父とわたし ④

 仕事人間だった父も、今年、自営業を廃業し、自由気ままな年金暮らしとなった。コロナ禍で蜜を避け、馬券を買いに行くことはなくなったけれど、日曜日の競馬中継は今も観ている。その他にもスポーツ観戦や楽器演奏など、趣味に勤しむ姿をあたたかい気持ちで見守っている。

 そしてわたしはというと、結婚して実家を離れた。夫は競馬をたしなむ人。そういうと聞こえはいいけれど、たまに馬券を買うが当たったところを見たことがない。本人が楽しいのならいいか、と遠巻きにして眺めている。外食に行く時も、大体が夫が行きたいお店に行くことが多い。一緒にいてもわたしばかりが話して、夫は口数も少ない。中間管理職の性か仕事に振り回されている夫の姿をもどかしく感じ、自分と同じく、生き方が不器用だと感じる。そして、どことなく父と同じにおいがする。不思議な縁を感じずにはいられない。
 
 
 そんな夫に今年の夏は競馬場に連れて行って欲しいとお願いしている。人混みの中で、わたしを見失わないでいてね。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次の休みには父の好きなケンタッキー買って帰ろうと思います。

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