青と緑とゴジラ
夏になると現れる怪物 ゴジラ。
いつも山の向こうに、ゆったりと居座る。
指を指して、ゴジラ、と言う。
「入道雲のこと?」
君が聞く。
国道なんてなくて、代わりに農道が。
自販機はあるけど、現金のみ。
古びたバス停には、誰かが捨てたキャラメル色のソファが落ちていた。
手にもつアイスは青に照らされすぐに溶けてしまう。汗と混じって、地面にシミをつくる。
朝6時、まだ青になりきれない色が空を空間を包む。バス停に着けば、裏の田んぼで作業をしているお婆ちゃんがいた。麦わら帽子を被って、背を曲げている。時折上を向いて、小さく丸まった手で汗を拭う。
胸がざわつく。
誰かわからない、お婆ちゃんに懐かしさを見出す。
太陽が昇れば、湿気をなくした空気が支配する。どこまで行っても空は青で、青で、青で。
ピンクよりも、ミドリよりも、青が好き
そう言った君は、空を見上げて、伝う汗を舌で巻き込む。その癖が好きだった。
こっちの青とあっちの青は違うかな
一緒だよなんて言えなかった。
窓から見える君を乗せた赤の電車を見た瞬間、何かが弾けた。
だから部屋を飛び出した。
クーラーで冷えた体は馬鹿みたいに暑い気温に驚いて、それでも走って走って、追いつけない君を、走って走った。
青がどこまでも続く。
赤の電車はトンネルに消えていく。
山の向こうにゴジラがいた。
青と緑とゴジラがいた。
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