審査について各審査ユニットごとに担当審査委員からお話する「審査の視点レポート」を公開しています。グッドデザイン賞では今年、カテゴリーごとに18の審査ユニットに分かれて審査を行いました。審査の視点レポートでは、そのカテゴリーにおける受賞デザインの背景やストーリーを読み解きながら、各ユニットの「評価のポイント」や「今年の潮流」について担当審査委員にお話しいただきます。
本記事では、審査ユニット13(建築(産業/商業施設))の審査の視点のダイジェスト版をレポートします。
ダイジェストではない全部入りは、YouTubeで映像を公開していますので、よろしければこちらもどうぞご覧ください。

2021年度グッドデザイン賞審査の視点[Unit13 - 建築(産業/商業施設)]
担当審査委員(敬称略):
原田 真宏(ユニット13リーダー|建築家/大学教授)
芦沢 啓治(建築家/デザイナー)
永山 祐子(建築家)
吉田 愛(建築家)

今年の審査を振り返って

原田 全体の印象として、今年も良い作品が多くありました。建築プロジェクトというのは、クライアントから依頼があり、仕様があって、それをデザインに変換していくという流れが一般的ですが、そういったいわゆるクライアントワークを超えたような作品が多く見られました。建築家自身が運営に関わったり、発注の仕様を建築家自身で選んだりするようなプロジェクトが今年の大きな特徴だと思いました。
今回のグッドデザイン賞の全体のテーマとして「希求と交動」というものがありました。今回、建築家が強く世の中に対して希求をして、自らデザインによって交動するという流れが強く見えた気がします。
これまでは既存の様式を何となく踏襲しつつクオリティ高く仕上げていくようなものが多く、評価が難しいなと思っていたのですが、今年はそういったものばかりではなくて、プロジェクトの主導者が自ら世の中の問題を観察して、それに対して形式を与えてオリジナリティのある作品を作っているものが多く見られました。国内外ともにそういった流れが多かったと思います。つまり、これまでの様式だけでは解けない問題が増えてきたということの現れなのかもしれません。

芦沢 私はこれまでグッドデザイン賞では、プロダクト分野での審査経験はありましたが、建築分野の審査には今回初めて参加しました。他の分野とは違い、建築の審査は、審査時に現物を見てそこで判断しているわけではない点が非常に難しいと感じました。応募された建築物をすべて見に行くことはできないので仕方ないことではあるのですが、公平な審査とはなにかということを考えながら審査に臨みました。
今回の審査を通して印象に残ったこととして、そこに設計者という建築家やデザイナーの存在がしっかりあるということでした。その人たちのスキルがクライアント側と結びついて、いい資産を社会に残していこうという動きがあると感じました。

永山 私は今年で審査に参加して5年目になりますが、皆さんがおっしゃっているように、今年も質の高い作品が集まっていたと思います。グッドデザイン賞の傾向として、ストーリーがいいという点での評価も大事なのですが、ストーリーがいいということと、デザインがいいということ、今回その両方でレベルの高いものが多かったという印象を持ちました。これまでは、ストーリーが強いものとデザインが強いものが必ずしも一致しないこともあった中で、今回の受賞作品ではその両方のレベルが高いということが傾向としてあった気がします。
個人的には、ここで評価され受賞したものが、世の中に知られることによって、その後の世の中が良い方向に変わればいいなという願いを込めて見ています。この5年を通して見ても、評価されたものによってその後の社会やムーブメントを作り出し、ストーリー、デザインともに高いレベルのものが出てきているというような、大きなうねりの中にあるのかなと思います。

吉田 応募されているプロジェクトを審査する上で、どういう視点で見るかというときに、発注者としてのクライアントがいて、受注者としてのデザイナーがいて、その片方の視点からだけではなく、どんどんそれぞれの領域が曖昧になっている気がしました。両方に思いがあって、そこが重なっているという事例が増えていると感じました。
発注されたからデザインするということではなく、デザイナー自身がどういう案件をやりたいのか、どういう状況を作っていきたいのかということを、みんなが試行しているのかなという気がします。ただ請け負う仕事ではなく、社会的に意味があること、環境に対しても、これからの未来につなげていきたいと思えるようなプロジェクトが増えているという印象を受けました。そういった意味でも、取り組みの部分とアウトプットとしてのデザインがうまく解けているものが多かったという印象を持ちました。

