今日のインコ 初飛行
梵助が飛ぶようになった。
病気のせいで、尾羽や風切羽が生えては抜けを繰り返していた。だから生後半年を過ぎても、梵助は飛べなかった。
それが、飛ぶようになった。
最近、抜ける羽が少ないとは気がついていたけれど。
まさか、飛ぶとは。
あと半年くらいは飛ばないんじゃないかなと勝手に思っていた。
飼い主はこの日を待ち侘びていた。でも、飛ばない梵助だって可愛いし、すっかり飛ばない梵助に慣れていた。
だから、ビックリしている。
たしかに、少し前まで、止まり木なんかから、ボテッ!と落ちてる感じだったのが、最近は、フワッと着地している感じがあった。
手の上からジャンプして、舞い上がることはなく、2メートルくらい先に落ちる、そんな日が2週間ほど続いた。
少しずつ前進は感じていた。きっと、ここから、落ちない距離が伸びて、いつかは飛べるようになると思ってはいた。
でも、その日は、すぐにきた。
いつものように、梵助を窓辺の止まり木で日向ぼっこさせて、「さぁケージに帰ろう」と手を差し伸ばしたら、「いやだぁぁ」という感じで羽をバタバタさせて、ジャンプしたと思った。
そしたら、そのまま、それが飛翔になった。
梵助は自分の羽で部屋の中をゆっくり一周して、ケージの扉に着地した。
え、鳥じゃん!と思った。
梵助は、びっくりするくらい、鳥だった。
飛距離が長くなるどころではなく、ちゃんと自分で曲がれていた。どこにもぶつからないで、行きたい場所に行けた。
「梵助すごぉぉぉぉぉい!」
と褒め称える飼い主に対して、梵助はサッサとケージの中に入って、お気に入りの止まり木で羽繕いしていた。別に前から飛べたけど?という雰囲気を出している。
梵助、もっと感動はないのか。
初飛行の感激とか、ないのか。
なんでもない感じを装っている梵助だけど、飛べるようになってから、確実に反抗期になった。手に乗ってくれる回数が激減した。手にのっても、すぐ飛んでいってしまう。
梵助、そんなに私の手、嫌いだったの?!
と、ちょっとショックを受けた。
嫌われたのかなとも不安になったけれど、私の後を追いかけてきたり(このときは床を走る、なぜ)、呼びかけにも反応してくれるし、なにより、私が手をパタパタさせると梵助も羽をパタパタさせるという真似っこ遊びはやってくれるので、本当に嫌われてしまったわけではないと思う。
そりゃ、自分で好きなところに行けることに気がついてしまった今、飼い主の手なんかつまんないんだろう。少し寂しい。
でも、めでたい。
本当に、めでたい。
冬を越して一歳を迎えることができるか、どうかが勝負な梵助にとって、その冬が来る前に脱羽が落ち着いて、飛べるようになったのは、すごく大きな希望だと思う。
まだ雨覆羽は捻れていることもあるし、病気が治ったわけではないれけど。
油断せずいきたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?