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2021年度「フォーカス・イシュー」提言を発表しました

本日、今年度の「フォーカス・イシュー」提言を発表しました!

フォーカス・イシューとは?

フォーカス・イシューは、グッドデザイン賞の審査委員をディレクターとして迎え、その年の受賞作を題材に、「いま社会課題に対してデザインができること」を考えてもらい、年度末に提言として発表しています。

この取り組みは、2015年度から始まり今年で7年目を迎え、これまでに41名のディレクターが、50の提言を発表しています。

2021年度フォーカス・イシューを振り返る

今年度のディレクターは、こちらの5名です。

2021年度ディレクター紹介

左から飯石藍さん・石川善樹さん・田中みゆきさん・原田祐馬さん・ムラカミカイエさん

ディレクターのみなさんは、自らの抱える課題感や問題意識から、それぞれ以下のテーマを独自に定め、一年間の考察を進めてくれました。

完成しないデザイン - 飯石 藍さん
将来世代とつくるデザイン - 石川 善樹さん
時間がかかるデザイン - 田中 みゆきさん
まなざしを生むデザイン - 原田 祐馬さん
共生のためのデザイン - ムラカミ カイエさん

これらのテーマをもとに、先行きの見通しづらい現在から、デザインを通してこれからの社会をより良いものにしていくためのヒントを一年間かけて探りました。

2021年度記事を振り返る

また、2021年度からは、記事制作のパートナーとしてdesigningさんを迎え、取材や編集にご協力いただいたほか、フォーカス・イシューウェブサイトに掲載した記事をdesigning側にも掲載してもらうなど、フォーカス・イシューをより広げていく試みも行いました。

今回提言を発表するまでに年間でウェブサイトに掲載した記事は、以下7本です。

1 グッドデザイン賞 審査委員長×副委員長対談
社会のあるべき姿”を提示する──安次富隆×齋藤精一が語るグッドデザイン賞フォーカス・イシューの意義

2 フォーカス・イシューディレクター座談会
グッドデザイン賞2021を読み解く5つの切り口──フォーカス・イシュー・ディレクター思索の軌跡

ディレクター対談シリーズ
3「完成しないデザイン」を考える

黒岩裕樹×飯石藍|必要なのは、無理なく続けられるデザイン

4「将来世代とつくるデザイン」を考える
永吉健一×石川善樹|「共にいる」ことで実現する、みんなのためのデザイン

5「時間がかかるデザイン」を考える
吉藤オリィ×田中みゆき|「偶然の出会い」はデザインできるのか?

6「まなざしを生むデザイン」を考える
磯野真穂×原田祐馬|必要なのは「もっと面倒くさくしてくれるデザイン」

7「共生のためのデザイン」を考える
中村寛×ムラカミカイエ|真の「共生」のためにデザインができること

いまフォーカス・イシューに求められることはなんなのか、という審査委員長対談から始まり、ディレクターのみなさんが試行錯誤しながらテーマに対する理解を深め、最終提言に向かって考察を進めていく様子を、途中経過も交えながら公開しています。

そしてここからはいよいよ、ディレクターのみなさんの提言タイトル言及しているグッドデザイン賞受賞作の例を少しだけ紹介します。

5名の提言タイトルと内容をダイジェストで紹介します

飯石 藍さん - トライ・アンド・エラーによる共創を続けてゆく。長く、みんなで、安心して取り組むデザイン

■提言で言及している受賞例

サービスの受け手が自らを「お客様」と捉えるのではなく、主体性や当事者性を持ってアクションしている点で興味深いのが、「ジョンソンタウン」です。
埼玉県入間市にあったスラム化した2.5haの住宅地を再生させていく街作りプロジェクト「ジョンソンタウン」は、着手して18年経過してからグッドデザイン賞に応募されました。その間、住宅の新築や街路の新設に加え、居住者が少しずつコミュニティを温め続け、街を盛り上げるための試行錯誤を繰り返してきたのです。

石川善樹さん - 数百年スパンでの「循環」を見据えて。次なる時代をつくる世代と共に、手間をかけて取り組むデザイン

■提言で言及している受賞例

デジタルネイティブ世代をターゲットにした日本初のデジタル銀行「みんなの銀行」もまた、さまざまな立場の人を含むチームが一丸となってつくった作品の一例です。特に、金融機関出身のメンバーとミレニアル世代のデザイナーたちの間では、バックグラウンドの違いからしばしば意見が衝突したものの、全員の合意が得られるまで丁寧な議論を重ねて開発を進められたそうです。
これらは非常に手間がかかる取り組みです。異なる世代や立場の人が関係性を築くには時間がかかりますが、ゆっくりできたものは壊れにくい。「ゆっくりつくる」は、将来世代とつくるという営みにおいて、不可欠な要素です。

田中みゆきさん - 見えない相手への豊かな想像力を育むために。人間性をつなぎ直すデザイン

■提言で言及している受賞例

印象に残ったのは「志摩の家」。地域の病院に勤務する夫婦が、医療系インターンの学生や研修医たちが泊まれる寮のような機能を自宅に設け、地域の人たちと交流できる場所としてつくったものです。
<中略>
インターンに来た学生たちが成長し、仲間を増やす。そして、いつかその地域に戻ってきて、地域医療が充実する──志摩の家は、その最初の接点になっています。一度に収容できる人数は多くないし、時間もかかりますが、地方の医療従事者不足という問題に質的な影響を与えうるプロジェクトだと感じました。

原田祐馬さん - 面倒くささや曖昧さを、あえて残す。「置いてけぼり」にされた他者へのまなざしをデザインする

■提言で言及している受賞例

審査の中で、出会ったロッテが開発した「とけにくいアイス ゆったりバニラ」は印象的でした。高齢者向けの施設で、食事に長い時間がかかる入居者には、アイスは不向きなデザートと捉えられていた常識を覆したこの商品。
<中略>
カチカチではないのですぐに食べられるし、ゆっくり溶けるのでその人のペースで楽しめる。この商品が生まれるまでには、途方もないリサーチが重ねられたはずです。高齢者の方々の元へどのようにアイスクリームが届くかを熟慮したうえで、視点をずらし、“溶けにくいアイスクリーム”という案にたどり着いたのだと思います。

ムラカミカイエさん - あるべき未来へ、つくる喜びを。ともに作り出し「共生」をもたらすデザイン

■提言で言及している受賞例

台湾のコスメブランド「O'right」には驚かされました。サプライチェーン全体でサーキュラーエコノミーを徹底し、ブランド価値とファンコミュニティを確立するとともに、働く人々のモチベーションと誇りにも寄与している。その裏では20年にわたって持続的な事業成長を遂げているのも、特筆すべき点でしょう。
確固たるビジョンを持ち、長い年月をかけて、業界やサプライチェーンのしくみや人々の価値観を変えている。あるべき未来社会に向けて、実績を積み上げながら、ビジネスとの両立を図ろうとしている。こうした未来志向の会社や組織のデザインの実践は、世界中の心ある企業に勇気を与えてくれる実例だと感じます。

提言はウェブサイトでご覧ください

ここまで、ダイジェストで今年度のフォーカス・イシューを紹介してきましたが、興味を持っていただいた方は、ぜひフォーカス・イシューウェブサイトで、提言の全文をご覧ください。
また、年度別・テーマ別・ディレクター別に、これまでの提言もすべて見ることができるので、合わせてチェックしていただければ、うれしく思います!

フォーカス・イシューウェブサイトは以下のリンクからどうぞ↓