あなたの誕生日に間に合わなかった

今日は、というかもう昨日だけれども、私の大好きな人の誕生日でした。

彼は天月さんという名前で、歌手なんだけど、どう説明すればいいか分からない。とりあえず思いつく限りでは、すこぶる歌がうまくて、とっても優しい人で、猫をたくさん飼っていて、ゲームが好きなひと。

彼に出会ったとき私はまだ中学2年生だったのに、もう私は大学生になってしまって、彼は27歳だったのにもう32歳になってしまった。

正直にいうと彼の歌を初めて聴いた時の衝撃はさほど憶えていなくて、

ただ彼の声を聴くと鮮明に、あの夏の暑い部屋で、有線のイヤホンをして、YouTubeで適当に音楽を流しながらワクワク夏ワークみたいな宿題をダラダラやってた日の、あの戻れないなんとも言えない眩しすぎる自分がこっちを見ている気がしてしどろもどろになってしまう

たまたまYouTubeで見つけて聴いてしまった彼の声に、どうしようもなく惹き込まれた時のあの感覚をもっと憶えていてほしかったな、と思うけれど、思春期はなんでも自分が主人公だったからどうしようもないかな、許してあげようね

でも今はあのときよりは成長して客観的に自分を見れるようになってしまって、あのときのわたしをふわっと見返してはふふっとなってる、可愛いね、ほんとうに、

この間、ふらっと立ち寄った彼の配信で「恋と愛の違いって?」というマシュマロに、彼は、恋は一時的で愛は持続的なものかなって答えていて

あのときの私は彼に恋してたのかもな、とふと思ったって話をちょっとだけしてみるね

彼の歌を片っ端から聴いてた君も、昔の彼のことを知りたくてどうしようもなかった君も、すごく真面目な生徒だったのに学校をサボってまでコンサートに行って母に怒られちゃった君も、足でペンライト降って、握手会でも彼が優しく足を握ってくれて、生まれつきみんなと違う自分は、そのおかげで彼に覚えてもらえているかも、と自分の身体にちょっとだけ自信を持てた君も、

今の私には到底分からなくなってしまった、あの時だけのパワーみたいな、執着心みたいな、ごめんね執着心は悪口かな、

その、そのときの君しかわからない原動力は、たぶん恋だと思うけどな、彼も配信でそんなこと言ってたんだ

ちがうかな

あのときの私はどうしようもなく思春期で、彼のことが好きといいながら所詮恋だったから、ベクトルはぜんぶ自分に向いていたみたい

彼へのファンレターに、半分以上じぶんのことを書いていたよね
彼への感謝を伝えるにはある程度仕方のないことだったけれど、彼は読んでしまったかな、恥ずかしいから、まだ残っていたら燃やしてしまいたい気もするし、彼は底抜けに優しいから微笑ましく読んでくれたような気もするから、自分を叩きたくなるような、足をバタバタしたくなるあの感情に定期的に襲われている


少し前に、Twitterのアカウントにひっそり”close“と書いた

K-popのマスターさんたちがよくやっているからちょっとそれを真似してみたかったのがひとつ、これはくだらないから笑っていいよ

だけど、この恋にぴしゃっとシャッターを降ろすような、そんな象徴的なことをしたくて、そこでなんとなく自分に言い聞かせるように書いてみた

彼のことがもう好きじゃないというわけではないけれど、

ただ、彼の曲を毎日聴かなくなって、2日ごと、1週間ごと、1か月ごと、と彼の声に触れる頻度が減っても、ふと思い出して聴いたときの、あの泣きたくなるような逢いたいような恋しいような、あの感情が何なのか、なんで彼の公演があると取り憑かれたように足を運んでしまうのか、ずっと考えてしまっていたから

だから、無理やり一度シャッターを閉じてみたかった

よかったな、

彼に恋してた私は、いつしか彼に恋してた思い出に恋をしていて

あの頃の自分にしか分からないあのとてつもない原動力がただただ羨ましくて

彼の曲を聴くように見えて、実はあの頃のわたしに逢いに行っていた

良し悪しを測りたいわけじゃなくて、
むしろ、音楽って音楽だけじゃなくそのときの感触とか感情まで付いてくるものだ、って大人たちが言ってたのはこういうものなんだとやっと分かってやけに感動してしまったりもした

彼が誕生日を迎える前になんとか向き合えたから、よかったな




憑き物が落ちたようなこの耳に、あなたの声がもう響かなかったらどうしようと思いながら、あなたの歌をそっと再生したとき
あなたの声が私にとって、劇的なものというよりも、転んだときに差し伸べられる手のような、たまたま本で見つけた素敵な言葉のような、綺麗な雪が降ったときのような、そんな日常の小さな幸せに似ていることにやっと気がつきました
歌だけでなくて、あなたが毎日元気に無事にそこにいるというだけで嬉しい、
けれど元気じゃないときは、できるだけ賞賛の言葉よりも、あなたがそこにいるだけでちょっと普通の日がいい日になってしまうような、そんな人たちが、あなたが思っているよりもたくさんいるということと
その一見あり得ないような奇跡は、ほかでもなくあなたがあまりにも素敵な人で、優しい人で、愛情のある人だからあるもので、全て今までのあなたがつくってきてくれたものなんだということを思い出してほしいな、と思います

あなたよりもよっぽど年月を生きていないのに、こんなことをつらつらと書いてしまって、ごめんなさい

だけど、本当に、本当に愛しています

誕生日に間に合わせたかったな

彼は眠ってしまったかもしれません
いい夢が見られていますように

そして、素敵な1年に、なりますように。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?