父とわたし ①

父との思い出を4回にわたって綴ります。



 つい先日、ショッピングモールで女の子とそのお父さんがフードコートで昼食をとっている場面に居合わせた。お子様ランチをお父さんが取り分けて食べさせている姿をわたしは微笑ましくみていた。そんなわたしの感想とは裏腹に、終始、女の子に振り回されっぱなしのお父さん。少しお疲れの様子だった。2人にとっては日常の光景なのだろうが、わたしにはこの光景が特別なことのように感じた。ふと、自分が子どもの頃のことを思い出す。

 わたしが物心ついた頃、父は仕事で忙しく、母と3歳上の兄とわたしの3人で過ごすことが多かった。父が脱サラし、自営業となり、我が家は過渡期をむかえていた。父は、会社員時代も忙しく、夜も残業で、あまり家にいた記憶はなかったけれど、自営業になってからもますます忙しい日々を送っていた。出張で地方に行くため、数日家を空けることもあり、母は今でいうワンオペ育児状態で家庭を守っていた。自営業になったばかりの頃は、父も母も必死だったのだろうと今になって思うが、子どもの頃は、兄もわたしもその苦労を知るよしもなかった。

 そういうわけで、わたしは父と2人きりででかけたという記憶はない。だから、ショッピングモールで見かけたお父さんと女の子の姿が、微笑ましく感じたのだ。

②につづく

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?