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坂口恭平著「現実脱出論」を読んで


『現実を見なさい』、読者の方は、親や教師によく言われたことあるだろう。

この本では現実を『現実さん』と、他者として捉え、「現実」という概念への多角的な見方を提示している。

現実とは、他者と意思疎通を図るための時間・空間である。他者と共有するため、多くの場合、1人1人の感覚・感性は切り落とされ、矯正されている。目に見えないものは湧きに追いやられ、見えたものは異常者・障害者として扱う。

坂口はこのような「現実」に対し、疑問を呈する。例えば、自分が好きなことをやっている時は時間があっという間に過ぎるのに対し、 退屈な時は牛歩のように遅く感じるだろう。
時計で測れば同じ時間でも、自分の感覚としては確実に差異がある。坂口はここに、「現実」というのは固定された絶対的ものではなく、時空を膨張したり収縮したりする性質だという。

実際に、私たちは自分に固有の時間と空間を持ち、そこで生活をしてきた。しかし、現実を絶対的なものとして見過ぎる余り、生きづらさを感じ自殺をしてしまう人が多い。

では、現実を相対化する術は何か、自分に固有の時間と空間を『創造』していくことだ、と坂口は言う。
創造することで、自分の空間の一部を他者に見せることができる。例えば、考えたことを文にする、絵を描く、音楽にする、などなど。現実に対して別の世界=複数の現実を作ることで、より生きやすくなるのではないかと述べる。

この本を読んで、「現実」と良い距離間で接していきたいと思った。ぜひ、ご一読してくれたら嬉しい。

おわり


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