都市におけるセンターオフィスの再定義 [THE CAMPUS]

都市におけるセンターオフィスの再定義 [THE CAMPUS](コクヨ株式会社)

芦沢 こちらは、元々3つあった建物のうち1棟を解体し、残った2棟の建物をブリッジでつなげて、その中間領域をテラスのような場所にしているのですが、その手法は斬新でしたし、今後こういった建物をリノベーションしていく上で示唆的であったと思います。元々こういう建物だったように見えつつも、ダイナミックなリノベーションを仕掛けています。中に入っていくと1階がカフェスペースになっていたり、コクヨのショールームになっていたり、町の人たちが気軽に入っていける公園のような場所になっています。上階に位置するオフィス空間やスタジオ空間の質も高いものとなっています。ジェンダーフリーといったトピックに対しても、例えば男女共用のトイレを設置していたり、自分たちが未来のオフィスを作っていくんだという企業の姿勢が感じられました。オフィスを作っている設計者だけではなくて、いろいろな方に見てもらいたい施設だという意味もあり、グッドデザイン金賞にも選ばれました。
グラフィックもとてもいいと思いました。空間をよく理解しているというか、グラフィックが空間に効いているというか、そういったところもかなり初期の段階からグラフィックデザイナーが入っていかないと、ここまでうまくできないだろうなという感じの在りようは見て取れました。

原田 リノベーティブなオフィスは今いろいろなところで開発されているのですが、これはその中でもさらに一歩二歩進んだなという感じがします。リノベーションオフィスというと、いろいろな部署間でのつながりを強めていくような空間的な仕掛けを作ることが多いのですが、コクヨのこの試みでは、部署間でのつながりももちろん強まっているのですが、都市とも積極的に関わっています。都市のようなオフィス、オフィスのような都市といった領域を内外に作っていて、それによって企業として社会のニーズと直接ふれあうこともできるわけです。都市の側から見ると、人々の居場所ができて、双方にとってメリットがある新しい形式を作っていると思いました。
また、このプロジェクトは社長直轄プロジェクトとして、様々な部署で共同して取り組んだそうです。つまりいろいろな部署に分かれていた人たちが一つのプロジェクトをやることでつながった。この建築を造ることで、組織のリデザインまでできています。
築50年近いRCの建物がたくさんあふれている状況だからこそ、それらの既存のRCの建築物を地形のように見なしながら作っていくという流れが加速していくでしょう。内も外も関係なく躯体として捉えて、建築単体で終わらずに、複数の建物をまたいで作るといった手法のいい先例になっています。

高級ヴィラリゾート施設 [伝泊 The Beachfront MIJORA]

高級ヴィラリゾート施設 [伝泊 The Beachfront MIJORA](奄美イノベーション株式会社)

吉田 こちらは奄美大島で、分散型の宿泊施設として計画されたものです。元々スーパーマーケットだった場所に「まーぐん広場」という場所をつくり、食堂や受付ができるスペースがあり、地元の住民が立ち寄れるイベントもできる場所になっています。そこを中心として高級リゾートである「The Beachfront MIJORA」という施設があります。使われなくなった古民家をリノベーションして宿泊施設にしています。高級ホテルでありつつ、島の生活が感じられる民家での宿泊体験ができます。島の人とのふれあいや、島を体験するということが、ここに宿泊するだけでプラスされる環境がデザインされています。普通の旅行の体験とは違った感動が生まれたり、この地域の良さを知ることができる機会となっています。そのサイクルをうまく作っているのがすばらしいと思いました。
また、それだけにとどまらず、持続できる生活圏としての環境を整えるために、老人ホームや医療にもお金を循環させるための資金源としても捉え、この宿泊施設を運営しています。それを建築家がみずから計画して運営しています。建築家が自らの地元であるこの島の資産や環境、伝統を残すためにこのサイクルを作って、それで自分でデザインして運営まで手がけているという熱い思いが非常に伝わってきます。それをやることで、自分たちの生きがいにもなるような部分に共感を抱いたプロジェクトでした。

