私の最期の先生 六話 ※センシティブ表現有
注意 今回の話は、一部センシティブな表現が含まれています。苦手な方や不快に思われた方はブラウザバックをして下さい。
六話 雁世
class committee side
戸部さんから預かったボイスレコーダーを手に、私はカウンセリング室に向かっていた。扉を開けようとすると、鍵がかかっていた。職員室にいるのだろうか?そう思って職員室に向かおうとした。その時、腕をガっと掴まれた。振り向くと、顔を歪に歪めた佐野先生が立ってた。「あの、佐野先生。・・・・・・腕、離して下さい。」「そのボイスレコーダーをよこしなさい。」口調はいつもの佐野先生だ。だけど、目が明らかに笑っていない。腕の締め付けが徐々にきつくなってくる。「あの、先生・・・・・・腕が痛いです。」ここで私はあることに気付いた。佐野先生の焦点がおかしい。佐野先生は私の全身を睨むように見ている。こわい。こわいこわいこわい。でも、このボイスレコーダーは死守しないと。腕を無理矢理振りほどこうとした。次の瞬間、私の口に大きな圧力がかかり、足が浮く感覚がした。頭の中が恐怖に侵食され始めた。
◇ 佐野先生に無理矢理連れてこられた場所は、薄暗くてほこりっぽいところだった。佐野先生は私を下ろすと、毒々しい赤に染めた顔で喋り出した。「ああ、本当に君は可愛らしい。陸上部故の引き締まった身体、作り物みたいな白い顔。今までずうっと君を見てきたけれどやっぱり間近で見る方が可愛らしい。最近やたら仲が良い相沢も今はいないし、僕はなんて最高なのだろう・・・・・・」もう、私の頭の中には何も入ってこなかった。ただただ恐怖が頭を乗っ取っている。「・・・・・・それじゃあ、堪能させてもらうよ。」・・・・・・え?
突然、足に生暖い感覚がまとわりついてきた。訳も理解らず抵抗したら、唇が塞がれ、佐野先生の舌が入ってきた。もう片方の手がお腹に入ってきた時、私の意識はフェードアウトしていった。
◇ 気がついたら佐野先生の姿はなく、警察が来ていた。「おう。目が覚めたか。」「良かった~!今救急車が来るからね。」沢山の声に私は戸惑った。「・・・・・・あの、先生は・・・・・・?」すると、一人の警察官が「? 犯人なら、もう逮捕されましたけど・・・・・・。」良かった。これで先生に殺してもらえる。そう思うと、張り詰めていたものが一気になくなった気がした。「あの、相沢という先生に会いたいのですが・・・・・・。」「あいざわ・・・・・・?もしかして、相沢羊ですか?彼なら・・・・・・」
その一言は、私を救ってはくれなかった。
「相沢羊は、あなたへのわいせつ行為の疑いで逮捕されました。」