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【中編】ソーシャルGOODなCOFFEEを飲みながらSDGsの17の開発目標「貧困をなくそう」をテーマにスペシャルゲストと語り合う。

第一回目は「貧困をなくそう」がテーマ。世界の貧困問題と向き合うとはどういうことか?ソーシャルビジネスの実情は?自分たちにできることはあるのか?ゲストをお迎えして、GOODCOFFEFARMS代表カルロスと一緒に語り合いました。

前編からの続きです。

原口)カルロスさん、私から質問させてください。自転車でコーヒーを作っていますよね。製法としても非効率的だと思うのですが?


カルロス)そうですね。非効率かもしれませんが、トライできることが大事だと考えています。どんなメンバーでも自転車なら取り組みやすいです。
私たちはGOOD COFFEE FARMSの仲間である約200の生産農家の方に「ノウハウを伝えていくこと」を目的にしています。
コーヒー豆づくりを自分たちでできるようになって欲しいと思っています。GOOD COFFEE FARMSで学んだノウハウを生かして、自らの力で未来を描いていって欲しいと思っています。

原口)同感です、ソーシャルビジネスって、資本主義でいう、非効率なんですよね。私たちの工場で働くバングラデシュの仲間たちは、文字の読み書きができない人や、働いた経験がない人たちが、たくさんいます。生産効率を優先すると、読み書きできる人が、働いた経験がある人がもちろんいい。
でも、そうじゃない人はどうなるんだろうと思いませんか?
貧困を理由に、教育を十分に受けれない、働く機会がなかった人達はずっと働くことができない。結果、「社会に置いてきぼり」になる。その子ども達も同様です。貧困は世代を超えていくんです。
理不尽だと思いませんか?だから私たちは、非効率も含めてビジネスを再構築したい、と考えています。


私たちボーダレス・ジャパングループのすべてのソーシャルビジネスは、ビジネスモデルよりも「ソーシャルコンセプト」を先につくります。社会の現状の課題と原因、社会の理想を表した社会に対するコンセプトです。それを実現するためのHowとして、ビジネスに落とし込む。その順番を、とても大切にしています。ビジネスが優先ではない、そうじゃないと、現地のための課題解決に繋がるビジネスにならないんですよね。

カルロス)ビジネスレザーファクトリーは「社会貢献」「ソーシャルビジネス」「エシカル」の言葉をあまり表現していないように思います、その理由はなぜですか?

原口)私は前提としてエシカルを前に出すブランドと出さないブランドと、両方あっていいと思っています。その上で私たちは、最初は出さないと決めてスタートしました。理由は二つあって、一つ目は私たちの事業目的が「貧しい人たちの雇用を増やし続けること」だからです。日本のエシカル消費の市場は、欧米と比べると小さく、マイノリティーです。だから、一般的な消費をするマジョリティーの方々にたくさん届ける、っていうことが大切だったんですね。だから、プロダクトとサービスで、勝負する。そのクオリティをしっかりと向上させることが、事業目的を達成するためにも大切なことでした。

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カルロス)事業の目標である「雇用創出」を達成する為には、エシカル消費の文脈だけでなく一般的な市場にアプローチする必要があったんですね。

原口)二つ目の理由は、バングラデシュの自社工場で働く仲間たちは、職人として働いているからです。プロフェッショナルとしての「誇り」があるんですよね。なので、彼らが貧しいから買ってほしいって、日本のお客さまに伝えたら、彼らが悲しむと思うんです。彼らも職人として、自分たちの技術や品質で勝負したいと言っています。仲間たちがそう思っている、だから私たちはその「誇り」を届けたいと思っています。

カルロス)私が驚いたのはビジネスレザーファクトリーの価格です、びっくりするほど低価格でした。レザーだともっとプライスを高くしてもいいのではと思うのですが?

原口)適正な価格で販売できる理由は、自社工場で生産して、自社ブランドで販売しているっていうことが大きいですね。中間コストがないので適正価格を実現できる。コアターゲットであるビジネスパーソンにとって、リーズナブルな価格でご提案し続けたい、と考えています。

低価格を維持するには苦労もあると思うのですが?

原口)バングラデシュで作っていると、言われることもあるのですが、原価を下げているから低価格が実現できている、という話ではないんです。つまり、買い叩いて、低価格が実現できる、というロジック。実際、私たちの工場は、周囲の工場より、1.2〜3倍の給与を実現しています。事業背景上、全員初心者の工場で、教育を受けていない人々が作っているので、教育コストという観点では、他の工場より原価は高いと思いますね。
実は、2020年12月に商品価格を上げたんです。理由はバングラデシュの国全体の経済成長に伴い、国全体の最低賃金が上がったから。つまり、同じ生活水準を維持しようと思うと、給与をあげる必要がある。なので、工場のメンバーの給料を軒並み上げました。通常、経営者にとって、価格を上げることは勇気のいることだと思います。お客さまにご理解いただけるよう日本のメンバーともたくさん議論しました。でも実際は、価格を上げたあとも、お客さまは変わらず応援してくれました。逆になんでもっと前から上げなかったの?と言われたほどです。

カルロス)お客様からそう言われるのはすごいですね、お客様との信頼関係に感動しました。リーズナブルプライスの実現はすごいと思います。実は私たちのCOFFEEの市場は成熟していると感じています。だからこそ私たちのエシカルな理念の部分をちゃんとお客様に知っていただいた上でGOOD COFFEE FARMSの製品を選んでいただきたいと考えています。

原口)カルロスさん、GOOD COFFEE FARMSの生産農家さんに「ノウハウ」を伝えることが大切とお伺いしました。その理由は??

