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部屋に降る雨?

仕事から戻って玄関に入った瞬間、室内のどこかから「ポツン」と音が聞こえた気がした。
水道か?
思ったけれど、さほど気にしない。古いマンションなので、蛇口の閉め方が悪いとときどき、水が滴るようなことがあるからだ。
シャワーを済ませて、夕飯を食べようとキッチンに立ったときに、また「ポツン」。
今度は近い。
さすがにこれには、うん?と思った。
動きを止めて耳を澄ますと、しばらくしてまた「ポツン」。
ガステーブルの上。どういうわけか、換気扇の縁から水が滴り落ちていて、ガステーブルの端っこに小さな水たまりを作っている。
いったい何が起こっている?
よくよく観察すると、どうやら水滴は、換気扇と壁との境目から染み落ちているらしい。古い部屋なので、その部分の接着剤やらパテやらが劣化して、亀裂が出来ているのかもしれない。
外は雨だから、雨漏りということだろうか。
でも腑に落ちない。大した降りではないし、風も吹いていない。先日の台風のほうが、よほどひどい天気だった。でもそのときは、少しも雨漏りはしていない。
ペーパータオルで応急処置をして、とにかく管理会社に電話を。
ところが、わたしが休日ではないというだけで、世間は三連休の真っ最中。管理会社は留守番電話になっていて、一向に通じない。
でも水は滴り続けている。
留守番電話に水漏れらしいと吹き込んで、仕方がないので、向こうからの連絡を待つことにした。
それから丸一日以上、連絡があるまでの間、せっせとペーパータオルを交換したり、ガステーブルの上という不安定な場所に、何とかしてバケツを置いたりと悪戦苦闘。仕事に行かないわけにはいかないので、バケツを置くのは必須。ようやく連絡があって見てもらえることになるまで、本当に、気が気ではなかった。
水が滴る箇所はだんだんと増えてくるし、天井の水濡れ部分も広がり、冷蔵庫に迫る勢い。翌々日にはとうとう、すぐ脇の部屋の隅からも水漏れは始まり、クローゼットのてっぺんにプラスチックの衣装ケースを置いて、水滴を受ける始末。
管理会社の方がやって来た時点で、わたしはもうヘトヘトで、泣き出したい思いだった。
あれこれ調べた結果、水漏れ箇所は、真上の部屋のキッチンの水道。
しかも、見える場所ではなくて、蛇口が生えている壁のさらにその向こう側。
すでにわたしの部屋の天井を剥がしているし、ここからさらに上の部屋の壁も剥がさなければならないという、大変な大ごとになっていた。
真上はしばらく空き部屋だったが、入居が決まったということで、水道の開栓やら何やらを数日前に行った。そのタイミングで、どうやら水漏れは始まったらしい。
古い建物なので、設備ももちろん古い。使い続けている分には何とかなっても、しばらく使わずにいると、そのせいで劣化が一気に進むということもあるのだそうだ。そこでまた使い始めようとしたため、あらぬ場所から水が噴き出したということなのだろう。
何も知らないわたしは真下で一人、雨漏り?と慌てていたわけで、下手をすれば電化製品が軒並みダメになっていてもおかしくはなかった。
一週間が過ぎた今も、まだ天井には大きな穴が開いたまま。
水漏れは止まってくれたけれど、少し乾かしてからでないと完全に塞いでしまうことが出来ない。
よってわたしは今、むき出しのコンクリート壁やら排気ダクトやら、めったに見ることがないものを見上げながら生活している。
電子レンジとか炊飯器とか、普段はキッチンにある小家電が全て寝室に避難した状態で、冷蔵庫からものを出して温めるだけなのに、あり得ないほど珍妙な動線で動かなければならない。
救いがあるとすれば、この部屋が賃貸で、自分の懐は全く痛まないということくらいだろうか。
天井を見上げるたびに、ため息が口をつく。
ああ、早く元の生活に戻りたい。
皆様もどうぞ、水漏れにはくれぐれもご注意ください。
(と言っても、集合住宅に住む以上、来るときには来るもののようですが・・・)
雨音だけを集めたCDを持っていて、文章を書くときに流すことも多かったのだけれど、当分の間これは聞けそうもない。




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