永山 このホテルを一つのきっかけとして、島の外から人が来て、島の魅力を知ってもらうことにより、そこにお金を落としていって、それが島の豊かさにもつながります。雇用も生まれますし、そこで得た資金を高齢者のデイケアにも回していくという、建築をきっかけにできることを、この場所で実践しています。建築が地域に対してどんな役割をもち、どんな可能性があるのかということを真摯にトライしているというところがすばらしいと思います。これを見て、改めて建築の力でその場所が変わっていくということを示してくれていると感じましたし、とても勇気付けられました。

ホテル [Luxury hotel SOWAKA]

ホテル [Luxury hotel SOWAKA]( 株式会社畑中+株式会社魚谷繁礼建築研究所)

永山 こちらは、そもそものこのプロジェクトの立ち上がり方もユニークというか、再開発エリアとして全部壊して新しくするという動きがあった中で、壊さずに活用するという形でプロジェクトを仕切り直したという事例です。この経緯には建築家も関わって、町にこういうものを残す運動に加わられたそうです。実際にできたものは一つ一つのディテールがなるほどと思えるような丁寧さが感じられるものでした。
こういった建築をリノベーションするときには、さじ加減であるとか、手の入れ方が難しいと思うのですが、それが調和していて、気持ちのいい空間となっています。すべての部屋が全く違うデザインでできていて、この膨大な設計量とこの取り組みの仕方になるほどと感服しました。

原田 現行の建築基準法を適用すると、もともとあった美しいお茶屋さんの内装を残すことが難しいという状況があったそうです。建築家が行政との信頼関係の中で建築基準法適用除外を受けて実現したプロジェクトでもあります。つまり、ハードな工夫とソフトの運営の工夫、両方含めて現行の建築基準法で古き良き内装がなくならないようにしたという点は大きなトライだと思います。建築家が行政と良い関係を築けていなったら絶対にできなかったことが起こっています。そこも高く評価させていただきました。

オフィスビル [REVZO虎ノ門]

オフィスビル [REVZO虎ノ門](中央日本土地建物株式会社+川島範久建築設計事務所)

永山 こちらは、まずオフィスの貸し方として、完全にスケルトンで貸すという方法も含めて新しいと思いました。オフィスにとって価値を付加できるような気持ちいい場所をつくり出すということで、従来型オフィスのボキャブラリーを使いながら、こういった新鮮なものができるということに驚きました。設計の中で生まれる与件の整理の仕方がとても秀逸で、整理していく中で生まれた素直な手法がこの建物全体の質を作り出していると思います。無理せずに、腑に落ちるデザインで好感の持てるものになっています。

芦沢 中規模オフィスの新しいスタンダードを生んだという感じがします。建築設計資料集成に載りそうなほど見事な型で、この後これを反復していけば、質のいいオフィスが日本中にできるという気がします。

オフィス [ROPPONGI TERRACE]

オフィス [ROPPONGI TERRACE](シマダアセットパートナーズ株式会社+株式会社シーラカンスアンドアソシエイツ)

芦沢 小さなプロトタイプとしての都市型オフィスというか、都市型住居兼オフィスという建築だと思いました。建築的な答えを素直に積み上げていってできている建築です。大胆な提案でもありながら、最終的に公園の景色を取り込んで大きなテラスのような空間をつくったという建築的な切れ味に感心しました。

原田 最近ではオフィスと住居がどんどん近づいてきているという状況があるわけですが、ここはもう混ざってしまっている感じになっていて、二拠点居住や多拠点居住、あるいは多拠点労働の場所としてこの場所を用意しています。ですから、住むための場所や設備も最小限入っていて、ここを主たる居住地にはしなくても、働きながら暮らすというライフスタイルのための場を新たに生み出しているという点で、普遍的な価値があると思いました。

複合商業施設 [WITH HARAJUKU]

複合商業施設 [WITH HARAJUKU]( NTT都市開発株式会社+株式会社竹中工務店)

