【サピエンス全史】虚構で繋がる私たちが行き着く先【読書感想】①

本書の概要

本書が大好きすぎて、一番最初に読み終えたのは22年末だったが、自身で要約しながら再読して気づけば24年になっていた。

『サピエンス全史』は私たちホモ・サピエンスというヒト科、ホモ属の現代までの歴史を紐解くという壮大な書籍となっている。
今までにない知識や、モノの見方を与えてくれる、まさに読書の醍醐味を凝縮したような大作だ。

とても私では概要を伝えられないと承知しつつ、少しだけ内容に触れておこう。


現代に繋がるホモサピエンスの運命を決定づけたのは、3つの重要な革命によるところが大きい。
それは、『認知革命』『農業革命』『科学革命』だ。

『認知革命』はとりわけ重要だと考えられるので、少し詳しく。

ホモ・サピエンスは7万年前〜3万年前頃に、言語を習得する。
サピエンスの言語は柔軟であったので、虚構や神話を紡ぐことができたので、大勢で協力することを可能にした。
これこそホモ・サピエンスが食物連鎖の頂点に立った最たる理由だと本書では分析している。

「虚構と神話?どういうことやねん」と思われる方もいらっしゃるだろう。
だが、今の我々の周りも、虚構と神話で満ち溢れている。
本書はプジョーという自動車メーカーを例に挙げている。
同社がもつ工場・従業員・機械、どれを足し合わせてもプジョーにはならない。
何故なら、たとえ何らかの惨事で工場や従業員や機械が全滅しても、同社はお金を借り、新たにそれらを調達し、会社自体は存続しうるからだ。
つまり、プジョーは物理的世界とは本質的に結びついていない虚構と言える。
これは国、宗教なども同様だ。

「知り合いになれるのは150人まで」などと言われたりするが、認知革命以前のサピエンスもそうだった。
実際に顔を知っていて、信頼ができ、協力ができる人数は従来それくらいだった。
だが、ホモ・サピエンスは虚構・神話を紡ぐことによって、大多数が協力し合うことを可能にした。
自分たちが「日本」という単位でまとまっていることをよく考えてみると、腑に落ちる。1億人全員、私たちはお互いを知る由もないが、「日本」という虚構によって協力体制を敷き、外敵への抵抗や経済での互助を実現していると言える。

そして、この虚構・神話において、全世界を1組の法則に支配できる「普遍的秩序」が三つ登場した。
それは『貨幣』『帝国』『普遍的宗教』だ。
これらは世界を均質化する上で多大や役割を果たしている。
これらによって、私たちは血を流しながらも、グローバルネットワークを形成し現代に至る。

そして下巻においては、科学とテクノロジー、産業革命に多くのページが割かれる。
帝国と緊密に結びつきながら、科学や急激にテクノロジーを実装していき、我々のイデオロギーを塗り替えていった。

産業革命の結果、家族と地域コミュニティは崩壊し、国や市場が取って代わった。
それは果たして幸せに結びつくのか?という観点で、幸福とは何かについても触れている。

そして最後は、現代の延長線上には、生理工学やサイボーグ学と結びつき、私たちは「もはやホモ・サピエンスではない何か」となり、心理的意味合いも、政治的意味合いも、到底今の私たちには把握できなくなる可能性を述べている。


自分が本書を読んで強く思うのは、「歴史を知ることの意義」や「人間のアイデンティティ」に注目をしない人々が、(自分を含めて)ほぼ大勢を占めていることへの危機意識だった。

自分たちが自由主義や資本主義のイデオロギーに染まった、歴史上で見ると「異端な存在」であることに気づかず、科学の進歩を手放しに礼賛し(科学の進歩を悪いことだといっているわけではない)、自分たちの特性や行き着く先を考えていない。

自分を知ること(=歴史を知ること)は自分自身(アイデンティティ)を知る上で大事ではないだろうか?
「彼女をもっと知りたい」と思ったら、その人生や人間関係を見ないだろうか?

究極的には、それこそ時代のなすがままに成り行きを見れば良いのかも知れない。
だが、このような人たちがAIや生理工学が近くもたらすインパクトに晒された時、果たして「幸福」となれるのか、「自分のアイデンティティ」を掬い取ることができるのか、大きく疑問が残る。

次は、この自分の感想について、もう少し詳しく書いていくことにしよう。

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