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【モルトを知る】スペシャリティモルト(カラメルモルト)編

モルトはホップ、酵母と並び、アロマ、フレイバー、ボディ感、アルコール度数など官能特性に強い影響力を持っています。ビールをビールたらしめる、"The Soul of Beer"なんてカッコいい呼ばれ方もされ、ビール醸造において最も重要な要素の一つです。
そんなモルトですが、意外と軽視されがちなので復習も兼ねてざっくり概要を説明していきます。

スペシャリティモルト

スペシャルティモルトは、ビールをより美味しくするフレーバーや色味を生成するために、より高い温度で乾燥またはローストされたモルトです。でんぷんを糖に変換する酵素力を持たない非酵素麦芽であることが多く、乾燥温度や時間、焙煎工程の有無で3つに分類されます。

キルンドモルト - アンバーモルトやビスケットモルトなど
クリスタル(カラメル)モルト - カラメルモルトや各種クリスタルモルトなど
ローストモルト - ダークモルトやチョコレートモルトなど

カラメル/クリスタルモルト

カラメルモルト(クリスタルモルト)は、ベースモルトやキルンドモルトとは異なり、発芽した湿った状態のモルトを64~74℃まで加熱しでんぷんを糖化、その後、高温(120~200℃)でお好みの色になるまで焙煎し糖分をカラメル(クリスタル)化することで作られる。
焙煎温度と時間を変えることにより、軽い焙煎のカラピルスモルトから濃色のカラメル120、カラファ、スペシャルBまで種類は多岐にわたります。
これらには酵素がなく、主にビールの風味、色、ボディ、アロマ、泡持ちを高めるために使用されます。

キャラクター

製造工程で結晶化した糖分は、ビール酵母が消費しない*デキストリンであるため、カラメルモルトを使うことで意図的に甘さを残すことができる。
焙煎の温度や時間、製造業者の技術によって風味はさまざまであるが、蜂蜜やトースト、キャンディのような軽い風味を持つものから、トフィー、ダークキャラメル、レーズン、プラム、プルーン、ブラウンシュガー、ローストなどのキャラクターがある。
甘さを残すことができる反面、使いすぎると不快な甘さになってしまうことからグレインビルの5%~15%程度で使用されることが多い。

*一部ビール酵母はデキストリンの消費が可能

カラメル(クリスタル)モルトの種類

デキストリンモルト

デキストリンモルトは、色や風味に影響を最小限に抑えて、ビールのボディ、口当たり、ヘッドリテンションを向上させます。結晶化されているため非常に固く、粉砕が難しい場合がある。グレインビルに最大で15%以下での使用を推奨。

カラメルモルト(10~120°L)

カラメルモルトは焙煎度により10~120°L(200もあるよ)までさまざまな色と風味を持ち合わせている。詳細は各メーカーのサイトを御覧ください。

10~40 - 蜂蜜、キャラメル、トフィー感
60~80 - 強いキャラメル、ブラウンシュガー、レーズン
80~120 - 強いキャラメル、焦げた砂糖、ロースト、レーズン、プルーン

Special B (150°L)

スペシャル Bは、ベルギーのDingemans社によるモルトで、Abbeyをはじめとしたベルギービールのキャラクターを引き出すのに有効です。
風味もユニークでダークキャラメル、トーストしたマシュマロ、レーズン、ロースト、トーストのキャラクターがある。
その他にも濃色系のビールにも適しており、グレインビルの最大5%程度使用される。それ以上使用するとレーズンやプルーン(個人的にはぬかっぽい)のキャラクターが引き立つので留意することをオススメします。

カラメルモルトは別名酸化モルトとも言われてるんでスタイルによってはデメリットもありますが、ビールの味、なかでも甘さをコントロールできる非常に面白いモルトです。さまざまなスタイルのとても良いアクセントになるので、オススメの使い方があれば教えてください!

John Palmer, How to Brew 4th Edition, Brewers Publications, 2017 - http://www.howtobrew.com/
John Mallett, Malt A Practical Guide from Field to Brewhouse, 2014
Briess Malt & Ingredients, https://www.brewingwithbriess.com/

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