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しおり2 #日常の道具たち

 今もコロナの病気がなくなったわけではないが、街にはマスクをしない人も増え、コロナが流行る前と同様の風景が広がっている。

 コロナ禍では街から人影が消え、どの店もシャッターが下ろされ、やっぱり異常事態だったと思い返す。その期間、通っていたジムが閉まった時期があり、運動不足が我が家では深刻な問題だった。

 そこで母と二人、週末には散歩に出かけた。その当時は外で人とすれ違うことすらまれであったが、紫外線対策し、しっかりマスクも装着。通りの向こう側の規模の大きな運動公園まで。たいしたことのない道のりであったが当時は散歩すら娯楽として楽しめた、そんな時代だったような気がする。コロナ前では決して草むらで足を止めることなんてなかったが、公園の中にクローバーの群生を見つけると、二人して四つ葉のクローバーを探して回った。その公園の草むらは優秀で、その一回だけで四つ葉が四本ほど見つかった。これも普段ならしないことだが、そのときは「この四つ葉でしおりを作ろう」となぜか思った。コロナ禍でやることがほかになかったのかもしれない。暇が私に仕事を与えた。

 四つ葉の緑に映えるであろう、クリームイエローの名刺サイズの台紙とラミネート用のフィルムをわざわざ買ってラミネートした。全部で四枚のしおりができたから、母に二枚、自分用に二枚である。幸運の四つ葉のクローバー、どうか、我が家にコロナの厄災が襲いかかりませんように、そんな願いもかけたかもしれない。その甲斐あって、今に至るまで家族も私自身もコロナに罹患したことはない。

 当該の四つ葉のしおりはなくしてしまうのが怖いので、しおりとしての出番はあまりない。引き出しにしまっていたら、いつの間にかみずみずしい緑色だったのが、茶色に変色していた。それでも作成当時に葉が重ならないように注意してラミネートしたので、四つ葉としての威厳は保たれている。幸運の四つ葉のクローバー、どうか、我が家にこれからも厄災が襲いかからないように。

 せっかくだから今度しおりとして使ってみようかと思う。なくさないように気をつけながら。

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