吉田 これぐらい大規模な商業施設ができるときには、建物によって町が分断されてしまうということがよくあって、それは残念だと常々思っているのですが、この商業施設ではパッサージュという道を挿入することで、裏原と呼ばれる低いエリアと高いエリアをうまくつないでいるところが秀逸だと思いました。
ボリュームのある建物ですが、木のリズムに沿った小さいグリッドの集積という形で作られています。木の陰影もできて、自然の表情が表れていて、ガラスのようなスッとした新しい材料で出来がちなこういった空間において、きちんと自然のうつろいを表現しているところがうまいと思いました。このパッサージュを通すことで、森からの自然光や自然な風を取り入れ、自然と共生した在りようを目指しているという点も共感できます。この場所では地形に高低差があるという面白さがあって、その地形がカルチャーをつくったり、町歩きを楽しくさせていると思うのですが、特に原宿や渋谷はそういったストリートカルチャーが発生してきた経緯がある中で、土地の起伏を生かした構成で、大きい建築なのに上手にプログラムとして解いていると思いました。

芦沢 地域の商店街の人たちもこれができることに対して応援してくれたそうです。通常の敷地内の商業建築という枠を超えて、エリアのデザインとして考えられているから受け入れられているのかと思います。

商店街 [ボーナストラック]

商店街 [ボーナストラック](小田急電鉄株式会社+株式会社散歩社+株式会社ツバメアーキテクツ)

原田 東京西部を走る私鉄・小田急線の線路が地下化されて、下北沢に生まれた空き地の大規模な商業開発です。ふつうはこういった再開発事業ですと、大きな建物がどんと入ってきて、大手資本がチェーン店を引き連れてきて、どこにでもあるような商業の町並みができることが多いのですが、これはその全く反対をやろうとしたプロジェクトです。下北沢は元来小さなオーナー店舗の集積でできているボトムアップな町なので、そのエッセンスをこの大きな細長い敷地でも実現しようと、建築家も運営サイドに入りながらこの企画を立ち上げて実現したということです。
大きな工夫としては住居兼店舗という建築形式を使って、オーナーが上階に暮らして下階で店舗を運営するという方法を取りました。それによって小規模なスタートアップ企業や若い店主たちがここに集まってくる。そういったお店の作られ方は周りにある下北沢の商業店舗と同じです。ここだけ浮いているという空間になっていない。デザイン的にも下北沢にありそうな小さな軒や縁側など、空間のスケール感も合わせて、よくこの地域を研究しています。そのボキャブラリーで作っているから、町の人たちも普通にここに入って来ることができます。
もう一つすごくいいなと思うのは、ここをお手本にして、周囲でも同じようなお店の展開をしています。この敷地内や施設だけが豊かになるのではなく、下北沢らしさがここにもあって、その型を使って周辺までが良くなるという良い循環を起こしています。持続的にこういう場が運営されていくということに貢献していると思います。

吉田 エリアが人気になったら地価が高騰して、結局、資本を持っているお店しか入居できない状況になってしまうという傾向があります。住宅を兼ねているから家賃もあまり気にせず、ちょっとやってみようかなという人たちがトライできるという環境はすごくいいと思います。

ホテル [GALLERIA MIDOBARU(ガレリア御堂原)]

ホテル [GALLERIA MIDOBARU(ガレリア御堂原)](DABURA.m株式会社)

芦沢 意図として構造が表に出てきているような、ひだのような建築が環境を取り込んでいると思います。ランドスケープの一つになっていて、新築なのに環境になじんでいる点がいいなと思いました。作家さんとのコラボレーションなど、ホテルとしてやっていくべきことをきちんとやっているという点にも好感を持ちました。空間をつくっていく上で、アーティストとしっかりコミュニケーションを取っているんだろうなというのがよく現れています。大分に行ったらここに泊まらなきゃというデスティネーション(目的地)になっているということで、いろいろな意味でお手本になりうる案件だと思います。
立地は傾斜地で、難しい敷地です。それを上手に解いています。躯体の真ん中に溝が掘られて、たぶんそこが水の通り道になっていくんでしょうが、そういうディテールもしっかり作られているところに、作家としての力量も感じました。抽象論で終わらない具体としてのよさがあると思います。

原田 状況を受けて受動的に作ったというだけではなくて、ストーリーもうまく成立しています。それに加えて、この建築という造形物の力強さがあって、目的地になりうる建築をつくり出しています。

