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新茶のような、寝かせた紅茶

※この記事は、2024年6月13日に当店のSNSに投稿したものです。

新茶の入荷シーズンに入りつつありますが、奈良県月ヶ瀬から、新しい紅茶が届きました。
新しい、と言っても今年作られたものではありません。
作り手にとっては今年の紅茶と位置付けされている、昨年の春に作られた紅茶です。
かねてより、この作り手の紅茶は作って間もないものより、しばらく寝かせて風味が落ち着いたもののほうがよりその良さを発揮すると感じていましたが、新茶ラッシュに埋もれることなく、この度みなさまによりよい状態でご紹介できることになりました。

今期は、

無農薬・無肥料の自然栽培のさやまみどり
無農薬・無肥料の自然栽培のさえみどり実生×そうふう実生ブレンド
無農薬・無化学肥料の有機栽培のべにひかり

…の3種類を仕入れました。

さやまみどりは、甘い花の蜜のような丸みのある香りから、この作り手特有の野草のような力強い萎凋香が現れます。とろりとした茶液は、渋味はほとんどなく、淡く甘い上品な味わいで、とろりとしながらも軽い口当たりと喉越しです。温かいお茶をひとくちすすると、暖かな陽だまりを想起させる品種香がふわりと感じられ、冷めるとそのすっきりと透明感がある味わいが引き立ちます。優しいお茶、という言葉がとてもしっくりくるお茶のひとつです。

さえみどり実生×そうふう実生ブレンドは、作り手の畑でとれた種子から発芽・成長した、若い茶樹の葉で作られた紅茶です。この紅茶は柔らかな甘みとふくよかさがあり、渋味はほとんどなく、穏やかな味わいにすっと香り立つ青い清涼感と蘭にも似た花香が印象的。作り手の萎凋香も手伝って、清々しさと穏やかさが混じり合う風味は、いわゆる紅茶らしい紅茶とは一線を画す個性的な風味です。品種香と作り手が醸す香りが織りなす、温和な味わいと清々しい香りの妙をお楽しみください。

べにひかりは、当店で定番となっている紅茶用品種ですが、この作り手のものは品種特有のメントールのような、すっとした香りを感じやすく、飲み進めるとまろやかな味わいの中からほんのりと渋味が現れます。すっとした香りにぴたりと調和する蜂蜜のような香りと甘み(旨味)を帯びた香味が魅力的な品種ですが、この紅茶はその特徴を捉えやすいのではないかと思います。食事にも幅広く合わせやすい紅茶です。

作り手は、茶樹と近隣の自然環境が調和したその環境の香気をお茶の中にも閉じ込めるべく、絶えずストイックにその方法を模索し、ユニークな試みをし続けています。作り手のお茶の全てに漂う、作り手が生み出す香りを確認しながら、お茶の旬や飲み頃について改めて考えています。

野の草花を想起させる、作り手のお茶を当店でお楽しみください。

こちらでご紹介したお茶は、店内でのご提供のみです。予めご了承ください。

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