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Cascade Brewing閉鎖で考える醸造所の終わらせ方

6/18、SNSを見ていたところアメリカ・オレゴン州ポートランドのCascade Brewingが閉鎖するとのニュースが飛び込んできました。

記事を要約すると
Cascade Brewingは2024年6月17日ですべての業務を停止、公式ホームページによると"一時的な閉鎖"としているが、永久的な閉鎖の可能性も考えられるとのこと。
閉鎖の理由には同社の創業者 Art Larranceが2024年5月亡くなったことが強く影響しているが、醸造所の継続経営が難しいことには少々複雑な理由がある。
Art Larranceは2020年に醸造所をMark Becker, Ramie Mount, Brian Kovach and Greg Lairdに売却して、最終的には新しいオーナーが会社の所有者となるために計画を進めていたとのこと。しかし同氏の突然の逝去後、オーナーシップの構造が不透明であり、新しい管理体制も明確ではないことが明らかになった。元経営パートナーのRamie Mountは、現在はまだ正式な共同経営者ではなく、マネージャーとしての役割を果たしていると述べている。Art Larranceの娘であるAlissa Larranceによると、家族信託だけではCascadeを継続することは難しく、新しいオーナーグループそれを担うと予想されていたが、実際はそうではなかったことが判明した。この混乱の中、Cascade Barrel Houseのスタッフに最後の給料が支払われ、今後の展開は未だ不透明なままである。

とのこと。
もちろん、記事内にあるように市場的な理由もあるだろう。

この6年間は厳しいもので、市場の競争は激化し、かつては時間とコストのかかる製法で再現することが不可能と思われたカスケードの高価な製品に比べ、お買い得価格で提供されるサワー・ビールやフルーツ・ビールが普及した。

the NEW SCHOOL, Cascade Brewing has Closed; Shuttering all Operations

トレンドの変化だけでなく、世界各地で起こる物価や地価の高騰、コロナ禍の影響や市場の変化で閉業を余儀なくされるブルワリーが多く、昨年は127年の歴史に幕を閉じたAnchor Brewingのニュースも話題になりました。Anchor社は紆余曲折がありながら新たしいオーナーを見つけて再出発しましたが、Cascade Brewingも再開の手立てがあることを祈るばかりです。

醸造所買収や閉鎖のニュースも多い昨今ですが、今回のようなケースは珍しく、会社のあり方や、醸造所の終着地点ってどうするべき?と思ったので自分なりに考えました。

醸造所に万が一があったときに

醸造所を運営していくにはいいビールを作って、そして売っていく必要があるのですが、避けられないリスクはあるものです。
社内要因としては人材の都合や怪我で操業が止まることも考えられるし、外的要因として自然災害による設備の破損といったものから、取引先の債権回収不能なども起こり得ります。
ただ…正直なところ人的、コスト的に見ても今の小規模醸造所業界で余裕あるリスクヘッジを取ることは難しい部分が多いのかな…と今は思います。

あんまりポジティブな考えが浮かんでこないのでこのへんでやめましょう。

はじめかたの先の、終わりかたを考える

小規模醸造所は世界的に増えていて、日本でも爆発的に増えているので巷に溢れてる情報は全部「醸造所のはじめかた」ばっかりなんですね。でもこの爆発が終わったときのことを考えておくのは大事なのかと思います。特にオーナーブルワーや家族経営の醸造所は、継続の手立てはあるのか?売却するのか?でなければ閉業計画、法的手続き、契約管理、従業員対応など大きな負担が舞い込んでくるので、退却路をあらかじめ整理しておくのはいいリスクヘッジにもなるし、自分だけでなく周りに対する配慮にもなるかなと思います。
終わらせ方なんて言い方をするとネガティブに捉えられがちですが、ポジティブな終わりもあると思うので、同業の方々がどう考えてるか気になりますね。どこかで会ったらご意見聞かせてください。

さいごに

日本でもCascade Brewingのビールを飲んでアメリカのクラフトビール、ひいてはサワーやワイルドエールの世界に惹き込まれた人も多いはず。もちろん自分もCascadeが好きだし、2015年に現地に訪れたときは感無量でした。

あとは、醸造所とかお店とか、エンタメとか娯楽とか、自分にとって大切な何かは、なくなってから嘆くんじゃなくて、あるうちにたくさん触れ合って、たくさん楽しもうぜ!ってこと。人生を豊かにしてくれるそういうものを楽しめる、ほんのちょっとの心とサイフの余裕を持ち合わせて生きていきたい、と自分に言い聞かせておわりとします。

おわり


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