多目的実験型複合施設 [石巻ホームベース]

多目的実験型複合施設 [石巻ホームベース](株式会社石巻工房)

吉田 こちらは何より震災後10年間これを続けてこられていることがすばらしいプロジェクトです。石巻工房は、最初は被災した人たちが、壊れた住居や店舗を修繕したり作ったりするための道具や資材を貸し出す活動として始まり、その延長線上にこの場所ができたという話がありました。これも一つの町づくりだと思うのですが、それが根付くところまで行くのはなかなか難しいという中で、それを10年間継続して実践しているということはすばらしいと思いました。
たとえば復興イベントで使用するためにベンチを作る、というところから派生して家具を作られています。活動の幅や規模をどんどん広げ、海外にもブランドを波及させていて、きちんと成り立つ仕組みを作り、このデザインによって町おこしのような状況が作られているというところがすばらしいと思います。復興に対してデザインでできることを示しているのがこの施設だと思います。
時間や体験を通じてこの場所で起きていることを知ることができる場所にもなっています。そういった意味で、ものをつくるだけではなくて、食や宿泊などの体験を通して、それらの出来事を伝える場所にもなっています。

レストラン [50% Cloud Artists Lounge]

レストラン [50% Cloud Artists Lounge]( SHENZHEN CHENG CHUNG DESIGN CO., LTD)

芦沢 まず、この建築そのものは以前アーティストが作ったもので、それがしばらく放置されていました。そこにリノベーション・プロジェクトとして、デザイナーが入ってレストランとして改装しています。元々の環境との関係性もすばらしいのですが、リノベーションを仕掛けていくときに、デザイナーが地域を読み解いて、よりアーティストと空間が感じられるようなインテリアの作り方をしています。それだけでもすばらしいのに、スタイリングという点で、レストランとしての質も非常に高い。とてもパワフルな空間だと思いました。

吉田 ここは行ったら、間違いなく鳥肌が立つだろうなという空間です。アートとしてすばらしいというだけではなくて、そこにきちんと用途が加わって、それが調和しています。アートだけに終わらず活用できている。しかも、そのことでよりよくなっているところがすごいと思います。

原田 本当にレベルの高い仕事です。この建築を体感したいと思わせる魅力があります。この建築家は香港の方なのですが、抑制的な手際で、もともとあったものの質は一切壊さず、それをより明らかにするような進歩をしていて、非常に洗練度が高いと思いました。

まとめ

原田 今振り返って見てみても、取り組みとしてのストーリーがしっかりしているという魅力が共通していました。それがグッドデザイン賞においてはとても大切なことだと再確認できたと思います。
もう一つ、今日すごくいい言葉をいただいたなと思うのは、芦沢さんがデスティネーション(目的地)と言ったことです。きちんと解いているだけではなくて、そこに何かが存在して、みんなの行為を促したり、何かを触発するようなものを建築家は作らないといけないと思います。ストーリーにとどまらず、そこに至ったところまで、上位の受賞しているものはよくできていたと思います。

芦沢 コロナ禍で出かけられないという状況がある中で、そこに行かないと体験できないこともあるし、そこに行こうと思わせる力を持った建築がまだまだ作れるということを感じさせるものが幾つかありました。そういったところで行政や、地方でビジネスをやっている人、あるいは地方の建築に関わる人たちが考えなければいけないことの一つは、いかにクオリティのあるものを作っていくかということだと思います。それがみんなにかわいがられて、その結果そこに新たな町ができていくぐらいの魅力を持った建築やデザインを、僕らはやっていかなければいけないという、応援されたような気になりました。

吉田 建築やデザインは、ただ建物を造ったり、ただ場所をつくることだけではないという観念からいろんなプロジェクトが生まれていると思います。それがどんどん成熟してきていて、仕組みやコミュニケーションを生み出すとともに、アウトプットされた空間自体の質がよく、そこがうまく絡んでいます。良い仕組みや企画であっても、空間がぐっとこないと、体験としていいとは感じないと思うんです。それがうまく一体となって、成熟しつつあると思って見ていました。今後もそういった事例を基に魅力的な空間ができたらいいなと思います。

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