カルロス)貧困は大変な問題だと認識しています。私自身も裕福ではなかった、頑張ってもなかなか良くならない大変な生活は知っています。こんな話があります。GOOD COFFEE FARMSで働くグアテマラの農家のメンバーに夢をきいたら「独立して自分の工場が欲しい」とみんな言います。いきなり工場をつくるとなったら大変です。だけどノウハウがあればできるでしょう?資金がなくても彼らが手作りでもできるようになるには、まず「ノウハウ」が必要だと考えています。逆に誰にでもできる自転車だとみんなが取り組めるのではないかと考えたんです。

ひとつエピソードがありました、ある大学からもっといい機械にしようとアプローチがありました。私は嬉しくてプロジェクトを進めていこうとしたところ、大学側からの提案は「エンジン」をつけようとなったんです。ああ、わかっていないな。と思いました。誰でもできる「自転車」が大事、これはヨーロッパ、アメリカには通じない。大学からは「エンジンをつけないと日本人はつかわない」と言われたのですが、私たちはエンジンは使いません。日本人の為のバイシクル製法ではない、優秀な脱穀マシンがあってもそれを使うノウハウがなければ意味がない、メンテナンスの費用も高くなる。例えば修理するのにもノウハウがないのでは困るでしょう?もっと、その人たちがすぐに使える「リアル」なものでないといけないと思ってます。みんな自転車で喜んでいる。エンジンをつけようと言われたときに別の世界の話だと思いました。いまはコーヒーを作る機械にエンジンがつくのは当たり前になっていますが、私はエンジンをつける→エネルギーをつかう。それは私たちが描くGOOD COFFEE FARMSの姿ではないと思っています。

現地のリアルが大事だということですね。ビジネスレザーファクトリーでは現地の方へのアプローチはどうお考えでしょうか?

原口)私も、現地の顔が見えるか、というリアリティはとても大切だと思います。例えば、ビジネスレザーファクトリーがなぜ革事業を選んだかも、現場のリアリティがあったからです。革製品は、アパレルと比較して、生産工程が多いんです。アパレルは、基本的には「切って縫う」というミシンの縫製の工程がメインになり、ミシンを使える人しか雇えない。一方で、革製品は「切って縫う」だけではなく「組み立て」の工程が多く発生します。自社工場では、その革製品の組み立ての工程を、さらに細かく分けて、仕事を作る工夫をしています。例えば、糸を切る、接着剤で止める、など、細かい工程になればなるほど、昨日まで働いていなかった人たちが、努力次第で力を発揮できるんですよ。また、一般的な工場などでは、マニュアルを作って、効率的に生産ができるかもしれませんが、私たちの工場では、それができません。文字の読み書きができない人々も多いからです。例えば、縫製が1mmずれたらB品という基準があった時に、「1mmって何?」となりますよね。

1mmを伝えることをどう解決したのですか?

原口)これは一例ですが、透明な用紙に1mm幅の線を何本もひいて、それを製品に重ねるだけで、1mmずれているかがわかる、シートを作りました。そこからずれていたら、1mmずれているよ、と。アナログかもしれませんが、こういった創意工夫が必要なんですね。他にも、先輩の職人と新人の職人を組み合わせて4人1組の生産チームをつくっています。いわゆる、日本の丁稚奉公のようなイメージですね。新人の職人は先輩の技術を隣で教えてもらいながら作ることができる。そうして、初心者だった彼らも、少しずつ技術が上がっていくんです。こういった現場のリアリティに合わせた創意工夫をしながら、ソーシャルビジネスを創っています。通常のビジネスであれば “非効率”かもしれませんが、それこそがソーシャルビジネスの意義だと信じています。

次回は、「これから」についてお話をお伺いします。自分たちにできることはあるのか。後編へつづく。

まとめ
Regenerative (再生する)、人が入ることで再生する社会。いまのエコノミーな社会では常に「効率」を求めている。しかしその生産性優先の効率主義から省かれてしまう人たちもいる。その人たちはどうなるのだろうか?社会においてきぼりでいいのだろうか?原口さんは取材中に「私はチャンスメーカーになりたい」と何度も語っていた、チャンスを作り続けるのが彼女の信念。カルロスは、だれでもトライできるようにエンジンの要らないバイシクル製法を開発した。現場のリアリティを大事にしたい、誰でもチャンスがあってトライできるビジネス。そこにソーシャルビジネスの本質があるように思う。


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