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絵本を読む

だるまさんシリーズ "が" "の" "と"
かがくい ひろし/作
ブロンズ新社 2009年


娘が産まれたときに友人からお祝いにこの三冊セットをいただいた。「ぜったいに喜ぶから」と言われて。
この絵本のことは知らなかったけど、たしかにこの本は娘のお気に入りになった。まだストーリーの流れを理解できない乳幼児であってもこの絵本の魅力は伝わるらしい。娘を膝にのせて「だ る ま さ ん の」と調子をとって揺すってあげると声をあげて喜ぶ。それからだるまさんのしぐさを自分でも真似してみる。
テッパンの子どもウケである。どんな人なんだろうと調べてみると作者のかがくいひろしさんはすでに亡くなっていた。50歳でデビューしてから4年間の短い作家生活だったけどかれの遺した作品はすでに絵本界の定番だろう。
絵本というと子どもにあれがいけないこれがいけないと教え諭すようなものが少なくない(ぼくが子どもの頃はそんな本が多かった)けど
この「だるまさん」シリーズにはそんな上からの目線はまったくない。その目線は乳幼児と同じ高さにある。子どもの世界に寄り添ったその作風はユーモラスでシンプルで優しい。出来上がった作品は平明だけど、このシンプルで無駄のないデザインにたどり着くまでにたくさんの試行錯誤があったのだろう。
作者のかがくいさんはデビューまでは養護学校の教員を長らく勤められていたそうだ。そこで子どもたちを相手に経験されたことが後の作品に結晶化されているのだろうなと思う。ユーモラスな作風だがその奥にある思想と想いはけっこう熱いのかもしれない。だけど表現されるものは偉そうだったり肩肘張ったところは全くない。作者の人柄なのだろう。
3歳半になった娘に久しぶりに読んで聞かせたら、やっぱり楽しそうに絵のなかのだるまさんに合わせて体を揺すっていた。

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