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なぜ統失 第4部「2度目の入院」⑨仙人の歌声。

前回の続き。

今回は入院中に起こった印象深い出来事を紹介します。

入院が長期に渡ると、
何度か自分の病室とベッドの引っ越しに立ち会うことになります。

患者さんが頻繁に入退院をされるので、
ベッドの配置換えを行います。

ここの入院病棟は何故か常に満床です。

他の精神病院もそうなのでしょうか?

ある日、僕のベッドのある病室に、
僕が大の苦手な仙人さんが引っ越してきました。

仙人さんは病室でイヤホンをせずにラジオを聞き始めました。

ラジオは壊れているのか、
チューニングが合っていないのか、
ガーガーとやかましい音を響かせ続けています。

僕は、ベッドでずっと読書をしていたので、
気が散って集中出来ずにイライラしっぱなしでした。

それだけではありません。

仙人さんは、
イヤホンをせずにCDプレイヤーで音楽を掛けながら、
一人カラオケを始めます。

声が大きくて、超音痴なので、
迷惑極まりありません。

僕には直接訴えかける勇気は無いので、

時々小声で、

「ちっ、うるさい!」

と、時々呟いてました。

すると、隣りのベッドで寝ている新聞記者さんに聞こえたようで、

「わしもうるさいと思ってたんよ。言ってきちゃる」

と言って、

ナースステーションに訴えに言った様でした。

しかし、いくら待っても看護師さんはやって来ず、
問題は棚上げされたままでした。

数日後、新聞記者さんが、

「嘆願書を書いて出そう」

と言い出しました。

新聞記者さんが嘆願書を書いてまとめてくれて、
同室の患者さんにサインを求めて回りました。

6人部屋の病室で、
仙人さんを除いて4人が嘆願書にサインをすることに同意しました。

新聞記者さんは、

「これで看護師さんも動いてくれるじゃろう」

と、満足げな顔で提出しに向かいました。

しかし、いくら待っても、
看護師さんは注意しにやって来ませんでした。

結局僕は、退院するまで仙人さんのうるさい歌声と騒音に心を悩ませることになってしまいました。

続く。







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