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第18回 鳥の巣症候群

2021年春、息子が巣立ってからしばらくの間、私は毎日息子を想い切なくなっていた。

スーパーで買い物をしていて、息子の為に買っていた商品を見るたび涙が出そうになった。お菓子売り場で「ママー」と聞こえて思わず振り向くと、小さな男の子が母親とお菓子を選んでいた。ちょっと前まであんなに幼かったのに、と男の子と息子を重ね涙が溢れた。ダメだ、お菓子売り場は辛すぎる!私は泣きながらカートを押して売り場を離れた。(マスクで顔が隠れていて良かった)

同じく一人息子を持つ友人と「息子が巣立ったら鳥の巣症候群になるかもしれないから、その時はお互いに励まし合おうね。」と話していたのだが正にその状況に陥ったのだ。

ところが6月に入った辺りから気持ちに変化が訪れた。自由を満喫している自分に気づいたのだ。息子が産まれてからは常に息子優先で過ごして来た。母親なら当然であるが、自分のことは二の次になる。それが18年振りに自分ファーストの生活になったのだ。何ということでしょう、この気楽さ!ここにきてようやく、母親としての責任を無事果たしたのだと、自分を労うことが出来た。

8月の夏休みに息子が初めて帰省した。滞在中は毎日息子の好物をせっせと作った。久し振りに家族団欒の楽しい時間を過ごし、息子が東京へ戻って行った日から、再び鳥の巣症候群になってしまった。ただ、春の時より立ち直りは早かった。この先もしばらくはこの繰り返しなんだろうな、と予感した。


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